Loïs Lane 「Precious」(1992)

 たぶん、一夜のお遊び。そんな程度のプリンス関与と思われる。

 プリンスが曲提供した盤のクレジットは、信用するな。これがプリンス業界(?)で、もっぱらささやかれることだ。変名や共作クレジットは、プリンス単独かもしれないし、そうでないかもしれない。演奏にクレジット無いからと言って、プリンスが参加してないとも言い難い。ややこしいが、しかたない。それが、プリンスだ。

 自己アピールとプライド、好意のトライアングルを、プリンスはぐるぐる回ってたのではないか。いたずらな駄作に自分の名を冠したくない。でも、提供先は宣伝文句も含めてプリンスのクレジットを求める。一方で、自分の名を出さないが高いクオリティの音楽を相手に与えたい。そんな相反する思いが、実際と合致しないクレジットの嵐になったのだろう。

 本盤は2曲を提供。さらに2曲がエグゼクティブ・プロデューサーとクレジットあり、楽器演奏も参加とうわさされる。そのうえ、1曲はクレジット一切ないが、ペイズリー・パークで録音されてる。
 この5曲がどこまでプリンス関与か、との妄想を本項では楽しんで見たい。

 他の楽曲も無理やりプリンスの色を見いだすことは、できなくもない。けれど、とりあえずやめとこう。きりがない。

 本盤はオランダの女性デュオ、Loïs Laneの3rd。間を開けながら着実にアルバムをリリースしており、最新作は"As One"(2013)のようだ。
 エレクトロ風味のポップさが持ち味で歌手だけでなく作詞作曲もするところが強み。
 深みは無いが、とりあえず耳ざわり良いサウンドを作れる。本盤は全体的に、つるっと流行を追った仕上がり。引っ掛かりは無いが、するすると流れてしまう。

基本はヒップホップに色気を出す電気仕掛けだが、アコギをバックにシンプルに歌った"She came by"みたいなキュートさを演出する幅の広さもあり。

 プリンスとの関係はWikiによると彼女らの2ndシングル"It's The First Time"にプリンスが興味持ったことがきっかけ、とある。その後にNudeツアーで前座を担当。本盤にも曲提供へ至った、との経緯。そのあとは特に、プリンスと絡んだ話は無い。

 その"It's The First Time"がこちら。確かにちょっぴりファンクでポップな仕上がりが面白い曲だ。ただしシングルのみ、特にアルバム収録も無くヒットもない。そんな地味なプロモーションで終わった。本盤でいうと(12)に似通ったテイストを感じる。


 プリンスが関与した本盤、"Precious"は、"Qualified"と"Sex"がプリンスの作曲とクレジット。前者はカーク・ジョンソン、後者はレヴィ・シーサーJr.と共作名義ながら。
 エグゼクティブ・プロデューサーのクレジットが"Crying"と"I Oh I"。Loïs Laneはこの4曲をすべてシングル・カット。プリンスの資産をしゃぶりつくした。
 Wikiによれば"Qualified"は14位の中ヒット、"I Oh I"と"Sex"は40位台の小ヒット。元を取った・・・と言っていいのかな。

 "Sex"のPVと"Qualified"のライブ映像があった。
 
 
 そしてペイズリー・パークで録音、とのみクレジットが"I Love a Woman"。演奏がペイズリー・パーク、ボーカルが別スタジオとある。ってことは演奏はプリンスがらみでは・・・と推測したくなった。
 なおカーク・ジョンソンは90年と本盤数年前からNPGがらみにドラマーで参加。ブランクを置きながらも、プリンス晩年までドラムを担当し続けた。

 率直なところ、あまり耳を引く曲ではないためプリンスが絡んでなくとも、ふーんで終わる。もしかしたら「手は出さないけど名前は貸すよ」って程度の関与だった可能性もある。
 ただ一つ言えるのは、ボーカルこみでプリンスの楽曲は聴くべきってこと。多重ボーカル、もしくはさりげなく粘っこいプリンスの歌声。これがあってこそ楽曲は完成する。プリンスはどこまで意識してたのやら。だから、さらっと変にうまく歌ってしまうと曲の魅力が半減する。そんな恐ろしさが、プリンスの曲にはある。

 さて、楽曲。まず"I Love a Woman"から見てみよう。ペイズリー・パークで録音、とクレジットあるもの。でも関与してないかなあ。ホーンの不穏な響きはプリンス印。ピアノや、ちょっとしゃくるエレキギターもそれっぽい。でも打ち込みビートっぽいタイトなドラムは、あまりピンとこない。カークは関与かもしれないが。
 歌メロも涼やかで、あまりプリンスの色は感じなかった。

 プリンスが関与の2曲はどうか。まず"Sex"。これはそもそも、プリンスのカバー。だからと言っては何だが、なおさら面白みに欠ける。多重録音のボーカルも妙にさらりと綺麗で、バック・コーラスを聴いてるかのようだ。

 新曲書き下ろしだった"Qualified"は、ドラムがカークかな。異様にタイトな響きだ。オーケストラ・ヒットが何とも古めかしい。ヒップホップ色がじっとり滴り、プリンスっぽさはメロディとハーモニーが一体になった粘っこい和音感のところくらい。
 いや、メロディはプリンス印。サックスの入り方もそれっぽい。だけど綺麗すぎる歌い方が、なんとも毒を消している。

 "Crying"と"I Oh I"はどうか。
 "I Oh I"は80年代に周辺女性歌手へ、プリンスがいかにも提供しそう。ぼんやり明るい色合いの曲。クレジットこそLoïs Laneのメンバーだが、作曲もプリンスでは、と思わせた。むしろ僕はこの曲のほうが好み。2分45秒あたりのブレイクや和音展開が鮮やかでよかった。
 演奏にプリンスが参加かはわからない。タンバリンかな。ベースは手弾きとしても鍵盤だし。
 
 "Crying"はドタスカとエレキ・ビートが響き、趣き無い硬質な仕上がりになってしまった。ハーモニーや二人が歌い継ぐあたりを、プリンスがねちっこく仕上げたら、いやらしいファンクになってたのかも。彼女らの歌声では、整いすぎて今一つピンとこない。プリンスが演奏に参加かも、不明。生演奏っぽさは一部のドラムくらいだし。

 ついでに、それ以外の曲もざらっと流そう。結局彼女らは、80年代プリンスが持っていた、ほのぼのゆったりファンクの色合いを見事に継承していた。"Precious"や"Make Way"が、まさにそれだ。エイトビートの跳ねないリズムでギターや鍵盤の打ち方でファンクネスを演出するスタイル。ちょっと鼻にかけて引きずる歌声が、色合いを濃くする。

 その一方で、エレクトロ・ポップも簡単にこなしてしまう器用さが、彼女らの魅力を本盤で散漫にさせたのかもしれない。前述のようにアコースティックな"She came by"まであるし。

 ぼくは、今に至るLoïs Laneの活動履歴はよくわかってない。どんな立ち位置だろう。そしてプリンスとのコラボを、どのようにとらえているのだろう。

 すくなくともプリンスの"Sometimes It Snows In April"をカバーした映像はあった。
 歌は上手い。しみる。


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