The New Power Generation 「Exodus」(1995)

 映画を撮る代わりにアルバムで、混沌なストーリー仕立て。
 表面はシンプルなファンク大会、実は丁寧な作りに唸る。廃盤が惜しい。

 セグエに挟まれたアルバムで、21トラックだが楽曲は9曲のみ。
 プリンスは詩人であり、コンセプト・メイカーだった。自らの物語力を映画で表現を数度試みたが、結果的にコケまくった。道楽をやめ、音楽で表現したい。でもプリンスのブランドを使いたくない。契約の意味ではなく、音楽的にも。それが、本盤ではないか。

 プリンスが別名義もしくは別バンドを立てるときは、いわば傍流のアプローチ。音楽や契約上でプリンスの名を前面に出したくないか。あとは自分の仲間や女の子へ恩賜か気を惹く材料のときに別名義を使う。
 孤高のセレブなゆえに、少なくとも対外的なコミュニケーションは不器用な方法を取った。本当の仲間内の交流は知らないが。けれど外から伺うプリンスの対外アプローチは、プリンスと言うブランドを崩さぬよう、豊富な音楽才能と比べてすごく慎重だ。プリンスの名で駄盤を出さぬよう、様子見してる気がする。
 
 本盤はNPGに華を持たせるのが趣旨ではあるまい。ボーカルは主役級のソニー・Tを筆頭に多くのメンバーを起用してるが、匿名性が強くだれもが印象に残らない。次々に現れるキャラクターは群衆であり、音楽や個性の位置づけは薄かった。

 プリンスは本盤でベース奏者としてトラ・トラと自らをクレジット。そう、本盤ではプリンス印のエレキギターより、ベース中心のファンクを追求した。

 ふんだんに挿入されるセグエも、本盤の特徴である。
 プリンスがセグエに興味持ち始めたのは"Love Simbol"(1992)あたりからか。セグエの語義は「曲や物語を次へ切れ目なくつなげる」こと。曲間の芝居っ気ある会話やナレーションを、プリンスはセグエと称した。
 セグエはイメージを明確に作品与える。これでプリンスはアルバム・ストーリーの構築を図った。自らをヒーローとして目立たせない。だからピントが甘くなったともいえる。
 要は映画やミュージカルのように複数の曲を繋げるアプローチ。もしくはわさわさっと大勢で会話し盛り上げるヒップホップ的な雰囲気で、当時の流行に近づきたかったのではないか。
 
 というのも曲が少しばかり、シンプルに寄りすぎる。プリンスは当時、ファンクの追及に熱心だった。ポップなメロディの起伏を薄め、グルーヴに軸足を置いた。
 あからさまに高度なテクニックのひけらかしでなく、粘っこいファンクを丁寧に構築が狙いのように。
 ライブならば説得力を持つ。だがCDでは分が悪い。特に本盤はボーカルが弱いだけでなく、音像そのものものっぺりしてた。

 並行してミックスやマスタリングの実験もしてたのか。"Rave Un2 The Joy Fantastic"(1999)での奇妙なくっきりさ、"The Rainbow Children"(2001)あたりから方法論を掴む、アナログの質感を生かした柔らかな奥行きあるサウンドを作るための。

 なおPrince Vaultには本作の過程として、二種類の曲順が並べられている。"Purple Rain"時の試行錯誤を連想した。決して本盤はやっつけ仕事ではない。もっと手軽に作ったとばかり思っていた。反省。

 まず94年6月時点は本盤のクライマックスで10分にわたる大作"The Exodus Has Begun"で、いきなりアルバムが始まる構成だった。"It Takes 3"を収録予定が没、未発表曲になっている。この時点ではセグエをふんだんに挿入しつつ、楽曲は6曲で全トラック14個と、コンパクトな構想だった。

 同年12月4日時点は大幅に曲順が変更され、16曲に拡大。以下の通り全11曲と音楽の比率が膨大に増えた。EW&Fに提供曲から、名曲"Love... Thy Will Be Done"のセルフカバーなど、バラエティに富んでる。
 今でも未発表な曲やカバー、のちにNPG Music Clubで発表曲もいくつか。この流れで発表されたら、本盤は裏ベストみたいな魅力を持ってたかも。

 すでに冒頭の流れとエンディングを大作"The Exodus Has Begun"が締める構成は、このとき固まった。
 そしてもう一度曲順やセグエを見直し、さらに物語性を強めて翌年3月にリリース。年明け早々に完パケとして、短期間で幾度もプリンスは本作をいじってたことになる。
 豊富な録音量と裏腹に、完成度を求めて試行錯誤を続けるプリンスの集中力が、こういう過程の情報から伺えて興味深い。

