立花ハジメ 「逢うは別れのハジメなり」(1985)

 ミュージシャンと違うアート視点な響きが特徴か。YEN時代のベスト。

 いちおうリアルタイムなはずだが、ちょっと大人な音楽に聴こえて、当時は聴きそびれてた。立花ハジメはれっきとしたミュージシャンでありながら、どこか現代美術って補助線付きで聴いてしまう。いわゆる音楽畑の育ちでなく、YMO周辺の多彩なミュージシャンに包まれ、見事に音楽を磨き上げてたって感じ。アルプス1号とか自作楽器を操る、工学的な側面もあって、少しばかり敷居が高いと勝手に及び腰になっていた。

 さて、本盤。細野晴臣と高橋幸宏のYENレーベルに残したアルファでの3枚から立花自身が関与したベスト盤がこれだ。オリジナル盤は以下の通り。

1st: H(1982) 高橋幸宏プロデュース
2nd: Hm(1983)高橋幸宏と細野晴臣の共同プロデュース
3rd: テッキー君とキップルちゃん(1984)高橋幸宏プロデュース

  

 才能あふれる二人にプロデュースされ、このあと立花ハジメは坂本龍一のレーベル、ミディへ移籍する。うーん、やっぱりすごい周辺スタッフだ。しかも本盤のライナー読むと、"H"の録音半年前に坂本龍一らとセッション・ライブをして、そのメンバーが"H"のバンド母体となったという。1stにはアレンジやドラム、ピアノで坂本龍一も参加している。

 YMOの終焉は、人間関係がぎすぎすしてたイメージあり。だがその3人の才能を全くバイアスなしにガブッと吸収してた。立花ハジメには、何の根拠もないがそんな印象がある。

 収録曲は1st (1)~(3),(13),2nd (5)~(9),(11),3rd (4),(10),(12)という構成。1stで冒頭はきっちりイメージを作り、2ndを軸に、3rdを味付けに。そんな曲順を選んだ。
 青白くも整ったサックスが、テクノに埋もれていく。この当時は機械仕掛けなテクノなはずが、どことなく人間味を残してる。それが硬質なサックスと実に良く溶けた。

 そんななか、例えば(10)で矢口博康の作曲によるサックス・アンサンブルがメロウなムードを醸し出す。オルガンも伴奏に入ってる、かな。
 (12)ではゲルニカから上野耕路が登場。デカダンなクラシカル風味の奇妙な空気を振りまいた。

 決してノイジーではない。だが甘々ポップスでもない。尖ってひねって鮮やかな、一筋縄ではいかない刺激的な音楽が詰まった。

 本質的に、ベスト盤よりオリジナル・アルバムを中心に音楽は聴きたい。そのほうがより、ミュージシャンの創造性へストレートに触れてる気がするからだ。
 けれどもミュージシャンが選曲して監修したベスト盤って、オリジナル盤と思ってもいいかな・・・と、本盤聴いたらいきなり意見を180度、変えたくなってしまう。

 逆に3年間の遍歴を一枚へ強引にまとめたことで、本盤は奇妙なトータル・アルバムな面持ちも漂わせてるから。各オリジナル盤の鋭さが、ごった煮に混ざって親しみやすさ、すなわち普遍性を増している。その意味で本盤は、正しくベスト盤なのかもしれない。

Track Listing:
1. イフ
2. ピアノ・ピロウズ
3. BQ
4. ゼアーズ・ノー・ディサポイントメント・イン・ジーザス
5. テーマ・フロム“ニッポンノスガオ”
6. ディス・イズ……!!!(デス・ビデオ)
7. テーマ・フロム“セックス・シンボル・ストライカーズ・バック”
8. テーマ・フロム“Hm”
9. アレンジメント
10. ユア・ノー・トッキブツ
11. AB1013
12. DAPANPIS
13. メモリアル

おまけ。高橋幸宏"WHAT, ME WORRY ?"TOUR 1982.07.26 新宿厚生年金会館のライブ音源。メンバーがすげえ。高橋幸宏の初ソロ・ツアーだそう。

高橋幸宏 (Vocal、Keybords、Drums) 
細野晴臣 (Bass、Keybords、Vocal) 
土屋昌巳 (Guitar、Vocal) 
立花ハジメ (Sax、Guitar、Vocal) 
STEVE JANSEN (Drums) 

ゲスト:1982.07.26
加藤和彦 (Guitar) 
坂本龍一 (Drums) 
鈴木慶一 (Guitar) 
DAVID SYLVIAN (Keybords) 



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