Tower of Power 「Ain't Nothin' Stoppin' Us Now」(1976)

 寛いだ雰囲気で、イタリアン風味を増した一枚。

 80年代半ばだったかな、僕が当時にタワレコで唯一見つけたLPが本盤だった。当時、タワー・オブ・パワーはあらかた廃盤。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースでToPを知り、シカゴみたいなブラス・ロックも好きだったのでToPを聴いてみたかったんだ。
 もっとタイトなEW&Fみたいなのを想像しており、本盤を聴いてグッとなごんだ記憶ある。萩原健太のラジオで彼らの曲をさらに知り、CD再発され始めたころに次々と聴き進んだっけ。
 あとは、当時からザッパのファンだったためChester Thompsonの名前に驚喜した。もちろん、別人なのだが。

 歴史を通して聴いてみると、この時期は少しばかりビジネス的に低迷の時期と思う。当時はやりのディスコ・ビートの硬質なビートと、ToPの粘っこく腰に来るファンクは明確に違う。だが流行りに寄り添わず、彼らは模索を続けた。主にメンバーを変えることで。成功したとは言い難い。それでバンドの統一感が薄れてしまった。

 本盤はワーナーからコロンビアに移籍して初のアルバム。ボーカルにEdward McGeeが起用された。結局、ワン・ショット担当で終わってしまう。これが本盤を、妙なイタリア風味の親しみやすいアルバムに仕上げた。

 歌い方がいわばフランキー・ヴァリ、あるいはディオン。鼻にかかる滑らかな節回しと軽やかさ。さらにEdwardはファルセットも巧みに操る。だからなおさら、ヴァリを連想してしまう。
 ただしEdwardは黒人。リリースの経歴がうまく見つからないが、cdbabyから14年にクリスマス・ソングを一曲発表してた。
http://www.cdbaby.com/cd/edwardmcgee
 今でも歌手活動は続けてるようだ。今年3月に投稿された、10人組のバー・バンド"Manchuka"のライブに参加してる動画あり。演奏がヘタでメゲるけれど、Edwardは変わらぬハイトーンを聴かせてる。
 まさにToPの代表曲"Tower Of Power"(1973)収録の"So Very Hard To Go"を演奏の動画がこちら。

 
 77年のToPによるライブ動画もあった。フロントの黒人歌手がEdwardだろうか。
 バンドに対し、完全にフロント役で頑張ってる様子が伝わる。

 なぜ本盤一枚で、EdwardがToPを去ったかは知らない。これはこれで、継続活動してもOKなキャラクターだと思う。さらに保守的なToP路線とぶつかったか。

 ともかく本盤はToPのメロウなファンクネスをそのままに、温かく柔らかく仕上げた。タイトなスリルよりも、穏やかな寛ぎがアルバム全体のイメージを作ってる。
 なおドラムも御大デヴィッド・ガリバルディからRon E. Beckに変わった。手数多く軽やかに叩きのめし、ロッコとの気持ちいいグルーヴを作ってる。
 
 冒頭は飲み屋の喧騒。ビリヤードの球が弾ける音がSEに入り、群唱で歌が入る。わさわさっと賑やかでしたたかな雰囲気で幕を開ける。収録曲はToP節のホーンが映える曲もあれば、弦で綺麗に整えたり。まちまちの雰囲気だ。

 収録曲の路線が意外に幅広いため、五目味な印象を受ける。ホーンや弦のアレンジはほぼすべて、グレッグ・アダムズで、サウンドの統一性はあるけれど。なお(9)と(10)だけホーンのアレンジはチェスターが行った。

 (2)はボーカルをぐんと前に出してメロウさを強調する。ストリングスが涼やかに鳴り、高音で喉を潰すように叫ぶ歌が切なくファンキーに響いた。転がるベース・ラインがサウンドを引き締めてる。
 
