Abdullah Ibrahim / WDR Big Band 「Bombella」(2009)

 アブドゥーラ・イブラヒムは作曲家+αていどの役割。スイングさは希薄な、上品なビッグバンド作品。

 イブラヒムの強烈なグルーヴを期待は拍子抜け。むしろジャズに慣れてない人ほど、本盤は気持ちよく聴けるかも。むしろイブラヒムのキャリア的には怪盤に位置付けたいほど。

 09年に発売の本盤は、ケルンの西ドイツ放送が主宰のジャズ・オーケストラWDR Big Bandとイブラヒムが共演した。WDR Big Bandの委嘱かも。全10曲、うち1曲はモンクの"I Mean You"からイブラヒムの曲へメドレーで繋げた。
 少なくとも2、4、10はイブラヒムの既発な曲。完全書き下ろしの組曲ではなさそう。
 
 WDRオケそのものは46年結成で歴史あるバンド、かつ演奏も整ってる。けれどそれはジャズの面白みやイブラヒムとの共演意義とは別。イブラヒムの特徴である強靭なグルーヴはすっかり骨抜きにされた。
 冒頭2分程度のイブラヒムのピアノ・ソロがせめてもの聴きどころ、か。彼のファン目線ならね。とはいえこれもずいぶん大人しい。
「きれいなピアノを弾いてるなあ」と思ったら、そのままもっと上品な世界へ引きずり込まれビックリする。

 本盤の意図が今一つつかめない。2の冒頭からムーディなテナーが現れ、ピアノとドラムできれいなサウンドを作る。ストリングス風に入るホーン隊はピッチも綺麗に揃って美しさは格別。だが、それはイブラヒムの色か?よく考えたら、この盤のピアニストはイブラヒムだけ。するってえとこの曲でのピアノも同じ人。・・・うーん、このめかしこみっぷりは何なんだ。
 サックスは後半のソロで音をゆがめる場面も。だがそれは感興でアウトしたりノイジーなブロウで熱くなって、ではない。「そういう音色が必要な演出」で出してる、コントロールされた演奏だ。

 本盤のアレンジはスティーブ・グレイ。この人かな?
https://en.wikipedia.org/wiki/Steve_Gray_(musician)
 3でディキシー、4はスイング、5もスイングだがいくぶん白人風。素晴らしく整ったビッグ・バンドを聴かせるが、いかんせん本来のスイング感が希薄だ。

 6の冒頭でイブラヒムのピアノ・ソロ。やれやれと喜びも、そのあとのムーディなジャズ・コンボ風アレンジに腰砕け。7のモンクの曲と、メドレーでモンクへ捧げた曲もモダンなビッグ・バンド的アレンジ。まあまあ面白いが、妙に生真面目で平板なノリは変わらない。

 そのあとも上品な演奏スタイルはそのまま。10の冒頭で黒っぽいピアノを炸裂させるも、WDRが入ったとたん「スリリングで上手い」演奏に変わってしまう。
 イブラヒムは上品で勝ち組目線で気取りたかったのか。WDRとのお仕事なのか。どっちにしろ、彼の名前をここまで冠すると戸惑ってしまう。

 別に年輪を重ねてまで貧乏臭く暴れ続けろ、とは言わない。どんな道へ進もうと自由だし、上品で洗練し落ち着いた道を選ぶのは至極自然な話だ。
 ある意味、落ち着いたキャリアの見本かもしれない。きれいだし、晩節を汚してないよ。

Track listing:
1. Green Kalahari 2:36
2. Song for Sathima 6:41
3. Mandela 7:04
4. District Six (Trance Circle Dance) 10:28
5. Bombella 6:09
6. Meditation - Joan Capetown Flower (Emerald Bay) 10:08
7. I Mean You / For Monk 14:05
8. For Lawrence Brown (Remembrance) 2:56
9. Excursions (Masters And Muses) 7:37
10. African River 6:46

Personnel;
Abdullah Ibrahim Composer, Piano, Primary Artist

Steve Gray Arranger, Conductor

Wim Both Trumpet
Rob Bruynen Trumpet
Klaus Osterloh Trumpet
Andy Haderer Trumpet
John Marshall Flugelhorn, Trumpet

Dave Horler Trombone, Trombone (Valve)
Mattis Cederberg Trombone (Bass)
Bernt Laukamp Trombone
Ludwig Nuss Trombone

Hans Dekker Drums
John Goldsby Bass
Koji Paul Shigihara Guitar

Paul Heller Clarinet, Flute, Sax (Tenor)
Jens Neufang Clarinet, Flute, Sax (Baritone)
Olivier Peters Clarinet, Flute, Sax (Soprano), Sax (Tenor)
Karolina Strassmayer Clarinet, Flute, Sax (Alto)
Heiner Wiberny Clarinet, Flute, Sax (Alto)




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