"English Little League" Guided by Voices (2013)

 五目味でメンバーのバラバラっぷりが漂うムードはそのままに、どんどんバンドぽさが希薄になっていく。ダビングの嵐だ。楽曲としては面白いものも多いが。

 13/1にEP "Down By The Racetrack"を発表、その後4月に本作。再結成GbVの4thアルバムは前作から五ヵ月後にリリースされた。ハイペースなのは、たまった録音を小出しかもしれないが。なんだか、ボブとトビンが好き勝手に録音したものを、とりあえずまとめたっぽい安易さもあり。

 スタッフ面でもメスが入った。前作でのトッド・トバイアスから変わり、John Shoughがメインのエンジニアに起用されている。トッドはGbV本体やボブのソロでこれまでエンジニアや楽器演奏で参加してきていた。とにかくこの時期には、ボブ界隈では馴染みの顔触れ。あえてジョンに担当変えは、トッド任せだとボブのソロと差別化が図れない、とボブが判断したのかも。

 本盤はとにかくマスタリングが凄く良い。しゃっきりメリハリ効いてる。マスタリングの担当はCarl Saff。過去にBoston Spaceshipの担当したが、その時の人脈か。再結成GbVの過去作も担当してはいるけれど、特に本盤の出来が素晴らしい。

 甘いもの、荒っぽいもの、ローファイなもの、きっちりスタジオ録音したもの、さまざまな顔を持つ収録曲を、素材の味わいを生かしながらそれぞれ明確に特徴だてた。

 そして本盤からはシングルも多数あり。アルバム発売の数ヶ月前から、矢継ぎ早にリリースした。各1000枚限定で、アルバム拡販というよりコレクターズ・アイテム。要するにグッズとして発売のイメージが強い。発売月順に並べてみよう。

13/2 Flunky Minnows
13/3 Islands (She Talks In Rainbows)
13/3 Trashcan Full Of Nails
13/4 Xeno Pariah
13/4 Noble Insect

 なお本盤収録曲のライブ演奏は基本的にないが、(1)のみ13年9月のフェス参加や、14年のツアーで何度か取り上げられた。

 他プロジェクトも見回すと、この時期の録音も依然として旺盛だった。
 本盤の約2週間前に、The Sunflower Logic名義でミニ・アルバム"Clouds on the Polar Landscape"を発表した。
 現時点で一過性に終わったが、この時点でGbVのメンバーなグレッグ・デモスや弟のジムに本盤の数曲でエンジニアも担当したジョー・パターソンと組んだバンド。
 さらに本盤の数か月後、Teenage Guitar名義で"Force Fields At Home"を発表した。ボブの多重録音がコンセプトとなる。

 そのあとはGbVでなくソロをボブはリリースした。7月に"Honey Locust Honky Tonk"、12月に"Blazing Gentlemen"。
 あいまにCircus Devilsでも10月に"When Machines Attack"と"My Mind Has Seen The White Trick"のアルバム二種類を同時発売した。全く立ち止まるつもりはなかった。

 つまりボブは多重録音をジョー・パターソンと組み、この時期に頻繁に行ってたようだ。GbVに専念はできなかったのか。

<全曲感想>

1. Xeno Pariah 2:04

 爽やかなコーラスが飛び交うロック。GbVにしては珍しい丁寧なコーラス・ワークだ。ライブでこの緻密さは無理かな。きっちり作りこんでる。もちろん演奏も。ギターはリフに回り、ドライブ感あるベースがアレンジの芯だ。細かくフィルを入れるドラムも、いい感じ。
 
2. Know Me As Heavy 2:50

 メドレーでそのまま雪崩れた、ちょっと気だるげな感じの曲。メロディとも語りともつかぬフレーズの歌を複数のボーカルで積み上げた。これもかなり凝っている。演奏と歌をきっちり溶かすミックスもかっこいいな。ドライな語りの歌声すらも、きれいにオケへハマった。

3. Islands (She Talks In Rainbows) 2:16

 トビンの曲,シングル。宅録とは思えぬエッジの立った音だ。マスタリングがうまいのか、前曲と音圧に差もさほどない。甘酸っぱいメロウな旋律と和音を駆使した、いつものトビン節でほんのりサイケ風味が漂う。ドラムの感じからして、たぶんトビンの多重録音と思うけれど。ふっくら柔らかく広がるハーモニーの味わいは美味しくて良い。

4. Trashcan Full Of Nails 3:31

 ザクッとくっきりしたリフで幕開けのロック。ドラム、ベース、ギターが同じ譜割で刻み、厚みと迫力を演出した。ボーカルはダブル・トラックで左右に振り、中央がぽっと空いた定位の曲だ。

