TZ 81231:Oren Ambarchi / Z'EV "Spirit Transform Me"(2008)

 二人のノイジシャンによる暗黒ドローンの一枚。丁寧な仕事だ。

 Z'evはメタル・パーカッションのベテランとして80年頃から活動をはじめ、オレン・アンバーチは活動を00年前後から開始しさまざまな大物ノイジシャンと共演を重ね名を上げてきた。
 この二人が邂逅は06年のことと言う。Z'evのアイディアで共演がきまり、本盤はその出会い06年12月19日から翌年1月5日までかけて、Z'evの主導権で録音が行われた。本盤はミックスもZ'ev。アンバーチはミックス後の音源へ耳を通し、さらにダビングを施してるそう。

 全3曲、(1)は36ch、(2)は50ch、(3)は16chのマルチをミックスし出来上がった。ほとんどがZ'evのメタル・パーカッション用のチャンネルで、丁寧に一つ一つの金属音を録音し、ミックスで仕上げたと思われる。
 Renderingとも、Z'evは本盤でクレジットあり。いくつかの金属音はまとめて録音され、その響き調整をZ'evが施したことを指しているのか。たんにミックスの主導権を意味してるのか。前者のような気がするけれど。

 (1)は静かなドローンが緩やかに響き、金属質の波打ちが全編を支配した。リズミックさは希薄で、ゆるやかなパターンの連続で前進感を出す。ここでアンバーチはギターやビブラフォンでクレジットあるものの、あまり存在感は無い。実際、味付けくらいの役割かもしれない。
 インダストリアルな連続性も無く、機械仕掛けのリゾートで寛いでるかのよう。

 いくぶんリズミックなのは(2)だが、これもビートではなく薄っぺらい金属音がいくつも震え、揺らぎ、うねるさまが重ねられた。小さな音だと密やかな漂い。大きな音だと濃密な積み重なりの妙味にしびれる。
 ここでもアンバーチは地味な立ち回り。単音ベースが拍頭を4つ打ちするような響きが、アンバーチか。ここではギターとビオラでクレジットあり。メロディ感は希薄な電気的なノイズも、彼だろう。

 中盤から柔らかな打擲音もどんどん加わって、ビート性が増していく。軋むエレキギターのノイズと、淡々とエキゾティックに打ち鳴らす打音のコンビネーションがスリリングだ。
 だが音像はそこから大幅に展開することは無く、終盤まで執拗にこの音像をミックスを微妙に変えながら追求していった。

 (3)はチューブラー・ベルズをアンバーチが演奏。冒頭の響きがそれか。これまた金属音の倍音を生かした、身体の奥底を響かせる夢見心地の世界を構築した。響きでいうと、この曲がベスト。
 騒めく破壊音をところどころに混ぜ、崩壊する危うさと持続する不可思議さを同時に味わえる。柔らかな充満した空気の中を、かきわけながら進んでいる感じ。

 それぞれの曲でアプローチが異なり、どれも酩酊感漂う幻想性と濃密な複雑さを並列させる仕上がりだ。あんがい短めの盤だが、個々の瞬間を切り取り、もっともっと長尺で浸りたくなる心地よい響きの盤。

Track listing:
1.Alef 15:06
Guitar, Vibraphone Oren Ambarchi
Percussion Z'EV

2.Bet 16:43
Guitar, Viola Oren Ambarchi
Percussion Z'EV

3.Gimel 9:52
Bells [Tubular Bells] Oren Ambarchi
Percussion Z'EV


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