Barney Kessel 「Hair Is Beautiful」(1969)

 がっつりとポップ・ジャズをイギリス人と吹き込んだ。
 

 バーニー・ケッセルはれっきとしたジャズ・ミュージシャンだがレッキング・クルーの一員とみなされ、ファースト・コールのギタリストとして様々なポップ界のレコーディングも行った。
 本盤はあくまでジャズ視点の作品ながら、ポップスを滑らかに演奏した一枚。

 プロデュースは英Black Lionのオーナー、Alan Bates。欧州盤では上記の通り、ケッセルの写真をあしらった骨太のジャズっぽい雰囲気だ。だがStanislaw Zagorskiのイラストが出すフラワー・サンシャインなジャケットのほうが、本盤のある意味いびつな風景を象徴している。

 周辺ミュージシャンもイギリス人が中心のようだ。オルガンとの2フロント編成で、リズム・ギターを入れる編成をとった。ギタリストのリーダー作なのに、ちょっと面白い。
ドラムのBarry Morganは、ソフト・ロックの端っこで引っかかるブルー・ミンクの彼。どうせなら、動いてる映像を貼ろう。
Blue Mink "Melting Pot"(1969)


 しかし本盤、日本で2013年に再発時にオビへ書かれた宣伝文句が秀逸だ。「演奏から漂う時代の空気感が絶品」と。たしかにオルガンの滑るような音色、ギターのちょっと歪んだ響き、ほのぼのと刻むドラムの穏やかでのどかなセンス。なんとも60年代後半のサイケっぽい。

 フィフス・ディメンションのカバーで有名な(1)を筆頭に、全10曲がサクサクと進む。(5)のようにおどろおどろしい雰囲気まで大胆に演奏へ取り込んだ。この辺はジャズと言うより、ラウンジやサーフ・インスト的なアプローチのほうが近しい。

 全体的にお仕事気分かな。ソロ回しに留まり、演奏のインタープレイの妙味までは行かない。フェイドアウトで終わってしまうあたりは少々物足りないが、カッチリとアレンジされ制約多い展開の中で、ケッセルは丁寧にアドリブを紡いでいく。

 あまり気負わず、淡々とケッセルは演奏をこなした。
 くっきりしたタッチで危なげなくメロディを奏で、オルガンがソロの時はさりげないカッティングで伴奏へ回る。(6)のようにプログレ的に盛り上がるさまも良い。
 妙なタメやテクニックひけらかしは一切ないが、溢れるフレージングの美しさは聴きものだ。

 とはいえ西海岸のクール・ジャズとも違う。イギリスのフィルターをかけたロックの色合いが濃い。アメリカ人の一流ギタリストを呼んで、アメリカのロック・ミュージカルの楽曲を、アレンジや構成を決め打ちで演奏する。
 そんな幾層にも異文化解釈の要素を秘めた、どちらかと言えば怪盤にあたるアプローチだ。

 けれどもラウンジともジャズ・ロックとも聴ける、奇妙なアレンジの中でケッセルのギターは伸び伸びしてる。この辺、ポップス界のセッション仕事で鍛えられた、したたかなケッセルらしいとも言える。
 制約の中できっちり仕事をこなしつつ、ジャズのファンキーさは失わない。彼の生きざまを上手く封じ込めた一枚って取れないかな。色々と思い入れ込めて聴きたい。
 ギター・インストっぽいあっさりBGMでも楽しいが。

Track listing:
1.Aquarius 4:21
2.Frank Mills 3:41
3.Where Do I Go? 4:50
4.I Got Life 3:48
5.Walking In Space 3:36
6.Ain't Got No 3:35
7.Easy To Be Hard 4:05
8.Hare Krishna 3:42
9.Good Morning Starshine 3:50
10.Donna 3:15

Personnel;
Guitar – Barney Kessel
Guitar [Rythm] – Ike Isaacs
Organ – Kenny Salmon, Steve Gray (tracks: 1 to 3, 7)
Drums – Barry Morgan
Electric Bass – Tony Campo

Producer – Alan Bates
Recorded at Polydor Studios,London.
1st/2nd November 1968.

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