Lust U Always (1982)【Prince未発表曲】

 大ヒット飛ばす前のプリンスはいかに上り調子だったか。そんな様子が滲む、予想外に力のこもったファンク。

 "1999"頃のアウトテイクらしい。冒頭からのしゃっきり鳴るシンセ・ドラムの音色で、80年代プリンスっぽい香りがどっぷり。冒頭こそアイディア一発のデモみたいな未発表曲かと思わせるが・・・。聴き進むにつれ、未発表で終わったのが不思議な完成度合いに圧倒される。

 ドラムとシンセ中心のシンプルなアレンジを軸にしながら、エレキギターがザクッとリフを刻む。だがこの曲の真髄は歌声だ。実に多彩なボーカルが多重録音され、分厚くドラマティックに世界を密度濃く描き出した。
 音域を幅広く使ったハーモニーは、録音スピードも変えてるのかな。別の女性や男性も声を重ねてるように聴こえてならない。

 しかもハーモニーの譜割を変え、複数のラインが入れ代わり立ち代わり拍頭を叩く。その撚り捩じられ畳みかける感触が、素晴らしく心地いい。
 後年の小節へ押し込めるように窮屈なヒップホップ趣味と全く違う、のびのびしたラップっぽい歌声も終盤に挿入されてる。これで、いいじゃん。なぜこれを90年代にやらない。

 ゆっくり小節を取ったとき、二拍目頭で軽く連打されるプリンス流の硬質なシンセ・ドラムの響きが変な話、古めかしさを感じさせる。どんどんと歴史を塗り替えた、冴えわたる80年代の残滓が感じられるからだ。

 ものすごく冷静に考えたら、ディスコ・ファンク12インチ・シングル集を狙ったかのような、"1999"に入れたら地味かもしれない。"Purple Rain"のキャッチーなメロディにはハマりづらい。多数のボーカルが主旋律をあいまいにしてるから。この総合知のような複雑さもプリンスの魅力なのだが。

 そして"Around~"以降のアルバムにも収まりが無い。つまりはアルバムにまで至らずボツった曲なのだろう。せめてシングルB面で発表とかして欲しかった。

 今の耳で聴くと、よけいな判断基準が出てしまう。プリンスの活動を俯瞰して聴いてしまうから。だが、リアルタイムでこの曲を聴いてたら、P-Funk直系でもっと強烈にコントロールされた、一人多数役をこなす集合ファンクとして新鮮に衝撃を味わえてたろうになあ。


 

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