Andrew Hill 「Invitation」(1974)

 三人が並列にアイディアを提示して、美学は崩さない。自由で構築度高い即興が詰まってる。

 リーダー作として14作目。発売当時の順では"Lift Every Voice"(1970)ぶりとなる。これまでのブルーノートを離れ、デンマークのSteepleChaseへ移籍した第一弾。
 録音順ではこの間に"Passing Ships"(2003)や、"One for One"(1975)収録の数曲が音盤化されているが。

 ピアノ・トリオの編成。試しにさかのぼってみると、過去の盤は管が入った編成ばかり。ホーンが好きなブルーノートの嗜好を反映か、多くの和声を使いたかったヒルの趣味か、どちらだろう。とにかく3rdソロ"Smokestack"(1966)ぶりのピアノ・トリオ盤のようだ。

 収録曲は当然、ヒルのオリジナルばかり。だがタイトル曲はポーランドの作曲家ブロニスラウ・ケイパーの作品を取り上げた。ちょっと異質。ヒルならオリジナル曲でこそ、新レーベルで心機一転しそうなのに。
 編成もこのタイトル選定や選曲も、口出しがレーベル側からあったのかも。

 なおCD化にあたり(1)の別テイクがボートラ収録された。

 本盤でのサウンドは硬質。リーダー楽器がいないぶん、のびのびとピアノを弾き倒した。さらにフリージャズ的なテンポの曖昧さも、そこかしこに感じられる。例えば(3)でのバトルも、ソロ回しでなく欧州風の凛とした鋭さや、生真面目なスペース取りの応酬が聴けた。

 もっともサイドメンは二人ともアメリカ黒人。ライナーによると当時にトリオを組んでたメンツで、その時のレパートリーを録音らしい。
 なおドラムもベースもディスコグラフィ上は本盤が初めて。この後に、何枚か共演クレジットが現れるが。クラブ演奏で腕を磨き、おもむろにレコーディングに至ったのかも。
 録音スタジオもNYだし、欧州を踏まえた要素は演奏にも録音にもない。単にこの音を聴いて、僕が勝手に応酬風味を憶えてるだけだ。

 いわゆるファンキーなグルーヴとは無縁で、テンポ感は常に漂うが、きれいにビートが提示されるわけでもない。三人が互いに暴れながら、大きなうねりをスマートかつ抽象的に積み上げた。
 ここには実験を目的とした尖鋭性やめちゃくちゃさは無い。ブルージーやスイングといったオーソドックスさも回避している。
 
 きっちり構築をしたうえで、自由を目指す。そんな盤だ。力強く叩きのめされる鍵盤、ランニングとは無縁で弦をはじくベース、手数多く埋めながらテンポ・キープは避けるドラム。
 主旋律と伴奏の区分けでなく、三人が並列に盛り上がる。てんでに、ではない。一体として。
 本盤で最もロマンティックな(5)はイントロでベースが激しく蠢く。このアンサンブルの自由さを許すのも、作曲家たるヒルの鷹揚さで懐深さだろう。
 
 アルバムを通じてノイジーな響きは無い。ところどころに奇妙な和音はあるけれど、基本は美しく凛と跳ねる音楽が基本だ。音数多く熱っぽく展開し、時にパーカッシブに盛り上がった。
 どの曲もフェイドアウトせず、きっちり終わる。いや、きっちりとは言わないか。とにかく投げっぱなしのセッションではない。起承転結を、ありふれたフォーマットから離れた上で、ドラマを作った。

Track listing:
1."Catfish" – 6:31
2."Lost No More" – 5:23
3."Morning Flower" – 12:19
4."Invitation" – 8:40
5."Laverne" – 7:33
6."Little John" – 6:51
7."Catfish" [alternate take] - 10:39

Recorded at Minot Sound Studios, White Plains, New York on October 17, 1974

Personnel:
Andrew Hill – piano
Chris White – bass
Art Lewis – drums


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