Ulrich Schnauss 「A Strangely Isolated Place」(2004)

 エレクトロニックなシューゲイザーの穏やかで開放的な盤。自己耽美に陥らない。
 

 このインタビューを読むとエレクトロ・シューゲイザーってバンドはメディアの枠嵌めでなく、本人も意識した音楽スタイルらしい。

 77年のドイツ生まれ。この世代だとシューゲイザーがリアルタイムで実感になるのか。 エレクトロの奏者はたいがい、別名を使いながらあれこれリリースが多い。だから全貌が掴みづらい。ウルリッヒ・シュナウスも例にもれず、ソロデビューの前はEthereal 77やView To The Futureって名義を使ってたそう。

 今、Amazonで検索の限りでは、特に双方の盤が引っかからず。Youtube頼りかな。
 

 今回、彼の経歴をDiscogsで見てたら他にも名義があり。Hexaquart、The Extremist。
 バンドではBeroshima、Engineers、Police In Cars With Headphones、Hair、Tinkabell、Ulrich Schnauss & Mark Peters。やはり全貌が掴みづらい。Youtubeで出てくるかな?
 
 近年はタンジェリン・ドリームにも参加のようだ。"Mala Kunia"(2014)、"Phaedra Farewell Tour 2014 - London"(2015),"Booster VII"(2015)にウルリッヒのクレジットがあった。ベテランのバンドとも交流してるのか。
   

 本盤はセカンド。ポップ・ソングとしてどの曲もアレンジされ、全8曲入り。それぞれ6~10分と一曲は長いが、音色やビートが延々と続くアンビエントではなく曲としての構成を意識してるようだ。

 華やかにくつろぐパッド音色が広がる(1)で始まったと思えば、(2)のように"BGM"あたりの中期YMOを連想するビート感の強まった曲に。小刻みなドラム音色がチープに鳴り白玉なシンセと馴染む(3)から、ごおっと薄くフィルターかかった音色にリズムが静かに、しかしクッキリ乗る(4)へ。曲調はバラエティに富んでいる。

 共通項は奥行きあり、崩れそうな音色とドラム・ビートか。まっすぐ力強い音色は使わない。表面がざらつき、揺れる。不安定で、しかしノイズまではたどり着かない。途中経過の美学、ではないか。明確な立ち位置を示さず、揺れる。
 ドラムはエイト・ビートを基調だが、タムのパターンが中心でベースやキックはむやみに強調しすぎない。

 (5)は淡々とビートが刻み、音色が旋律の断片を作るけれど。まさにシューゲイザー的にリバーブの海に沈み、幕越しに風景を見ているかのよう。
 明確なピアノ音色を使った(6)も、フレーズは音量を変えて別の旋律を足し、曖昧模糊とした浮遊感を出す。

 軽やかにひしゃげたスネアの残骸が刻むビートを軸に、ふっくら大輪に広がる電子音の花びら。(7)ではいくつもの音色がぎっしり詰め込まれ、構造を容易に掴ませない。
 スッと空気を這う明瞭なシンセの音がアクセントになった。

 最終曲の(8)は10分越えの大作。いくつもの音が絡み、和音感がじわじわと変貌していく。明確なコード変化ではなく、緩やかなモーフィングのように。
 スペイシーなきらめきも感じさせた。

 ぼくは冒頭2曲の味わいが、この盤のイメージだ。聴いてるうちにアルバムの印象そのものが、モヤけてしまう。
 改めてじっくり聴いて、色々と工夫してバラエティさを狙った盤だと、改めて実感した。良いアルバムだ。今は廃盤みたいだが、あまりプレミアもついてない。見つけたらぜひ、聴いてみて欲しい。


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