ProjeKct Four 「West Coast Live」(1997)

 クラブ仕様のクリムゾンを試した、サイド・ユニット。

 キング・クリムゾンは第三期で硬質かつ禁欲的な"ディシプリン"期を経て"Three of a Perfect Pair"(1984)から、約10年ぶりに"Vrooom"(1994)で復活した。
 ヘビメタやグランジを踏まえ新たなプログレ的地平を目指し、ギター、ベース、ドラムが二人づつ存在するダブル・トリオとして。往年のプログレ・バンドが自己再生産、もしくはジェネシスを筆頭にポップ界に進出など、安住の地をそれぞれ目指す活動をしていた。
 その中で挑戦を続けるロバート・フリップ、そしてキング・クリムゾンのスタンスは、ひときわ刺激的だった。

 フリップはこの時期クリムゾンを稼働させると同時に、ProjeKctと銘打っていくつものバンド内バンドを始める。フリップはインタビューでProjeKctをフラクタル分裂と称した。話題作りと同時に、音楽的な実験をクリムゾンのブランドを使わず行う実験ラボだったのではないか。
 当時のレココレ誌インタビューを読むと、ほんとうはフリップが加わらぬProjeKctの立ち上げこそが、理想の動きと思われる。そこまでクリムゾンに付き合うつもりのないメンバーは、あくまでビジネスとしてクリムゾンと関わっていたようだが。

 ProjeKctは日本だと、冒頭の4枚を一つにしたボックスセットの印象が強いはず。なんだかんだ言っても派生プロジェクト、本隊を喰うほど盛り上がりは無かった。

 まず97~98年に4種類の順列組み合わせなProjeKctが始動した。
 だがフリップはこの入れ子構造が気に入ったようで、その後もProjeKct X (2000)、ProjeKct Six (2006)、Jakszyk, Fripp and Collins (2010–11)とつい数年前までバンド内バンドを続けていた。
 King Crimson Projekctも存在するが、これはフリップの意図した実験用より営業用の21st Century Schizoid Bandから展開した懐メロ・バンドな趣あり。むしろトニーのStick MenのほうがProjeKctのコンセプトに近しい。

 本盤は最初の4バンドのうちの一つ。フリップの当時のキーワードである"クラブ仕様のクリムゾン"を体現したもの。
 生演奏とインプロがクリムゾンのライブの醍醐味だった。その一方でフリップは機械ビートとの融合や、リズム強調の音像を構想していたのではないか。だからこそポリリズムにもユニゾンにも迎えるダブル・トリオを立ち上げたでは、と推測する。
 実際には"クラブ仕様"コンセプトは他のメンバーの関心を惹かず、クリムゾンでそれらしき音盤は無いけれど。

 当時は「何を言ってるのやら」とフリップの発言にピンと来なかった。しかし15年以上たった今の耳で聴くと、10年早かったことに気づく。特に00年代半ばから日本でのROVOやDCPRGでの盛り上がり、海外で2010年以降のヒップホップと融合したジャズの文脈などを踏まえて聴くと、"クラブ仕様のクリムゾン"は十二分にあり、だったと思う。

 とはいえ本盤のProjeKct Fourはそこまでタイトでなく、即興中心のぬるさがあり。明確に曲を作って真剣に構築したら違う世界があったはず。それはクリムゾンとは相いれない、方向性かもしれないが。
 クリムゾンはもう少し大人なイメージがある。フリップがクラブで若者に熱狂されながらビート構築してる風景は今一つ想像できない。若い者に任せとけよ、と思う。

 さて、ProjeKct four。メンバーは当時のダブル・トリオからビル・ブルフォードとエイドリアン・ブリューを抜いた4人。強烈な個性の二人を外し、いかにもフリップの目が届くコンパクトなアンサンブル、にも見える。トニー・レヴィン、トレイ・ガン、パット・マステロットのいずれも、フリップを押しのけてまで主導権をクリムゾンで取りたがらないのでは。推測や空想がどうしてもこの分は、ひときわ多くなるが・・・そんな印象なんだ。

 ProjeKct fourは98年10~11月にかけ、北米で7公演を行ったのみ。この辺、活動の大味さが残念だ。ロンドンやニューヨークなどで腰を据えて、じっくりライブを重ねたら美味しく煮詰まったはず。なんだかんだ言って、多くのファンに応えるビジネス形態が必要なミュージシャンの弱み。ワンショット公演のツアーでは、即興のみで無茶なライブもしづらかろう。
 ただしスタジオに籠ってセッションでなく、観客の目を踏まえたライブで実験のスタンスは評価する。

 本盤は当時バラ売りが無く、日本での4枚組Box"The ProjeKcts"(2009)にのみ収録で世に出た。いつの音源かはクレジット無し。オリジナルの7公演を聴き比べてはいないが、複数日の即興部分を抽出してアルバム化?
 当時の7公演はすべてクリムゾンの配信サイトDGMLiveで落とせる。
 
 エレクトロ・ビートが噴き出し、生ドラムと絡む瞬間がスリリングだ。いわゆるソロ回しの場面は少なく、フリップすらも抽象的なフレーズを繰り出し間の多い空間を作る。
 役割としては2ベースにも取れるこの編成、濃霧を疾走するうねりが現れた。ビートはどこまでも硬質で、グルーヴしない。生真面目で鋭角なリズムだ。

 持続やミニマルさで酩酊を誘わず、堪え性なく場面は頻繁に変わる。けれど構成や展開を即興に任せるため、出たとこ勝負な感じだ。フリップが強力に引っ張るわけでもなく、つかみどころ無い空気が、どうしてもたまに生まれてしまう。
 それがこのProjeKct Fourの弱み。
 フリップはむしろメンバーの自主性に任せ、メンバーは目立たずサウンド全体の混沌作りが調和と捉えてる感あり。何とも惜しい、未完成のユニットだ。
 
 ちなみに、ならばブルフォードやブリューの加わったProjeKctなら刺激的か、というと・・・実はそうでも無い。このダブル・トリオが産んだ"Vrooom"(1994)のみが、攻撃性とスリル、構築美と即興的な危うさを兼ね備えていた。
 上手いミュージシャンが揃っても、いい音楽が産まれ続けるわけではない。不思議だ。

 ProjeKct Fourはインプロだけでなく曲演奏もしてた。これも、その一部。98/11/1、ツアー終盤公演より"Vroom"。


Track listing:
  Ghost (Part 1)
1.Untitled 9:14
2.Untitled 4:08
3.Untitled 5:55
4.Untitled 5:07

5.Deception Of The Thrush 7:12
6.Hindu Fizz 4:46
7.Projekction 5:29
  Ghost (Part 2)
8.Untitled 1:40
9.Untitled 2:43
10.Untitled 3:53
11.Untitled 1:49
12.Untitled 4:58

Personnel:
Robert Fripp – guitar
Tony Levin – basses, Didgeridoo
Trey Gunn – touch guitar, talker
Pat Mastelotto – electronic traps and buttons

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