Linda Draper 「Ricochet」(2001)

 透明感ある素朴なサイケ風味の、素敵な女性SSW盤。

 今も活動を続ける、たぶんアメリカの女性SSW、リンダ・ドレイパーのデビュー盤。自主製作で発表された。06年に別ジャケットで再発もあったが、今は入手困難らしい。AmazonではMP3でのみ入手が可能だ。
http://www.lindadraper.net/#main
 
 ぼくが当時、本盤を聴いたのはプロデュースがクレイマーだったから。ニッティング・ファクトリーのシミー・ディスクも崩壊し、活動低迷に見えてたころ。さっぱり音盤がリリースされず、すごく細々とプロデュースの盤だけあった。これも、そんな一枚。
 かといってワンショットのドライな付き合いではなく、本盤から3rdまでクレイマーはプロデューサーとして関与していた。

 彼女の特徴はのびやかで細い歌声。すうっとまっすぐファルセットの音域をきれいに使う。メロディはほんのり幻想的で、穏やかなムードが本盤では漂う。シャウトやリズミックなアプローチは希薄で、しなやかにおっとりとしてる。

 クレイマーは低予算を逆手にとるかの如く、すごくシンプルなアレンジを施した。ほぼアコギの弾き語りのみ。ただしリバーブをかけて奥行きと浮遊感を出した。
 たまにアコギのギター・ストロークをダビングかな。あとは1曲でグロッケンが静かに響くくらい。
 
 つまり簡素でそっけないアプローチ。そこへうっすらとリバーブをかけた歌声が乗る。
 だが、さすがはクレイマー。彼女のコーラスを数回重ね、ぐっと幻想性を増した。ハーモニーを意識しつつも、カウンター・メロディやオカズ風の役割も果たす。これまた残響がたんまり。ギャラクシー500を筆頭に、エコー感でサイケっぽさを演出する、クレイマーの面目躍如な仕上がりだ。
 ミックスもボーカルをきっちり中央に定位させ、ギターをその左右へ寄り添わせる。コーラスを思い切り左右に飛ばして、明確な音構造で主役を生かした。

 率直なところ、乾いたエコー感で聴かせたらフォークっぽさが強調されて素朴で地味なイメージが先行したと思う。メロディは起伏こそあれ、強烈にキャッチーでもない。彼女のハイトーンの綺麗さが目立つけれど、今一つ華は無い。

 例えば(8)。冒頭から一節歌って伸ばした声は、残響へ溶けてすうっと消える。この余韻こそが本盤の魅力だ。
 溜めて、響いて、消える。そしてリンダ自信の多重録音ハーモニーが、爽やかかつ夢幻の雰囲気でメロディを補完する。

 派手さは無い。だがシンプルな構造で、サイケな優美さを演出した。リンダの歌声をしなやかにプロデュースしたクレイマーは凄い。

【Discography】
(自主製作)
2001 Ricochet
2001 Snow White Trash Girl ‎
2002 Patchwork

(Planting Seeds Records時代) ‎
2005 One Two Three Four
2005 Needlessly <EP>
2007 Keepsake ‎
2009 Bridge And Tunnel ‎
2013 Edgewise
(自主製作)
2013 Live On WFMU <EP> on Bandcamp
2016 Modern Day Decay

 といいつつ僕は、クレイマーがプロデュースの3枚しか聴いたことないのだが。
 Amazonでは最新作も含めて、MP3のほうが色々入手性が容易そうだ。



 これが今年4月リリースの新譜"Modern Day Decay"のPV。本稿をきっかけに聴いてみたが。歌声の涼やかさはそのままながら、なんかカントリー寄りのフォーク・ロックな仕上がりだ。

 14年にNYでのライブ映像。ここでもフォーク的なアプローチをとってる。

 09年のアルバムより。シンプルなバッキングでのフォークな仕上がりだなあ。

 素朴なカントリーやフォークが彼女の趣味かな。だとしたらクレイマーが本1stで描いた世界観は、えらく違うベクトルだ。

関連記事

コメント

非公開コメント