東京ザヴィヌルバッハ 「Cool Cluster」(2002)

 小節が切り刻まれ不安定な譜割を持つ。だが抽象性さを超えた、強靭なダンス・ビートの色合いを持った盤。

 坪口昌恭がリーダーを務める、東京ザヴィヌルバッハ。
 インディから"Live in Tokyo"(2001),"Hamlet on the Highway"(2001)を発表後、メジャーデビューの3rdが本作。自動演奏ソフト"M"にリズムを生成させ、即興的に鍵盤や管をダビングする方向性はそのままに、ゲストで大儀見元の生演奏、サンプリングで藤井信雄を招き、リズムの輻輳性を増した。

 菊地成孔のCD-Jも激しさを増し、クラブ・サウンド的な明瞭さと、怒涛に雪崩れるアッパーな雰囲気も過去作に比べて強調されたと思う。
 本作でクレジットはあるが脱退した五十嵐がいた時代の、ぎりぎりバンド的なダイナミズムの片鱗を、本作ではひっかけていた。

 以降はデュオで猛烈にリズム追求しながらも、次第に菊地がとても緩やかにフェイドアウト。"SWEET METALLIC"(2008)で音盤上は菊地がいなくなる。その後は坪口のソロ、もしくは"アコースティック"と銘打ち"M"との共演コンセプトは次第に変貌して、今に至る。

 この時期の東京ザヴィヌルバッハの魅力は、突拍子もない展開と力技のアドリブだ。本盤ではパーカッションを足すことでビートの強靭さは確保されている。
 その一方で、"M"が繰り出すくきくき折れ曲がるフレージングと、無理やりジャズなアドリブを突きつける緊迫感がカッコいい。

 いちおう、楽曲の構成は存在する。けれども無秩序なジャムセッションを編集まみれにしたような、唐突かつ激しい跳躍の展開は不変な魅力を持つ。
 坪口の鍵盤はむやみにダビングはしてないのに、ぼおっと聴いてると充満する存在感と膨らみを持つ。菊地はCD-Jで蹂躙し、ソロで疾走する自由で奔放な突撃役か。

 例えばダブ風のエコーをまとった(4)のテナー・ソロには、のちの菊地ダブ・クインテットへの予兆もあり。安定ではなく、変貌。その意気込みが本盤から溢れた。
 
 全体的な音の印象は坪口のシンセ。しかしCD-Jやサックスで菊地の存在感は、サイドメンバーでなく主役だ。この時期は菊地がメジャー・デビュー前。自己の活動を膨張させておらず、集中してTZBへサウンドを叩きこめていた。

 フュージョンめいた(2)のような洒脱さと、初期テクノふうの(5)みたいに硬質な肌触り。双方の要素が滑らかに同居する。ひとつの色に染まらない、雑多でごったな味が絶妙に危ういバランスで混ざった。しかし(5)でのキメは明らかに、ハンコックの"Rock it"のイメージだな。

Track listing:
1.Poly Gravity ['9"35]
2.Jackson Pollock Program ['8"42]
3.Rain of Zero Gravity ['2"02]
4.Walking Smartman ['9"14]
5.The Age of Cyber Funk ['7"30]
6.Bird Conduct2 ['4"40]
7.Procession ['8"33]

Personnel:
坪口昌恭:Keyboards, Computer("M" on Macintosh)
菊地成孔:Soprano,Tenor Sax & CDJ
五十嵐一生:Trumpet, Synthesizer

大儀見元:Percussion
藤井信雄:Drums(for Sampling)

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