 あえてボーカルはニュアンスをなぞらず、ユニゾンで歌う。イヤフォンだとそのズレや違いが印象深いが、スピーカーだとむしろ残響感が強調され、なおかつ中央が開くことで、奇妙な危うさを持つ浮遊感と広がりを出した。
 リズムが淡々なため目立たないが、メロディはキャッチーだ。スピーディに押すアレンジでもハマったと思う。

5. Send To Celeste 3:19

 ディストーション効かせたギターで緩やかなフレーズを弾くイントロに、むしろ溶かさずくっきりボーカルを立てた。歌を演奏に埋めた前曲と対照的なミックス。こういうところにも、流れやテクニックの使い分けの気配りさが漂う。
 テンポはむしろ緩やかで、メロウな空気だ。けれどもくっきりしたメロディ・ラインが勇ましさを前に出す。ドラムやベースはサビの要だけ、平歌はギターのみのあっさりしたアレンジで曲を飾る。

 終盤になって、オルガンが鳴ってることに気が付いた。確かに頭に戻って聴き返すと、ギターの後ろでぺたりと平べったく響いてる。

6. The Quiet Game 3:19

 トビンの曲。一転してローファイ、ドラムが奇妙に軽くスネアが柔らかい、トビン印の宅録サウンドに鳴る。拍の裏でスネアが鳴る、シンコペートさせたリズム・パターンや、唐突な場面転換、べたっとした多重ハーモニーの使い方はDJ風のアプローチも感じた。

 本来、プロ・ツールスの編集しまくりな録音でもおかしくは無いし、実際のところはその手法を取ってるのかもしれない。けれども妙にアナログに歪んだ素朴な楽曲が、昔ながらのマルチ・テープ録音を連想してしまう。
 ただ、楽曲としては少々メロディが弱い。アレンジは凝ってるが。

7. Noble Insect 3:24

 雪崩れるように始まるこの曲は、ベースとアコギが交互に弾くフレーズが効果的。裏拍のアコギを小さくミックスしてリズムの落差を演出する。オルガンが入るあたり、冷静に考えるとGbVのアルバムにしては、スタジオ寄りのアプローチ。
 もはやボブはこの時点で、GbVは単なるブランドでソロと区別をつけてなかったのかもしれないな。バンドのダイナミズムよりも、ボブのソロに入っててもおかしくなかった曲。

 鍵盤が中盤でソロを取る。ドラムはときおり危なげに揺らぎながら、淡々と刻む。ベースがカギか。シンプルなフレーズでサウンドをがっちり支えた。
 
8. Sir Garlic Breath 2:26

 グレッグとの共作で、Robert Pollard/Joe Pattersonの二人がエンジニアでクレジットあり。さもありなん、なローファイ・サウンド。家でざっくりデモ風に録音して、あとで歌を載せたか。
 アコギにエレキとギターが数本、さらにベースと楽器数は多い。リズム楽器は無し。
 ボブ風の一筆書きメロディが甘く柔らかく響く。

9. Crybaby 4 Star Hotel 1:53

 サビのキャッチーさがシングルに似合うと思う。ざくざく刻むギターと滑らかなベースで飾り、ドラムが着実に叩いた。バンド的なまとまりと、ボブの好き放題に上下するメロディの奔放さがうまくまとまった一曲。
 これも一筆書きメロディが炸裂で、フレーズごとにテンポやムードがころころ変わる。それが物語性ではなく、思いつくままっぽいところがGbVらしい。
 サウンドの質感はけっこうローファイ気味。本当にこの盤は、楽曲ごとのムードが違う。なのに統一感がある。

10. Biographer Seahorse 3:36

 エコーをたっぷりかけ、ひしゃげた歌声。ギターをくっきり提示し、ちょっと歌声を一歩下げたミックスだ。けれども楽器の分離は明確にしてる。
 ベースのフレーズでリズム感を出し、ドラムはタムやシンバルを連打でビートよりもフィル中心のアプローチをとった。こういう大仰でスタジアム・ライブで映えそうなアレンジは、けっこうGbVにしては珍しくて面白い。

11. Flunky Minnows 2:12

 シングル曲。拍頭でオルガンが鳴り、ハーモニーがきれいに載る。ハイトーンの歌声を前面に出し、メロディは確かにキャッチー。かなり高音部位を強調のミックスだ。
 高いところをするすると滑る旋律は魅力的だ。でもどこか、ちょっと軽い。売れ線ポップっぽい、と思ってしまった。
 録音はローファイだし、ざらついた質感なんだけど。でも、ボブがポップさを全開させ、作曲家として提供するならこういう曲になるのかもしれないな。

