Kirk Knuffke 「Arms & Hands」(2015)

 お行儀良くバラエティに富ませたフリー・ジャズ。鍵盤が無く和音感の曖昧さが特徴か。

 コロラド州生まれのフリージャズ系トランぺッター、カーク・ナフク。この界隈の流行や状況は不明だが、彼は売れっ子らしくコンスタントにアルバムをあちこちのレーベルから発売している。2015年には本盤以外に"Lamplighter"や"Moon"の発表あり。現代のジャズ界ならば、かなりのハイペースではなかろうか。
 

 本盤"Arms & Hands"でカークはコルネットのトリオを軸に、3人のホーン奏者を曲によってゲストに招いた。このアルバムのプロモ映像があった。カークのインタビューが主流で、正直地味な出来だが。

 リズム隊はベテランを並べた。ドラムのBill Goodwinは西海岸でアート・ペッパーやフィル・ウッズと共演歴ある。ベースのMark Heliasも多数のサイドメン歴あり。パッと見たが僕が聴いたことない人ばかりでコメントできず。
 この貫禄は年輪とキャリアが生み出すものか。カークはまだ36歳の中堅どころらしく、気負わず緩やかにトランペットを奏でた。

 アルバムを通して感じられるのは、涼やかな緊迫感。張りつめた斬り合いのフリーではなく、どこか穏やかだ。逆に熱っぽさや予定調和の、わかりやすい盛り上げ方もしない。完全に抽象なやりっぱなしでもない。
 あらゆる極端なベクトル、わかりやすいフリージャズの構図を注意深く外しながら、聴きやすい音像を作ってる感じ。

 フリージャズは奏者の呼吸感、色が耳になじむまで取っつきにくく思えることもある。猛烈な疾走やインタープレイなど、わかりやすさが無ければなおさら。
 ところが本盤はぱっと聴いたときから、なんだか聴きやすい。音構造を聴くとありきたりのソロ回しでなく、フリー要素も強そうなのに。不思議な親しみやすさだ。

 ドラムもベースも単なる刻みやランニングには収まらない。パーカッシブな小技をひっきりなしに繰り出し、リズムの頭をあいまいにするドラムと、フリーなフレーズで切り込み続け、ビート感を不安定にするベース。トランペットもマイルス風に短いフレーズを重ねるため、とても浮遊するサウンドが出来上がった。


 彼の本拠はニューヨークらしい。上記の盤"Little Cross"(2016)ではジェイミー・サフトやハミッド・ドレイクなど、ジョン・ゾーン界隈や、先鋭フリージャズのメンツらとも吹き込みをしてる。その割に、彼の名は不勉強ながら全く知らなかった。
 
 ゲストの参加はごくわずか。全員参加ではなく、一人一人がセッションに加わった。具体的には(2)でasのDaniel Carter。(5)がss、(14)と(15)がtsにてJeff Ledererが持ち替える。(1)(8)と(11)はtbにてBrian Dryeが参加した。
 それぞれゲストのキャリアもまちまち。Daniel Carterはベテランだが、Jeff Ledererはカークの一回り上ていど。Brian Dryeがちょっと年上だがぎりぎり同世代、か。

 各曲も短く、どんどん進んでいく。すなわち本盤では瞬発力のアイディアを並べる構成か。フリーは長尺になるほど飽きぬよう、集中力や演奏力を必要とする。だが本盤はその前に曲を終わらせてしまう。次々と繰り出すフレージングは、ちょっと展開しただけで終わってしまう。ゲストとのインタープレイも、探り合いをちょっと超えたくだい。
 
 つまり甘噛みで終わり、がっぷり骨まで歯が通るまで噛む、力強さには至らない。このコンパクトさを良しとするかで、本盤の価値は決まる。
 ぼくは・・・そうだなあ。ぱっと聴きには良い。けれども華やかなファッションショーを見てるように、あれよあれよと終わってしまう感じかな。物足りない。この上っ面を突き抜けた、濃い演奏を聴いてみたい。

Track listing:
1. Safety Shoes. 2:33
2. Bright Light. 5:35
3. Root. 3:56
4. Pepper. 4:04
5. Chirp. 5:52
6. Umbrella. 3:59
7. Notwithstanding. 3:07
8. Next. 4:57
9. Arms & Hands. 4:28
10. Elevator. 3:42
11. Bonderizer. 3:46
12. Tuesday. 2:34
13. Use. 3:40
14. Atessa. 4:08
15. Thanks A Lot. 6:05

Personnel:
Cornet, Composed By - Kirk Knuffke
Bass - Mark Helias
Drums - Bill Goodwin

Alto Saxophone, - Daniel Carter on 2
Soprano Saxophone, Tenor Saxophone - Jeff Lederer on 5,14,15
Trombone - Brian Drye on 1,8,11

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