George Clinton 「George Clinton and His Gangsters of Love」(2008)

 奔放で自由なソウルのカバー曲集。

 ファンク追及のクリントンが、一服した寛ぎの盤か。単なる気まぐれの企画盤か。Red Hot Chili Peppers, スライ・ストーンにエル・デバージなど様々なゲストを招いた。ボートラにはウータンのRZAまで登場する。
 (6)で泣きのギター・ソロをたっぷり聴かせるのがサンタナという。ゴスペル歌手のKim Burrellもクリントンとデュエットで参加した。

 演奏はChris "Big Dog" DavisやFoleyあたりが中心になりトラックを作ってる。ボートラにはブーツィやバーニーのクレジットもあり、過去音源の流用もありそう。

 遊びにしては豪華。コンセプト・アルバムにしては荒っぽさも感じる。不思議な立ち位置のアルバムだ。

 収録曲はソウル・ファンなほど、楽しめそう。
 ぼくはソウルは好きだけど深い知識がないため、ざっと調べてみたがオリジナルが誰か自信ない。

 クリントンが若いころに聴いてたころを中心にカバーしてるように思える。あまりヒット曲にこだわらず、逆にてらいなく有名曲も取り上げる。ようは、無造作で自由な選曲だ。

 マーヴィン・ゲイの曲で65年の(1)で幕を開け、Barry Whiteが作曲の(2)。(3)は96年"T.A.P.O.A.F.O.M."に収録のセルフ・カバーか。作曲はクリントンとブラックバード。本盤ではファンク寄りながらも、やたらスイートな男女デュオに仕立て上げており、新曲扱いかもしれぬ。
 
 (4)はShirley & Lee、(5)がJohnny Aceの曲か。(6)でようやくメジャーなインプレッションズの曲。(7)はTommy Edwardsのヒットでスタンダード。
 (8)は若かりしクリントンがS.Barnesと書いたパーラメンツ66年のシングル曲らしい。

 (9)はRuby And The Romanticsの曲。(10)はBobby Rydellの曲、で良いのかな。本編最後の(11)はThe Heartbeatsがオリジナルのドゥ・ワップ。
 (11)なんてへにょってても、ドゥ・ワップ色を出しても、エレキギターのフレージングのためか、P-Funkのうさん臭さが漂うところが興味深い。

 以降の曲はボートラだ。(12)はゲスト参加したRZAのオリジナル。サンプリングはプリンスの"I was your girlfriend"という。幾層にも過去から現在までのファンクネスを積み重ねた。

(13)や(14)はクリントンの新曲、だろうか。(14)は共作者にSystem of a Downのベーシスト、Shavo Odadianや、他にKendra Fosterのクレジットあり。(15)はLittle Willie Johnのカバーだ。

 演奏は正直、安っぽい打ち込みが中心で荒っぽさが先に立つ。作りこみが甘い。デモテープに毛が生えたようなところも。
 発売レーベルのShanachieは大手インディだが、あまりクリントンと縁が深いイメージも無い。
 共同プロデューサーのBobby Eliはもともとフィリー・ソウルのMFSBのギタリストで多数のプロデュース作品もあるミュージシャン。だがやはり、クリントンとの接点は見いだせない。本盤収録曲の録音場所も見事にバラバラ。ツアーの途中で録りためた音源っぽい。

 やはりちょっとしたお遊び、かなあ。クリントンの懐深さは伝わる一枚だ。オーガナイザーとして周辺ミュージシャンへ自由に活動させつつ、抑えるところと言うかコンセプトの芯はがっつり支える。
 参加メンバーに美味しいところをふんだんに与えつつ、首根っこを押さえてる、とでも言おうか。

 個々の楽曲を細かく聴いてくと面白い。なんというか、リズムやアレンジと別次元のところにファンクネスがある。パターンや音色じゃない。存在感、みたいなところ。
 へろんと頼りない音でも、ラテン風味など別の要素を足されても、ファンクの骨太さはどこかうっすら感じる。クリントンが何か弾いてるわけでもないのに。

 だからバラバラでとっ散らかった音楽性でも、不思議な統一性がある。もう少し本盤は聴きこんでみよう。

Track listing:
1. "Ain't That Peculiar" (feat. Sly Stone & El Debarge)
2. "Never Gonna Give You Up"
3. "Mathematics of Love" (feat. Kim Burrell)
4. "Let the Good Times Roll" (feat. Red Hot Chili Peppers & Kim Manning)
5. "Pledging My Love"
6. "Gypsy Woman" (feat. Carlos Santana)
7. "It's All in the Game"
8. "Heart Trouble"
9. "Our Day Will Come"
10. "Sway"
11. "A Thousand Miles Away"
12. "Heaven" (feat. RZA)
13. "As In"
14. "Stillness in Motion"
15. "Fever"


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