Pink Floyd 「Animals」(1977)

 バンド・サウンドが成立した、最後のアルバム。

 ぼくにとってのピンク・フロイドは"The Wall"(1979)と"原子心母"(1970)、次点で"The Dark Side Of The Moon"(1973)。実は"Wish You Were Here"(1975)と、対になる本盤はあまり聴きこんでない。だが久しぶりに本盤を聴いて、ジャム・バンド的なダイナミズムをもっとも感じた。

 今年4月にRolling Stone誌のWebで「人気ジャム・バンド、ベスト10」の記事があり、フロイドは第9位にランキング。意外だな、と思ったのが聴き返したきっかけ。
http://www.rollingstonejapan.com/articles/detail/25556
 
シンフォニックで大仰なコンセプトや、巨大なステージングって思い込みあったが。70年代はライブ演奏こそがフロイドの魅力で、そもそも本盤や"Wish You Were Here"の収録曲はライブで演奏を重ねていたという。
 本盤収録曲のうち、"Dog"は原題が"You've gotta be crazy","Sheep"が"Raving and drooling"。両方とも"Wish You Were Here"のアウト・テイクで、"Pigs"をロジャーが書きおろし本盤が成立した。

 両曲の74年Wembleyでのライブ音源がYoutubeにあった。
 

 そもそもフロイドは、シド・バレットがいなくなったあと、ずっとロジャー・ウォーターズがコンセプト・リーダーだった。けれどデイブ・ギルモアのギター・テクニックがバンドの華となり、巨大ヒット連発のビッグ・バンドとなったゆえに、フロイドの運営はおかしくなっていった。
 ついには本作に続く"The Wall"でウォーターズの暴君ぶりと、メンバー間でエゴのぶつかり合いが顕著となり、バンドは破綻の道を進む。逆に、バンド・マジックの幻想がぎりぎり残っていたのが、本盤である。
 
 ミュージシャン・クレジットはフロイドの4人だけ。けっこう珍しいみたい。ざっとクレジットをたどってみたら、前後のアルバムはゲスト・ミュージシャンを招いてる。
 完全に4人だけのクレジットは、"Obscured by Clouds(雲の影)"(1972)までさかのぼる。

 本盤は演奏クレジットも興味深い。ベースとギターが曲ごとに役割交換してる。
 "Dog"が本来のフロイド。ギターがギルモアで、ベースがウォーターズ。他の曲ではギルモアがベースを弾き、リズム・ギターでウォーターズがクレジットされてる。
 これは何を意味するのか。単に、レコーディング手順や完璧主義なエゴのぶつかり合いの都合かもしれない。でもあえて妄想を逞しくして、バンド・マジックの模索の表れ、と取りたい。

 情感と鋭さを絶妙のバランスで成立させる、メロウで涼やかなギルモアのギターが、ウォーターズのねちねちと内省するコンセプトで、どこまで成立させられるか、と。

 今の耳で聴くと、もっともダイナミックな躍動感を感じるのが"Dogs"。他の曲はウォーターズの緩やかでニュー・ウェーブを先取りしたような尖りっぷりが、前面に出てる。
 ミニマルで乾いた構築がウォーターズの美学。だがギルモアはもっと鷹揚なキャラクターだ。

 リチャード・ライトのシンフォニックな鍵盤は、意外とサウンドの躍動感に貢献してると実感した。ニック・メイソンのリズムは・・・ちょっと、ドタバタ、かな。

 "Dogs"の涼やかなムードを基調に、ドライなリズム隊と伸び伸び響くエレキギター。そしてふくよかになる鍵盤。あくまでボーカル曲だが、演奏そのもののグルーヴが聴きもの。
 ダブル・トラックで高らかに舞い上がる、ギター・フレーズのためがカッコいい。

Track listing:
1.Pigs On The Wing, Pt. 1 1:25
2.Dogs 17:08
3.Pigs (Three Different Ones) 11:28
4.Sheep 10:20
5.Pigs On The Wing, Pt. 2 1:25

Personnel:
Roger Waters - lead and harmony vocals, acoustic guitar on "Pigs on the Wing", rhythm guitar on "Pigs (Three Different Ones)" and "Sheep", tape effects, vocoder, bass guitar on "Dogs"

David Gilmour - lead guitar, lead vocals, rhythm and acoustic guitar on "Dogs", bass guitar on "Pigs (Three Different Ones)" and "Sheep", talk box on "Pigs (Three Different Ones)"

Nick Mason - drums, percussion, tape effects

Richard Wright - Hammond organ, electric piano, Minimoog, ARP string synthesizer, piano, clavinet, harmony vocals on "Dogs"

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