Smokey Robinson 「Quiet Storm」(1975)

 新ジャンルを作った、しなやかなソウルな傑作。意外と五目味だ。

 "クワイエット・ストーム"という、FMなどの音楽ジャンルがある。大人らしく、しっとりムーディなサウンドのこと。その象徴になったのが本盤の一曲目。穏やかで涼し気なサウンドに、スモーキーのファルセットが温かくしなやかに載る。隙の無い名曲だ。

 ソロでは3rd,"Pure Smokey"(1974)からほぼ1年ぶりに発表された本盤は、タイトル曲とB1を共作以外はすべてスモーキーの自作でまとめた。36分のコンパクトなアルバムの一方で、むやみに短く曲を並べず7曲とじっくりまとめた。
  
 全体を通じて、寛いだ面持ちで魅せる。曲間に風のSEを混ぜて、アルバムのトータル性を強調した。
 アレンジにはスモーキー自身とRuss Turnerがクレジットされてるが、緻密な技はだれの手柄だろう。ビートがきつすぎず、管や弦に頼りきることなく、ピアノやギターでもゴージャスさを出す音作りは、素晴らしく美しい。

 タイトル曲のA1はベースのオスティナートに"My girl"を連想した。風のように舞い、重なる女性コーラス。ぱっとまとめてサビへ小気味よく、雪崩れ畳みかけるバッキングの洗練されっぷりが、かっこいいったらない。

 いくぶん甘さや瑞々しさを増したA2で、アルバムは聴き手の耳を他にそらさない。フルートから弦へ。豪華だが分厚すぎないバランスで歌を引き立てた。緩やかに大きな譜割で、スモーキーは歌う。詰まったささやきから、高らかに伸ばす幅広い表現力をたっぷり味わえる。

 A3はちょっとテンポを速めたラテンの香り。素早い音使いでメロディが駆け抜ける。サビ前にタメを作り、ボーカルと同じテンションで伴奏が進んでいく。引き立てる、もしくは煽るのでなく、同じテンションで。

 結婚式ソングのA4はメロディ・ラインのトリッキーさが魅力だ。和音の上をエキゾティックに旋律が上がっていく。緊張感とほんの僅か奇妙な雰囲気。その独創性こそが、この曲の味わいだ。大団円の予定調和を狙ってもおかしくない、のに。
 スモーキーはあえてメロディを、くっきり目立たせた。

 B面1曲目も名曲。ピアノをバックに、しっとりとスモーキーが歌いかけた。中盤からティンパニ風のドラムが静かに鳴り、弦などが加わって厚みを出す。
 歌声はどこまでも涼やかで、ダイナミズムのメリハリ効いた情感が美しい。
 
 3分過ぎに溜めて、コンガとともに鮮やかにテンポ・アップ。ソプラノ・サックスのソロで華やかに開く場面など、痛快な鮮烈さだ。
 ともすれば大仰さがクサくなるのに、この曲はグルーヴィさを持ち続ける。柔らかなファルセットのなせる技か。

 シンセを目立たせたディスコ風のB2は、少しばかり遅めのテンポ。キメの塊みたいなアレンジだ。次々にフレーズが現れ、演奏はキャッチーさを保とうとする。
 なのにどっか野暮ったいスピード感で、粘る係留感を伴った。別に速いテンポでもスモーキーは歌いこなせる。あえて大人っぽさを強調したテンポの選択だろう。

 アルバム最後はアップテンポでしめた。細かいパーカッションの重なりにラテンの風味を感じた。ささやき声からちょっと喉を開いたスモーキーが伸び伸び歌い、ハーモニーがちょっとひねった和音感で詰まった響きを出し、緊張感を演出した。

Track listing[edit]
A1 Quiet Storm 7:47
A2 The Agony And The Ecstasy 4:43
A3 Baby That's Backatcha 3:36
A4 Wedding Song 3:20
B1 Happy (Love Theme From "Lady Sings The Blues") 7:05
B2 Love Letters 4:04
B3 Coincidentally 4:22

Personnel:
Producer, Arranged By - Smokey Robinson
Written-By - William "Smokey" Robinson,Michel Legrand (tracks: B1), Rose Ella Jones (tracks: A1, B2),

Keyboards, Backing Vocals, Arranged By - Russ Turner
Backing Vocals - Carmen Bryant, Melba Bradford
Bongos, Congas, Backing Vocals - James "Alibe" Sledge
Cello [Electric] - Michael Jacobsen
Drums - Gene Pello
Drums, Percussion - Joseph A. Brown Jr.
Effects [Special Sound] - Shawn Furlong, Terry Furlong
Guitar - Marv Tarplin
Horns, Woodwind - Fred Smith
Percussion - Gary Coleman

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