TZ 7643:John Zorn And Thurston Moore "@"(2013)

 異なる世代な二巨頭が、音盤では初共演。意外性は無かったが、凄いのは確か。

 演奏はすべて即興。テーマのメロディは無く、無機質に即興が進む。高速に軋ませるゾーンのアルト・サックスと、エレキギターを重たくノイジーかつ断片的に鳴らすムーア。
 ある意味で予定調和の音像だが、この手のインプロが好きな人には楽しめるはず。まさに期待を裏切らないサウンドに仕上がった。逆に、本質的なスリルは無い。ああ、この二人ならいかにもって音楽。スリリングだが、驚きは無い。これが手癖を持った即興バトルの難しいところ。

 いや、決してつまらないわけじゃないよ。先の見通せぬ混沌が、滑らかに高いテンションで展開する。力任せのハイスピード一辺倒ではなく、テンポも緩急効かせて行方をあいまいにする工夫あり。
 凡百の垂れ流し即興にならぬよう、二人とも工夫している。だが超絶技巧の引き出しをランダムに空けてるゾーンと、手癖を回避しながら次の手を思いつくまま響かせるムーア。斬新な世界が無い。むう、もどかしい。聴いてるときは楽しいのだが。
 ノイズな世界にも、ベテランの安定はある。そんな思いを巡らせてしまう。
 
 長尺1曲でなく、7曲に分けアルバムの単調さを避けた構成は成功してる。曲名もつけて、意味合いも持たせた。ただひとつながりのセッションを、途中で区切ってるのかもしれない。ぼっと聴いてたら、大きな流れで本盤を聴いてしまう。

 (3)で一瞬だけゾーンがマサダ風のメロディを吹く。そのまますぐに抽象音へ行ってしまうのが残念。
 しかし二人とも、注意深く相手の音を聴き、釣られぬよう外しあい、かといってバラバラでもない絶妙なバランスを保ち続けてる。インプロだからこその盛り上がりや、一方に引きずられるありきたりさを、巧みにずらし続けた。

 メロディもリズムも小節も解体し、回避する。たゆたうロングトーンと、痙攣するスピーディさ。それぞれが無秩序に表れた。しかし粗雑にならない。このバランス感覚は、さすがの二人だ。

 (7)の"For Derek And Evan"とは、デレク・ベイリーとエヴァン・パーカーだろう。ある意味、皮肉なタイトルだ。ベイリーもパーカーも自分の音をしっかり持ち、単調ではないが別路線には向かわなかった。いや、パーカーはまだ存命だが。
 その二人の方向性が、もろにこの音盤へ透けて見える。

 勘違いしないでほしい。辛口な書き方をしてるのは、わかってる。自分の音楽を持ち続けるのは稀有な才能であり、この音楽も凄いと思う。
 ただ、予定調和を超えてない。それが何とも、もやもやする。比較対象として灰野敬二って巨人がいるせいかもしれない。灰野は毎回、違う。この二人は、根底の本質は同じで順列組み合わせだ。

 いや、すごいんだよ。本盤は。ノイジーなフリージャズをエレキギター風味で歪ませた、極上のインプロだと思う。

 なおゾーンとムーアのデュオは、本盤の前に何回かライブ歴あり。勢い一発の唐突に見えて、実は用意周到。ちゃんと成立するかをライブで確かめている。この辺の緻密さも、ゾーンらしい。

 遡ると25年くらい前、91年9月28日に灰野敬二、山塚アイ、クリスチャン・マークレーとゾーンにムーアのセッション映像もあった。この日がゾーンとムーアの初共演かは、知らない。NYのNew Music Caféにて。


 ネット上の情報では、11年の12月30日、NY Stoneで、Sylvie Courvoisierを入れたトリオでライブの映像あり。


 Stoneの当日プログラムでは、以下の表記になっている。順列組み合わせでアケタの年末ジャムのように、いろんな短い即興が繰り広げられたんだろう。

12/30 Friday (MM)
8 and 10 pm
ANNUAL END OF THE YEAR IMPROV PARTY—A STONE BENEFIT
John Zorn (sax) Matt Wilson (drums) Jeremiah Cymerman (clarinet) Sylvie Courvoisier (piano) Shanir Blumenkranz (bass) Uri Gurvich (sax) Okkyung Lee (cello) Sam Kulik (trombone) Frank London (trumpet) Tim Keiper (drums) Dave Taylor (trombone) Ned Rothenberg (sax) Roberto Rodriguez (percussion) Eyal Maoz (guitar) Chris Cochraane (guitar) Thurston Moore (guitar) and many special guests.



 これは写真。12年5月4日、SPRINGING: The Poetry Project’s Spring Benefitにて。 つまり12年にデュオでライブを行っていた。
https://www.poetryproject.org/springing-the-poetry-projects-spring-benefit-542012/

 こちらは動画。同年にNYのle poisson rougeにて。日時は不明だ。
https://vimeo.com/51649205
 この映像、一瞬観客が映るけれど。何人もスマホ構えて撮影してる様子が異様だ。音楽聴けよ。まあ、こういう人がいるからこそ、こうして追体験のおこぼれにあずかれる。だからエラそうなことは言えないが。

 と、ちょっと検索だけでも色々とライブ履歴が出てきた。まだ共演歴あるかも。これらのライブを重ねて、翌年2月、おもむろに本盤を録音したってわけか。

 なお本盤で終わらず、14年12月31日にStoneの1stセットでも、ムーアの仕切りでゾーンとデュオがあった。
http://www.brooklynvegan.com/thurston-moores-5/
 お互い功成り名を遂げており、ガツガツ活動するとは思えない。
 だが今後も緩やかな関係を続け、たまには音盤も出してほしい。聴いてる分には、音楽は楽しいんだ。

Track listing:
1.6th Floor Walk-Up, Waiting
2.Jazz Laundromat
3.Dawn Escape
4.Her Sheets
5.Soiled, Luscious
6.Strange Neighbor
7.For Derek And Evan

Personnel:
Thurston Moore: Guitars
John Zorn: Alto Sax


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