TZ 7355:John Zorn "Filmworks XVIII: The Treatment"(2006)

 タンゴの要素を監督より要請されて立案した、疑似バンド形式のジャズ風セッション。

 ジョン・ゾーン映画音楽シリーズの第18弾は、Oren Rudavsky監督のロマンティック・コメディ、"The Treatment"(2006)。WikiによるとDaniel Menakerの小説を映画化らしい。邦訳はなさそうだ。
 

 いわゆるテーマがあり、ソロ回しの構図だが細かく作曲されており構築度が高い。もしかしたらリアルタイムでゾーンがキューを送っているかもしれない。本人のライナーによれば、どれも1stか2ndテイクで完成して編集やパンチインはほぼ無いという。
 凄腕ミュージシャンならではの仕事の速さが伺える。

 滑らかなテーマが美しく全編を彩った。クレヅマー風の展開も滲むのが、ジョン・ゾーン流だ。
 コード進行よりもモーダルに旋律を生かした演奏に聴こえる。

 バイオリンとアコーディオンを軸に、ビブラフォンで幻想性を増してベースがしっかり引き締めた。参加ミュージシャンはゾーンの顔なじみメンバーが並ぶ。さらに最後、エッセンス的に数曲でマーク・リボーまで参加した。
 いかにもありそうな顔ぶれだが、ぱっと思いつく同じ編成の盤は無い。

 ユニゾンで各楽器がメロディを紡ぎ、多声に広がる。滑らかなソロから構築されたテーマへ。隙や弛緩ない演奏が、本当に素晴らしい。
 (4)などブライトなギターがうっすら加わり、ラウンジ風味を付け加えるセンスも見事だ。

 全編にわたり、スリルとロマンティシズムが充満する。ベースが淡々とラインを強固に敷いて、他の楽器が滑らかにメロディを遊ばせる。あえてフロント楽器を立てず、並列のリード楽器としてビブラフォン、バイオリン、アコーディオンが音楽を膨らませた。

 サントラ、ではあるだろう。だが本盤も他のフィルムワークス・シリーズと同じように、本盤だけでも完結する作りこまれた美学あり。かっこよさの塊だ。

 予告編を見ると、音楽に引きずられてないのが良い。音楽を素材としてきっちり解釈し、映画へ溶け込ませてる。


Track listing:
1. "The Treatment" - 3:34
2. "Romance" - 5:10
3. "Why Me?" - 3:56
4. "Family" - 2:15
5. "Marking Time" - 4:53
6. "Anxieties" - 5:00
7. "Freud's Rondo" - 4:26
8. "Totem and Taboo" - 6:55
9. "Rush Hour" - 3:47
10. "Bad Dreams" - 1:20
11. "Uncertainty" - 6:24
12. "Happy Ending" - 2:44

Personnel:
Shanir Ezra Blumenkranz - bass
Rob Burger - accordion
Mark Feldman - violin
Kenny Wollesen - vibraphone
Marc Ribot - guitar

All compositions by John Zorn
Produced by John Zorn.

 映画全編を収録と思われる動画まで、Youtubeにあった。


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