 アッパーな軽い盛り上がりの(3)。まさにToP節と思ったら。作曲はKeith RogersとRon E. Beck(ds)の共作。外様組がこういう曲を書くんだ。
 初期ToPに通じる雄大で煙ったバラードの(4)はブルース・コンテ(g)らの作品。まさに自分らの魅力をわかってる。女性ボーカルを足して熱さを増してるが、過剰さは無い。ToPの色、そのままだから。ロッコがときおり速いフレーズで煽るのもかっこいい。

 丸く弾むドラムとToPの甘いホーンの馴染みが愛おしい(5)はクプカ(sax)がクレジットあり。間奏のリフが凄く好き。ホーン隊とギターの絡みで広々と赤く染まる風景を描き、豪華で埃っぽいパワフルな色を漂わせた。

 勇ましい(6)も甘酸っぱさを根底に残した良い曲。バック・ボーカルもたっぷり入れてるけれど、本盤に限って言うとこの曲に限らずトゥー・マッチ感は薄い。耳に馴染んでるせいか。カスティーヨやクプカのToP直系の曲だ。本来なら、ここからB面。

 マーチング・バンド風のイントロから、ちょっと不穏な和音に雪崩れる(7)もカスティーヨやクプカの曲。"What is hip"直系のToPファンクを全開にした。 
 ばっちり決めた後で(8)で寛がせる。この緩急はさすがだ。ここでも弦と管がたっぷり鳴り、オルガンも加わって分厚くコーティングながらもToPの持ち味な切なさを芳醇に漂わせた。ハイトーンのボーカルが映える。

 (9)はチェスターの曲で硬質さを増したファンク。白玉と歯切れ良いフレーズ、双方が快活に溢れた。非常に魅力的な曲だ。
 そして甘酸っぱさと寂し気な雰囲気の(10)で大団円。甘く切ないソウル風味を強調した。終盤ではリプライズで(1)が現れ、トータル性を漂わす。これもカスティーヨやクプカの曲。ロッコのベースが細かく揺れながら上下にはじけた。

Track listing:
1. "Ain't Nothin' Stoppin' Us Now" (Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka, David Bartlett) – 3:58
2. "By Your Side" (Edward McGee, Clifford Coulter) – 4:30
3. "Make Someone Happy" (Ron E. Beck, Keith Rogers) – 2:47
4. "Doin' Alright" (Bruce Conte, Coleman Head) – 4:48
5. "Because I think the World Of You" (Stephen "Doc" Kupka, Frank Biner) – 3:00
6. "You Ought To Be Havin' Fun" (Hubert Tubbs, Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka) – 3:06
7. "Can't Stand To See The Slaughter" (Stephen "Doc" Kupka, Emilio Castillo) – 2:47
8. "It's So Nice" (T. Castillo, Emilio Castillo, David Bartlett, Stephen "Doc" Kupka, Frank Biner) – 5:39
9. "Deal With It" (Chester Thompson) – 3:20
10. "While We Went To The Moon" (Stephen "Doc" Kupka, David Bartlett, Emilio Castillo) – 4:24

Personnel:
Greg Adams – trumpet, conductor, flugelhorn, vocals
Ron E. Beck – vocals, drums, snare drum,
Emilio Castillo – tenor saxophone, vocals,
Bruce Conte – guitar, vocals,
Mic Gillette – percussion, trombone, trumpet, flugelhorn, baritone, bass trombone, vocals
Stephen "Doc" Kupka – baritone saxophone, producer
Bill Lamb – trombone, trumpet, flugelhorn
Edward McGee – vocals,
Lenny Pickett – alto and tenor saxophones, lyricon, producer
Francis Prestia – bass guitar, producer
Chester Thompson – organ, synthesizer, acoustic piano, keyboards, vocals, clavinet, Moog synthesizer, bass pedals

Patricia Henley – background vocals
Melba Joyce – background Vocals
Carol Rogers – background vocals
Ivory Stone – background vocals
nts

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