Elvis Costello 「The Delivery Man」(2004)

 荒ぶりと円熟の双方を荒っぽく示した、カントリー・アルバム。

 さしずめ"Almost Blue"(1981)+"Blood & Chocolate"(1986)。"King of America"(1986)みたいな無邪気さより、イラついたルーツ回帰。そんな印象をずうっと本盤に対し持っていた。正直、あまり聴きこんだとは言い難い。

 エルヴィス・コステロ&ジ・インポスター名義で発売の本盤は21枚目のアルバム。ミシシッピ州でレコーディングされた。凄まじい音質の録音だ。特に一曲目は演奏すらズタズタ。パンクかつ荒っぽく録音し、そのうえでアメリカン・ロックへの憧憬をまとめて表現か。
 ミシシッピ州のSweet Teaスタジオで主に録音され、ダビングをミシシッピ州のDelta Recording、ロスのThe Village Recorder、テネシー州のOcean Way Nashvilleで行ったようだ。
 
 共同プロデュースのDennis Herrinは80年前半、I.R.Sでティムバック3などを担当で活動を開始した。キャリアを見ても知らないバンドばかりだが、ロック系が多いのかな。

 メインのエンジニアはChris Shepard。90年代がたぶん、本格的な活動の時期。
 キャリアを見ても好みのジャンルがよくわからないが、ウィルコを担当の一方で、EDM系のミュージシャンも録音しており、ルーツ・ロックが得意なわけじゃ無さそう。本盤ではアナログ・テープが飽和したような、歪む寸前の過剰な音作りをしてる。アルバムとしては、コステロは本作のみの付き合い。
 
 コステロはこのころ、既に超ベテラン。ユニバーサルと契約し、様々なレーベルでクラシックやジャズなどまで活動広げてた。リリースがけっこうあり、どれがオリジナル・アルバムかぼくは混乱してた。

 グラモフォンから思い切りダンディな"North"(2003)の次の作品として、本作は"Il Sogno"(2004)とほぼ同時にリリース。"North"から一転、がっつりパンキッシュかつコンボ編成のカントリー・ロックに向かった盤だった。
 この"The Delivery Man"は、ユニバーサル傘下でカントリー系のレーベルLost Highwayを使用してる。
 バンドのインポスターと共演名義は"When I Was Cruel"(2002),"Cruel Smile"(2002)ぶり。この数年で編集盤も含めて5枚も出していた。ああ、わかりづらい。

 このアルバム、なんどか聴いたはずだが楽曲の印象が薄い。(1)のめちゃくちゃなセッション"風"のサウンドに恐れをなし、戸惑ったためだろう。
 文字通り、ラフなセッションだったら素直に味わえた。だが本盤は、音作りが恣意的に過ぎた。計算づくの、へんてこだ。
 ルーツ回帰、かもしれない。だがどうも道楽に聴こえてしまった。年寄りの冷や水、とまではいわない。すっかり大人になったコステロに馴染んだぼくの耳には、本盤が殿のご乱心に見えてしまった。昔みたいにヤンチャを、今でもできるんだぜ、と。
 
 最初に聴いたときはすっかり大人で朗々と喉を張りあげるコステロが、暴れたいんだなって印象だった。もちろん本盤にも切々と歌うバラードはある。すっかり歌がうまくなったコステロ節はばっちり。
 だがこの盤は、音質が凄まじかった。ローファイ、ではない。ハイファイだがバランスや音作りをめちゃくちゃにひしゃげさせ、カネのかかった乱雑さを表現した。

 改めて聴くと、極端に暴れてるのは最初の1曲だけ。そもそも(2)からして、穏やかなカントリー・バラードだ。
 大まかにいって、奇数曲がアップテンポ、偶数曲がバラードもしくはスロー・テンポ。(13)はウクレレの弾き語りで、トラッド寄りのカントリー。エミルー・ハリスとのどかに歌っている。歌にちょっと塩辛さもあるけれど。
 基本はロックなノリを忘れないが、大人しくお行儀よくメロディ・メイカーなコステロがメインと実感した。

 ぼくは本盤をきちんと聴いてなかったな。反省。このざらついた空気感の大人なロックをきっちり味わおう。

 そう、コステロは本盤で若かりし頃の暴れっぷりを憧憬してない。あくまで地に足をつけ、綺麗に飾られたサウンドと逆ベクトルの汚した音をバンド名義でやってみた。
 10年かかって、再評価することになるとはな。当時のぼくは、何を聴いていたのやら。

Track listing
1. Button My Lip
2. Country Darkness
3. There's A Story In Your Voice
4. Either Side Of The Same Town
5. Bedlam
6. The Delivery Man
7. Monkey To Man
8. Nothing Clings Like Ivy
9. The Name Of This Thing Is Not Love
10. Heart Shaped Bruise
11. Needle Time
12. The Judgement
13. The Scarlet Tide

Personnel:
Produced by: Dennis Herring and Elvis Costello

Elvis Costello - vocals and guitar, piano, glockenspiel, tambourine, bass, ukulele
Steve Nieve - organ, piano, accordion, harmonium, Hammond organ, theremin, melodica, omnichord
Davey Faragher - bass
Pete Thomas - drums

John McFee - pedal steel guitar on 2
Lucinda Williams - vocals on 3
Emmylou Harris - vocals on 8,10,13

 本盤はバージョンがいくつもあり。アナログでは1曲多かった、ぼくは欧州盤の普及版13曲入りCDで聴いてる。日本盤だと2曲増えた15曲入り。さらにデラックス・エディションなるバージョンもあり、さらに7曲のミニ・アルバム付きだったらしい。 
 
 お金稼ぎが本業とはいえ、なんかこういう金出さないと全貌が聴けないってのは、しっくりこない。豪華なパッケージ代とは別に、音楽は別の支払いかたで簡単に聴ける方法がないものか。とはいえデラックス・エディション、全然プレミアついてない。

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