Me Touch Myself (1989)【Prince未発表曲】

 重たく迫りくる不穏なスロー・ファンク。

 89年の録音で、特に何かのプロジェクトに紐づかぬままオクラいりしたという。こういう曲のほうが、プリンスの音楽性が滲んで面白いかもしれない。時代的には"Batman"のころ。だから打ち込みを強調、かな。

 ずしんと沈む打ち込みビートに、オーケストラ・ヒットもクラッシュ・シンバル風に連打される。ベース・ラインも打ち込み。裏拍から浮かんでかぶさるシンセは手弾きかも。 ほとんど楽曲として展開は無く、少ない和音の進行である意味ブルージーに漂った。あからさまにブルーズをアピールしなかったプリンスとしては、意外と貴重なアプローチだ。

 冒頭はほぼ、パターン・ミュージック。オーケストラ・ヒットがアクセントつけるくらいで、あまり変化なく呟くような歌声が進む。だが一区切りついたところで多重ハーモニーが乗り、一気にサウンドが不穏さを増した。
 
 ボーカルは語り掛けるような流れで、淡々と進む。気取ったプリンスの多重ハーモニーが、ぴたりとメインの歌声に吸い付く。単にカウンターのコーラスやメロディをハーモニーで補強にとどまらず、上から下から次々に歌声が重なっていく。

 この複雑な響きこそが、この曲で最大の魅力。"The Ballad Of Dorothy Parker"に通じる物語性を持つ。
 静と動、ダンディさをか細く青白く、したたかに。さまざまな空気を混ぜ合わせた。
 楽曲全体は地味めだが、歌声が飛び交う影を持ったさまは、すごく良い。

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