1. NPG Operator
2. Get Wild
3. Slave/Acknowledge Me (Slave a.k.a. Slave 2 The System)
4. Super Hero (incorporates Outa-Space(uncredited))
5. Count Segue (later renamed Segue)
6. Count The Days
7. Sonny Segue
8. DJ Gets Jumped
9. New Power Soul
10. Mad
11. Love... Thy Will Be Done
12. Funky
13. Proud Mary
14. NPG Bum Rush The Ship Segue
15. The Exodus Has Begun
16. Funky Design

 本盤は改名騒動の渦中、膨大なリリースが始まった94年に発表された。
 "Get Wild","The Good Life","Count The Days"の3曲がシングルで切られた。もっと評価されるべきポテンシャルを持ちながら、パワーの炸裂に欠けている。惜しい。
 
 同時期に発売の"The Gold Experience"(1995)もセグエが入っていた。もしかしたら本盤と表裏の関係を狙っていたのかも。女性オペレータのRain Ivanaは、双方に参加している。
 
 本盤ではただのレコード会社ではない、と"NPG"の宣伝めいた電話オペレータの会話で始まり、最後はソニーの夢だった、と終わる。混沌としたストーリー仕立てか。あまり喋りの内容を理解できていない。
 
 電話オペレータのみを明確に、電話相手はボコーダーで声を潰し左右に振る会話体から始まる「きっとあなたは、なれるわ」とオペレータが言ったとたん「ワイルドに!(Get Wild)」と曲が始まる流れが、カッコいい。ミックスがいまいち平板で、ダイナミズムに欠ける。できるだけ、でかいボリュームで聴いてほしい。

 "Get Wild"は重戦車のように突き進み、エレキギターを
 この曲で当時にテレビ出演の映像もあり。Tora Toraがきっちり登場。ベースを弾いている。初めて見た。ホーン隊などいない音も聴こえ、カラオケのあて振りみたいだが。
https://www.youtube.com/watch?v=GWGo4XKjrjc

 クラブへ向かう男たちの対話を挟み、"Dream Factory"のリフをプレイするDJの喋りから、怒涛のファンク。初期から本盤のため準備された。歌よりも演奏を軸に置き、ソロ回しを想定したかのよう。NPGのテーマ曲、名刺替わりかな。思い切りジャジー、Madhouseのアウトテイクでも不思議じゃない。

 ざわつくクラブでソニーを誘惑する女性の声と、不穏な男たちの声。ベッドに行ったソニーと女性、「テレビを消せ!」と激高し拳銃でテレビを破壊するソニー、いぶかしむ女性に「Count the Days」と呟き、曲へ向かう。「何日残されたか数えてみろ」ってニュアンス?

 "Count the Days"そのものは甘いバラード。プリンスのハーモニーはファルセットで女性コーラスと溶け、ソニー・Tがりりしく歌う。とはいえ歌唱力はちょっとシンプル。入れ代わり立ち代わり、中性的に煽るプリンスの掛け声が素晴らしい。
 ファンク大会の本盤と対照的に、ここではエレキギターの弾き語り風に音数少なめに聴こえるアレンジ。実際はギターが数本にシンセにベースときめ細かくアンサンブルが組み立てあり。

 ソニーの精神世界を表現か、音楽に集中か。ここはセグエ無しで曲を繋げた。製作終盤に作られた曲の一つ。やはりリード・ボーカルがプリンスでないと、つるっと曲が流れてしまう。鍵盤が彩りベースとギターの絡みでグルーヴを作る、P-Funk寄りのパターン。中盤でラップも入る。演奏無しのアカペラから再びバンドが加わるアレンジなど、とてもライブ的もしくはDJ風だ。
 
 さらに甘く、もう一曲"Cherry, Cherry"。発売当初はポップなメロディと、プリンスっぽいファルセットの歌声に、もっとも本盤で惹かれた楽曲だった。これも終盤に製作された曲と言われる。甘酸っぱい若さを感じられる。影や凄みを消し、明るく旋律は紡がれた。今聴くと他の曲に比べ小品だな、とも感じる。

 またセグエ。再び街を歩くソニー。チンピラ(?)から煽られる。フェイドインするように、曲へ。
 "Return of the Bump Squad"は7分越えの大作で、がっつり低音成分が含まれた。そこへ別ラインのベースが加わる。群唱ぽく迫る、プリンス的なファンク。これも最終段で付け加えられた曲。ひときわ高いテンションで、シンプルにメロディを提示の一方で、アレンジは細かく変化した。
 気持ちが浮き立つ解放感と、がっつり身を縛る低音の両極端で魅了する。サックス・ソロにはリバーブがかかる一方で、リズムはドライ。二極構造が特徴か。

