加藤英介トリオ 「Simply Irresistible」(2003)

 スケール大きく骨太な由緒正しいピアノ・ジャズ。この盤はドラムも凄い。

 林正男(b)、小松伸之(ds)とのトリオ、Super Freaksの1st。現在のところ、盤として存在は本盤のみのようだ。加藤英介のライブは残念ながら聴いたことが無い。日本人ジャズ、ってキーワードのみをきっかけに本盤を買ったと思う。
 今回調べてて、プログレ・バンドSixnorthにも参加と初めて知った。こちらは1st"I'm Here In My Heart"(2000)を聴いたことある。

 今、ピアノ・トリオとして何を狙うか。さまざまなアプローチがあるだろう。ぼくは加藤と同世代なだけに、なおさら音楽性に興味が増す。同世代ならば、おおよそ周辺の音楽環境がめっちゃ離れてはいないだろうから。
 
 手数多く疾走し、時にずらすドラムとベースのリズムとがっぷり噛み合い、そして雄々しくサウンドを引っ張る。そんな力強さが本盤に詰まった。

 全10曲中、9曲が加藤のオリジナル。鮮やかで瑞々しい色合いを共通項ながら、楽想はバラエティに富ませた。残る1曲、カバーは"STAR EYES"。スタンダードで映画"I Dood It"(1941)の曲。チャーリー・パーカーの演奏で知られるらしい。

 がつんと音はアタックが強くはじけて、美しく跳ねた。フリー要素は低く、オーソドックスにピアノと格闘するスタイルか。
 とにかくピアノとがっつり打ち合う、ドラムとベースもすさまじくかっこいい。ベースはいくぶん控えめの音量でミックスされてるが、休むことなくグイグイとフレーズを饒舌にまくしたてた。

 ドラムのリズム感も爽快で痛快だ。タイトにシンバルが響き渡り、時に拍を微妙にずらして煽る。休みなく叩きのめすシンバルの硬質な響きが、ひときわ涼し気で心地よい。
 もちろん力押しだけではない。(8)のように密やかなバラードもある。それでもザラついたブラシが、ザクザクと空気を滲ませるのだが。揺らめくリズムが良い。ベースも音数少ないが、頼もしく低音を響かせた。

 加藤が本盤で炸裂させたのは、逞しいジャズ。ロマンチックさやセンチメンタリズムへ安易に流れない。凛々しい。そして、構築性が高い。
 杓子定規なハード・バップには留まらない。欧州や80年代以降アメリカのテクニカルで鮮烈なジャズを吸収し、さらに荒々しさをきれいに整えた。

 エッジの鋭いフレージングにはロックの通過も感じる。
 ピアノのファンキーさは粘っこいグルーヴよりも、拍頭でノリを出す頼もしさが先に立った。

 輪郭が太く、ぐいっとパワフルなジャズ。ごっつく震えるベース、ばねの効いてしぶとく弾むドラムが、ピアノを何倍にも華やかに響かせた。トリオ演奏のダイナミズムをたっぷり味わえる盤だ。

Track listing:
1.SIMPLY IRRESISTIBLE
2.KATHMANDU
3.SAGRADA FAMILIA
4.INNERMOST LONGING
5.SWEET RAIN
6.NAKED HEART
7.GROOVE ON
8.WOMAN
9.STAR EYES
10.民衆ロック

Personnel;
加藤英介(p)
林正男(b)
小松伸之(ds)

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