12. Birds 2:45

 トビンとボブの共作。楽曲はトビンの宅録、ボーカルはJohn Shoughがエンジニアを務めた。メロディは語り掛けるような柔らかさ。この辺がトビンのセンスだろうか。節回しはボブの色も感じるけれど。
 はじけず、暴れず、どこか上品に。小宇宙を作るような自己完結っぷりにトビンの世界観が透ける。パワフルさは希薄だが、これはこれでキャッチーで甘い魅力もあり。背後で上下にゆらゆら揺れる、ハーモニーのセンスも可愛らしい。

13. The Sudden Death Of Epstein's Ways 2:16

 トビンの曲。ソロで作ると、どこか籠った甘やかさを滲ませる。甲高い歌声は、前曲同様に語り掛けるメロディ。テンポやきっちりしたドラムのビートとは別に、つねにゆったりと穏やかなテンポ感を漂わす。
 とはいえこの曲、妙にドラムがバタバタしてリズムが危なっかしい。技術的に揺れる譜割狙いでなく、単にテクニックの問題と思うが。楽器全体の縦の線が合わずに揺らぎ、不思議な浮遊さを演出した。
 
 鍵盤中心のアレンジが、ギターをかき鳴らすGbVのイメージに比較して清涼剤な流れを作る。とはいえやはり、なぜ?ソロでやれば?の疑問解消にはならないが。

14. Reflections In A Metal Whistle 1:47

 思い切りローファイな音の録音。ピアノの弾き語りだが、ひしゃげた音色はディストーションがかかってるかのよう。エンジニアのクレジットは、ボブ自身とJoe Patterson。要は、宅録か。

 ブーミーな歌声と安っぽいピアノの単音フレーズめいた伴奏で大ざっぱに始まった。
 投げっぱなしの一筆書きメロディだが、途中でドラムやエレキギターが無秩序に足されていき、クロスフェイド風にいちおうバンドめいた展開に向かう。この部分が、パターソンがエンジニアの箇所だろう。
 だが曲は特に展開せず、アウトロとなるのみ。なんとも豪快で荒っぽい展開。楽曲としては荒い作りだが、こうしてじっくり聴いてると、何にも縛られない奔放なアイディアを形にする、ボブの発想にワクワクする。

15. Taciturn Cave 3:55

 テンポを一定に、前半はビート性を押さえ、だんだんドラムを鳴らしてリズム強調するアレンジだ。くっきりと四角張ったメロディを淡々とボブは歌う。
 さらに2分半ほどたったとこで、新たなモチーフに楽想が変わる。メドレーみたいな構成だ。
 楽曲そのものはボブらしいキャッチーさはあるものの、どこかもどかしい。弾けぬまま曲が進んでしまう。

 全体的にはちぐはぐなアンサンブルを感じさせるノリだが、最後の最後で妙にグルーヴィな盛り上がりを見せた。
 テンポアップして、煽っても面白いと思う。シンプルなフレーズを連呼する曲なだけに。だがどうも、前のめりにならない。

16. A Burning Glass 2:01

 これもボブとJoe Pattersonのエンジニア・クレジット。ボブがエレキギターと歌を先に録音し、あとでパターソンのほうでピアノをダビング、かな。
 揺れる動きはディレイ効果と、ボブ自身が猛烈なビブラート効かせてるように聴こえる。ただ、空気感全体が揺れてるので、すべてエフェクター処理かもしれない。
 
 拍頭へ裏拍が吸い付くような、ものすごい酩酊感の震え。素直に聴いたら、柔らかいバラードのメロディだったかも。しかしこの効果のため、変なスリルが楽曲に付与された。面白い。

17. W/ Glass In Foot 2:20

 最後はキャッチーにロックンロールをまとめた。シンプルなフレーズを連呼するタイプの曲で、がっつりエコー効かせたボーカルと、タイトなバンドが疾走する。どっか元気ないけれど、シングルでもおかしくなさそうなキャッチーさ。
 でもGbVの代表曲って言えるほどの、はじけた魅力まで至らないけれど。

 ここまで宅録ぽかったり、実験性を漂わせたり。一筋縄ではいかない音楽性を並べたアルバムだが、最後はきっちりとバンドの意地を見せる曲を提示した。

Personnel:

Robert Pollard: vo
Tobin Sprout : g,key
Mitch Mitchell ; g
Kevin Fennell : ds
Greg Demos : bass

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