Abdullah Ibrahim 「Cape Town Revisited」(2000)

 おしゃれな雰囲気から、次第に熱っぽく盛り上がるアフリカン・ジャズ。

 EnjaのサブレーベルTiptoeから04年発売の、97年12月13日南アのケープ・タウンでのライブ盤。雰囲気は上品で高級なジャズ・クラブ風。特段、ルーツ回帰や泥臭いグルーヴをもとめたってわけじゃない。むしろ故郷へ錦を飾るって意味合いのほうが強そう。

 本盤15曲はすべてイブラヒムの作曲。過去のレパートリーも演奏しており、どの程度書き下ろしかはよくわからない。好きなピアニストではあるが、全部は詳しく聴いてないんだよね。けっこう、入手が難しい盤もある。

 ロマンティックなジャズで始まり、最初こそちょっとめげる。だがじわじわとファンクネスが滲みだしてきた。本盤では上品なイブラヒムだ。荒々しさやキュートさは出さない。大人の柔らかなタッチでピアノを操る。けれど、その奥底から現れる雄大なセンチメンタリズムと、やさしさこそがイブラヒムの魅力。
 最初はBGM風に聴いてて、いつしか彼の節回しや和音感に浸ってる。そんな時間の流れを楽しめる盤。

 ピアノ・トリオが基本、4曲で現地のトランペット奏者、Feya Fakuがゲストに入った。リズム隊のMarcus McLaurineとGeorge Grayはイブラヒムと何枚も共演ありの、ハウス・トリオ。さかのぼること約10年前のライブ盤、"Yarona"も同じメンバーだ。
 ドラムとベースはあまり目立たず、着実にイブラヒムを支える。だからたまにソロを取ると、ここぞとばかりに拍手をもらってた。

 前半は"Cape Town To Congo Square"を軸にカッチリきめて、中盤から馴染みの曲を連発で盛り上げていく。本人がブックレットに記したメモを見る限り、南アフリカをテーマに書いた曲を並べてるみたい。
 曲のつなぎは自然で、おそらくあまりカットせず1セット丸ごと収録と思う。いやはや見事なセット構成だ。
 
 キャリアは長く多数のリーダー作を持つイブラヒムだが、それほどむやみなリリースは無い。本盤は"African Suite"(1998)から2年ぶりのアルバムになる。


 だが本盤の音源は数年前のライブだから、新味とは少し違う。イブラヒムがよほど気に入った演奏で、時間つなぎにおもむろにリリースってとこか。手のかかるシンフォニックなアンサンブルにイブラヒムは当時、傾倒してたようだし。 

 ダラー・ブランド名でデビューしたアブドゥーラ・イブラヒムは、初期の傑作"アフリカン・ピアノ"(1970)が有名だ。漆黒のファンクネスなアルバムなのにECM傘下のレーベルから発売歴もあり。原盤はデンマークのSpectator Recordsって記述も見かけた。

 その後、彼は70年代に南アへ渡り現地のミュージシャンとセッションを重ねた。LPにして10枚くらい、CDでリイシュー時には4枚にわたるボリュームの音源がある。この南ア音源こそ、強力におすすめ。ファンキーで柔らかなグルーヴの展開が堪らない。
    
 80年代にはEnjaと契約し、集中力の高い熱い演奏の盤を何枚も吹き込んだ。"African Dawn"(1983)が大好きな盤だ。雄大で深いピアノがべらぼうにかっこいい。アブドゥーラ・イブラヒムに改名も、このころだったか。


 その後も着実にリリースを重ねている。奥さんが日本人だっけか。親日家って記事を見かけた記憶もあり。いまだに現役で今年81歳。健在でいて欲しい。

 本盤は今、廃盤らしいが、さほどプレミアはついてないようだ。


収録曲
1.Damara Blue
2.Someday Soon Sweet Samba
3.Cape Town To Congo Square - 1st Movement - African Street Parade
4.Cape Town To Congo Square - 2nd Movement - District Six Carnival
5.Song For Sathima
6.Cape Town To Congo Square - 3nd Movement - Too-Kah
7.Tintinyana
8.Tuang Guru
9.Eleventh Hour
10.Water From An Ancient Well
11.Tsakwe - Royal Blue
12.Soweto
13.The Mountain
14.The Wedding
15.Barakaat (The Blessing)

Personnel:
Piano – Abdullah Ibrahim
Bass – Marcus McLaurine
Drums – George Gray
Trumpet – Feya Faku (tracks: 7, 11, 12)

Recorded live at Spier Estate, Cape Town, South Africa on December 13, 1997.

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