Galaxie 500 「Today」(1988)

 シューゲイザーの元祖でありクレイマーのサイケ趣味が炸裂の傑作。



 まずは収録曲で唯一のPVから見てみよう。青白い色合いで、幻想と言うより酩酊気分の風景が広がる。画面は荒く、カメラは揺れる。頻繁に場面切り替えが行われ、脈絡も少ない。つまりは、酩酊。酒かドラッグかは知らないが。

 この当時のクレイマー周辺はパンクの派生でスカムの価値観もあった。めちゃくちゃで無軌道を良し、とする風潮。だから音盤として、しらふで聴いてもつまらないものも多い。本来、ギャラクシー500も下手くそなバンドだ、とヘンテコ箱に入れられかねなかった。
 しかし彼らには透き通って強靭なリリカルさがあった。クレイマーのリバーブ振りかけた夢見心地なミックスが、さらに引き立てた。そしてギャラクシー500は独特な魅力を音盤へ封じ込めた。

 なるたけでかい音で聴くと、楽しい。ドタバタするドラム、淡々と弦をはじくベース。シンプルなリフのギターと、危なっかしく揺れるボーカル。これらが轟音だと耳へぐいぐい迫ってくる。
 しかしクレイマーは丁寧な仕事してる。例えばいきなり(1)。サビでハーモニーをきれいに足して、鮮やかな落差を曲に与えた。リバーブのかけ具合も綺麗だ。ドライだと下手くそな演奏も、緩やかな飛翔感を持つ。

 (2)のハイトーンなハーモニーはクレイマー自身かな。ベース・ラインを甘く輪郭ぼやかせて、うねりを作った。(6)ではハーモニカをさりげなくかぶせる。ハーモニーの甘さも抜群だ。
 ジョナサン・リッチマンのカバー(4)では冒頭のフィードバックが、厳かで思わせぶりな雰囲気を作る。メンバーとクレイマー、どちらのアイディアだろう。さらに薄く鍵盤やギターを足して、厚みを出してる。
 インストの(8)は幾本ものギターがダビングされた。終盤のソロはなんか音程が歪んで、奇妙な崩れっぷりが満載。

 アルバムを通してどの曲も、イントロはさほど凝ってない。リフよりストロークを主眼かのよう。曲が進むと、じわじわと魅力が広がっていく。

 素のギャラクシー500はおそらく、おぼつかない演奏と線の細いボーカルの初心者に毛が生えたくらいのバンドだった。ヘタウマ、ではない。演奏力はたぶん、聴いたまんま。
 だがメロディの不思議にメロウな魅力へ主眼を置き、クレイマーは鮮やかに飾り立てている。オーバー・プロデュースながら、結果的に本盤を歴史に刻み、フォロワーを産んだ。もっとクレイマーは評価されていい。してよ。 

 発売翌年89年4月21日にボストンでのライブ。稚拙で素朴な演奏な様子がよくわかる。しかしどさ周りっぽい絵面だなあ。学校でのライブなのか、ステージ上のバスケット・ゴールが寒々しい。
 

 21世紀にもなると、Youtubeに色々と貴重な映像が発掘されている。
 90年のインタビュー映像なんてものもあり。

 これはさらに前、89年3月19日にケンブリッジでのライブ映像。 
 ギャラクシーとして未録音なジョナサン・リッチマンのカバー"Back In Your Life"や、未音源化のオリジナルで、けだるいテンポでほんのりラテン風味の"Buzz In My Head"を演奏してる。


 こちらは12年5月11日にディーンが"Dean Wareham plays Galaxie 500"をやったときの映像。カリフォルニアにて。こんなライブ、あったんだ。

 ・・・と思って調べたら、リキッドルームで来日公演までやってた。
http://www.liquidroom.net/schedule/20111006/7376/
 再結成してよ、せっかくなら。このときのメンバーはデーモン&ナオミではない。ちょっと調べたが、誰かわからなかった。
 ギャラクシー500を吹っ切ったていのデーモン&ナオミと違って、ディーンはまだギャラクシー500を上手く使っている。

 また彼らの盤は廃盤かな。もし見つかるなら、このボックスがお勧め。まとめて彼らのサウンドを聴ける。MP3なら発売が継続中。よかった。
 

Track listing:
1. "Flowers" - 4:26
2. "Pictures" - 3:23
3. "Parking Lot" - 2:52
4. "Don't Let Our Youth Go to Waste" (Jonathan Richman) - 6:47
5. "Temperature's Rising" - 5:05
6. "Oblivious" - 3:18
7. "It's Getting Late" - 3:29
8. "Instrumental" - 3:01
9. "Tugboat" - 3:53

Personnel:
Dean Wareham:g,vo
Damon Krukowski:ds
Naomi Yang:b

Krame:key,cho,Harmonica
Produced & engineered by Kramer at Noise New York

 ぼくが2001年と約15年前に書いた感想が、こちら。
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Drum/1400/g500/g1.html

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