 3分以上の長いセグエ。部屋に帰ってテレビをつけると、説教めいた甲高い男の声。ソニーは部屋でイラつく。かかってきた電話を取ると、何やら不穏な雰囲気に。テレビの声はどんどんテンションが高まり、イカレていく。ソニーは再び出かけてしまい、テレビの会話が残される。雑踏のSEと混ぜ、多層的な空間を作った。ソニーの自問自答みたいな声から、音楽へ。

 "Big Fun"も7分越えの眺めなファンク。プリンスはあからさまにシャウトせず、ファルセットをかぶせて柔らかく挑発した。これもボーカルの掛け合いは多重録音で凝ってるが、曲構造は単純。ときおりリズムを抜いたりメリハリつけながらも、ワンコードで押してきた。じっくり聴くと、じわじわプリンス流グルーヴの沼にハマっていく。

 セグエと言うより寸劇な(16)では朝になった?スポーツ・ニュースをバックにソニーと男の電話で短い会話。次々に場面展開する混沌とした雰囲気。幻想と現実の交錯を表現か。そして意識が混濁し、"Hallucination Rain"に沈んでいく。

 "Hallucination Rain"はソニーがあっさり歌うことで、むしろヘルシーになった。プリンスの粘っこさだと、もっと妖しさが増す。ベースとドラムのシンプルなリズムに弦やギターが足され、漂う。ここではファンクよりも平べったいノリを提示した。
 浮遊する美しさに浸れる。あまり展開は無いが、癖になる魅力あり。軋むエレクトリック・バイオリンの硬質なアドリブが耳に残る。終盤での充満する膨大な情報量も迫力たっぷりだ。
 
 セグエはSEが派手に飛び交う喧嘩めいた世界。"NPG"のちょっとしたシュプレヒコールから、本盤最後の長尺ファンク"The Exodus Has Begun"に突入した。
 これもP-Funk的なドラマティックさを持つ群唱と盛り上がりを持つ。切迫した空気で高らかに盛り上がる。前述のように当初はアルバム冒頭に置く予定だった。ドラマティックさで壮大な展開を狙ったか。
 本盤の流れではこの曲をクライマックスに置くことで、ここまでのシンプルで表面は騒めく骨太ファンクな世界をきれいに大団円へ導いた。

 そして、夢落ち。蛇足な気もするが、現実世界への落ちをつけたかったのかも。

Track listing:
1. "NPG Operator Intro" - 0:35
2. "Get Wild" - 4:32
3. "segue" - 0:38
4. "DJ Gets Jumped" - 0:22
5. "New Power Soul" - 4:10
6. "DJ Seduces Sonny" - 0:38
7. "segue" - 0:43
8. "Count the Days" - 3:24
9. "The Good Life" - 5:48
10. "Cherry, Cherry" - 4:45
11. "segue" - 0:18
12. "Return of the Bump Squad" - 7:20
13. "Mashed Potato Girl Intro" - 0:21
14. "segue" - 3:00
15. "Big Fun" - 7:26
16. "New Power Day" - 3:49
17. "segue" - 0:14
18. "Hallucination Rain" - 5:49
19. "NPG Bum Rush the Ship" - 1:40
20. "The Exodus Has Begun" - 10:06
21. "Outro" - 0:37

Personnel;
Producer, Arranged By, Composed By, Performer - The New Power Generation

Double Bass, Vox, Other Shit - Tora Tora

Bass, Lead Vox, Background Vox - Sonny T.
Drums, Vox - Michael B.
Guitar - Michael Scott on 10
New Power Generation Hornz on 2,5,20
 (Brian Gallagher, Dave Jensen, Kathy Jensen, Mike Nelson, Steve Strand)
Organ, Synthesizer, Vox - Mr. Hayes
Piano, Keyboards [Purpleaxxe], Vox - Tommy Barbarella
Programmed By [Programming] - Statik
Saxophone, Flute - Eric Leeds on 9,12,15
Scratches [DJ] - Brother Jules on 20
Violin [Electric] - Denis Boder on 18
Vocals [Assorted Shouts And Insperation] - Levi Seacer, Jr. on 18
Vocals [Assorted Vox] - Kimm James on 18
Voice [NPG Operator] - Rain Ivana

Background Vox - The Steeles on 20,Eric Radford on 12, James McGregor on 12, Kathleen Bradford on 12, Michael Bradford on 12,
Background Vox,Spanish Vibe & Hallucinations - Mayte


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