Marsen Jules 「Goleden」(2007)

 アコースティックを電気加工した、力強いアンビエント。

 力強いアンビエントと、寛いだアンビエント。大まかに二つへ分けるとしたら。本盤は力強い、アンビエントだ。
 ミニマルなフレーズが漂い、時に譜割すらポリリズミックにピアノや電子ノイズが加わって、ぐらり浮遊する空間を作った。同じフレーズが繰り返されるのは、ループだろうか。ピアノもギターも時に、ぱらりぽろりひろりふわりと、長い旋律も足されていく。

 一つのフレーズが執拗に繰り返されるため、うっすらと構築感はあるけれど。本質的に本盤の楽曲は即興的だ。ループ・フレーズが新たな音に溶け、残響と機械仕掛けのノイズに惑わされて消えていく。
 心地よい透明さを常に保ちながら、通底する空気は凛と張りつめた。穏やかに空気を震わせながらも、芯は強く硬い。
 漂うフレーズは支えが無いけれど、互いに絡み合って強固な編み目構造を作った。

 Marsen Julesはドイツの音楽家。本盤は5thアルバムになる。現在に至るまで、着実にアルバムを重ねた。ギターが本職かな?鍵盤や電気仕掛けも達者に扱った。
 少なくとも本盤ではビート性は希薄だ。リズムでなくフレーズの連続性で小節感を出す。どちらかと言えば環境音楽的なアプローチ。無機質で物語性を回避する。

 けれども鋭利で怜悧で鮮烈な空気感が、爽やかで凛々しいイメージをすうっと構築した。

 これを通勤中、電車の中で聴いていた。人が大勢立つラッシュの日常空間と、乗り物の移動へ身を任し頭を空っぽにする非日常。実音と電子音が交錯する音像。滑らかなリバーブと強引に遮断される意図的な残響。複雑でスルッと整ったふたつの要素を常に行き来する本盤の不可思議さが、混みあった朝の電車空間へ実に良く似合った。



 Amazonではなんかプレミアついている。音源はBandcampやi-tunesで容易に入手が可能。


Track listing:
1. Birkengeflüster 6:25
2. Während 7:08
3. Golden 5:07
4. In Einem Raum Mit Dir 4:43
5. An Einem Wintermorgen 6:53
6. Von Hier Nach Dort 5:44
7. Contenance 8:08

Written-By, Producer – Martin Juhls

なお、彼のBandcamp見てたら24時間のアンビエント・サウンドをUSBで販売って形態の作品もあって興味深い。長尺作品こそ、デジタル時代の特権だ。


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