Koboku Senju 「Selektiv Hogst 択伐」(2010)

 ノルウェー+日本のバンドによる密やかで幻想的なノイズ。

 メロディは音程でなく周波数の違いである。そんな定義が頭に浮かんだ。
 参加ミュージシャンは、秋山と中村に、ノルウェーのMartin Taxt(tuba)、Eivind Lonning(tp)、Espen Reinertsen(sax,fl)。つまりリズム楽器は無く、中村以外は電子楽器でもない。けれども聴こえる音はぱっと聴き、金属質で無機質だ。

 演奏楽器を見てから想像するに、呼吸音を駆使してそう。たまに爪弾く、秋山のエレキギターが、ぞっとする美しさを表出させた。混沌の非論理のノイズが溢れるなか、唐突に命綱が垂れ下がるような感じ。ピントの合わぬ抽象世界に、急に具体物が発生するかのよう。

 どちらかと言えば、秋山と中村で成立しそうな音楽へ、透徹なノイズをノルウェー勢が加えた感じ。アルヴェ・ヘンリクセンのソロを連想した。静かな美しさがノルウェー流の美学だろうか。
 CDが進むにつれて、管楽器も断続的な音程を含めたノイズを出す。タンギングや呼吸音を駆使するスタイルはそのままに。まさに極北。温かさより、涼やかで凛とした雰囲気が漂う。ビート性はものすごく希薄だ。小節感も薄い。
 
 ただしドローンって意味ではない。例えば(5)を筆頭に、フレーズの動きによるリズムの断片は常にある。安定せぬ揺らぎがあるって表現が近いだろうか。

 最後の曲は和音も意識した、きれいな響きが淑やかに広がった。

 なおこのバンドは一過性でなく、08年から活動をはじめ少なくとも2013年まで断続的にライブを行ってきた。公式Webはこちら。http://www.kobokusenju.no/
 過去ライブのスケジュールも記載あり。ブッキングなどの仕切りはMartin Taxt(tuba)が担当らしい。なお本盤は2ndにあたる。
 Amazonでは本盤のみだが、以下3作ともバンドキャンプでMP3を入手が可能。

[Discography]
2008 Varianter av døde trær
2010 Selektiv Hogst 択伐 【本作】
2013 Joining the queue to become one of those ordinary ghosts
 
 録音は08年にノルウェーにて。ミックスとマスタリングは中村が行った。特にリーダーを決めず、バンド形式でクレジットされた。
即興と思うが、どの曲も不思議な構築性がある。起承転結やアレンジの意味ではない。物語性が希薄なため、瞬間の広がりが奥深く展開するかのよう。絵画の細部を眺めていくのと、同じような感じだ。

 タイトルに使われた択伐とは、林業用語。伐採に適した木を適切に数十年単位ではらい、林をきちんと保つことをさすという。
 余分な音を払い、見晴らしよく透徹に育てる音楽スタイルを表現したか。
 バンド名のKoboku Senjûは日本語かな。タイトルからしてKobokuは古木としたら、Senjuがわからない。

 タイトルを翻訳にかけると、こんな感じ。音楽に込めた意味がわかるような、わからないような。
1.ダウン成長 (ダウン成長ことについて) (7:51)
2.有毒樹皮の下に閉じ込め (6:54)
3.影で探査で (4:03)
4.冬眠 (7:50)
5.その他の動物に食べられているような動物 (1:51)
6.【翻訳語が出なかった】Dypdrenering (8:26)
7.すべてが雨で始まります (8:24)


Track listing:
1.Nedvekst (Om Å Vokse Nedover) (7:51)
2.Fanget Under Giftig Bark (6:54)
3.På Leting Etter Skygge (4:03)
4.Vintersøvn (7:50)
5.Dyr Som Blir Spist Av Andre Dyr (1:51)
6.Dypdrenering (8:26)
7.Alt Starter Med Regn (8:24)

Koboku Senjû:
秋山徹次: guitar
中村としまる: no-input mixing board
Espen Reinertsen: saxophone, flute
Elvind Lønning: trumpet
Martin Taxt: tuba

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