Apollonia 6 「Apollonia 6」(1984)

 粗製乱造と当時は思ってた、プリンス周辺ギャルバンの一つ。

 The Starr★Company名義でプリンスが発表した一枚。"Purple Rain"(1984)の大ヒットにつれ、このアポロニア6やタイムなどファミリー・バンドも当時に宣伝されてたが、けっこう荒い作りでピンと来なかった。すべてプリンスが行ってるにも関わらず、クレジットが当てにならない。この不安定さもなんだかなあと思ってた。

 本盤も数曲でシーラ・Eなどの演奏を入れてる以外は、すべてプリンスの作曲で演奏と言われる。アメリカでの発売日を見ると、"Purple Rain"(1984)が84年の6月24日。本盤が同年10月1日。たて続けにリリースで、映画を盛り立てようってプロモーションか。
 今と違って録音後すぐさまにリリースはできまい。LPプレスの時間もあるし。前もってかなりの予算を取り、プリンスが片端から録音する環境をあらかじめ、整えてたと思われる。 
 映画の封切りは"Purple Rain"の発売翌月、7月26日だから。整理のため、関連リリースを発売日順に並べてみよう。これがプリンス・ファミリーの発売連鎖の第二波となる。

6/4 "The Glamorous Life"(Sheila E.)
6/24 "Purple Rain"
7/9 "Ice Cream Castle" (Time)
7/26 映画"Purple Rain"
10/1 "Apollonia 6"【本盤】

 第三波は翌年85年8月12日に、The Familの発売が幕開け。シーラ・Eやマザラティ、マッドハウスにジル・ジョーンズ、タジャ・セヴィルなどの"プリンス・ファミリー"がドバドバと溢れていった。

 JBやP-Funkなどに代表されるファミリー構成で幅を広げようって戦略と、溢れる創作欲を満たす受け皿、双方の思惑が上手いこと噛み合ったのがこの時期だった。ある意味、幸せなひととき。
 "Parade"が映画興行的にはコケたり、"The Dream Factory"などレコード発表プロジェクトもワーナーと折り合いがつかない数年後に至ると、プリンスはひたすら倉庫の肥やしに新曲をため込んでしまう。ブートの流出で一部は伺えるが、奥の院で様子が伝わらないのは、やっぱりつまらないもの。

 さて、本盤。下品と言うか中途半端にナスティなビジュアルは、当時でもちょっと微妙だった。今ほどセクシャルなイメージを前面に出せなかったとはいえ。
 もともとは前身ユニットヴァニティ6が、映画不参加を示したことでフロントをすげ替え、アポロニア6に変わった。6とあるが、前身も今回もメンバーは3人。
 結局、アポロニア6も本盤だけで終わった。

 あまり本バンドのアイデンティティは無く、片端から録音して並行してパープル・レイン、シーラ・Eやタイムのアルバムなどへ振り分けられたらしい。
 バングルスに提供した"Manic Monday"も、既にこのとき存在してたとか。デモがYoutubeに上がってる。もっともこの曲、"1999"の焼き直しではないかと以前から思う。


 本盤を聴いて一番つらいのは、アレンジの詰めが甘くてアイデンティティが見出しづらいこと。それと、録音の妙なエッジのゆるさ。もやっとした音像は、シンセ中心のシンプルな演奏だと、よけいに安っぽく聴けてしまう。本稿にあたり、改めてじっくり聴いてみるとあちこちに冴えが感じられる。粗製乱造、と敢えて言いたい。
 腰を据えて、もっと硬いミックスで仕上げたら、違う評価があったかもしれない。

 ユニットはセクシーさを狙ったんだろうけど、映像を見ると媚びさがないためかエアロビクスみたいなヘルシーさも感じてしまう。
 
 
 本盤は曲のバランスが悪く、前半は3~7分の長めの曲が3曲。後半はバタバタと4曲。しめて34分の短めなアルバム。"Sex Shooter"と"Blue Limousine"がシングルで切られた。どれもけっこう、似たようなテイストだ。
 くいくいと拍頭を強調して、メロディがパワフルに動く。

 打ち込みビートを基調のタイトなドラムは、プリンスのトレードマークになったシンセのスネアが鮮やかに響いた。歌は特段上手いわけでもなく、ほんのわずか鼻に引っ掛ける以外はスムーズに歌ってしまう。
 (1)の最後でプリンス風のシャウトが出るあたり、デモまるごとそのままか。"Gimme some horn!"って掛け声も、プリンスのデモそのままだとしたら微笑ましい。実際、ホーン隊が出るわけでもないし。

 代表曲となった(2)も、たぶんボーカルの弱さが致命的。真っ正直なプリンスのくい打ちドラムとシンセを元に、ハーモニーが幾層にも重なるアレンジはけっこう手が込んでいる。
 プリンスならば、単純なトラックを歌声のグルーヴィさで斬新な勢いを付与できる。
 しかし計算違いは、ボーカルの弱さ。あまりに素直な歌い方で存在感を出せず、凡庸さが目立ってしまう。

 それとバラードの名曲が本盤に無いのも物足りないが・・・この歌唱力なら、逆効果かな。

 (3)はシンセ・ドラムにシャープなカッティングが絡む。ファンキーな進行が面白いのだが、歌声が素直過ぎ。プリンスの歌ったテイクって存在しないものか。
 伸びやかな音色のシンセが幾層かでリフを重ねるが、歌が滑らかなものでカラオケに負けてしまってる。
 今回聴き直し、一番いいなと思ったのがこの曲だった。
 アルバムとしてなら、(2)が第一で(1)が殊勲賞、(3)はもっと評価下がるのだが。だって、歌が単調なんだもの。

 (4)はグッとテンポが上がり、ギターと鍵盤がカリッと硬い雰囲気を上手く使った。シーラ・E(が叩いてるらしい)のドラムと、プリンスのベースが絡み、シンセは控えめ。バンドっぽさが強調されてる。実際、レボリューションズの演奏とも言えそうだ。
 歌声の背後にプリンスと思しき男性声が小さくミックスされ、まんまプリンスの楽曲として聴いてしまう。手拍子煽る声もプリンスのほうが多いし。
 アウトロが1分程度と長く、ちょっと飽きるかな。もっとエンディングを簡素にして曲数増やすって選択肢は無かったのか。

 おしゃべりが中心の(5)は、英語がわからず聴いてるのがしんどい。1分半ほどたって、ようやく演奏が始まる。ストレートなロックンロールだ。歌の稚拙さはここでも裏目に出て、起伏が少ないメロディを、まんま単調に色づけてしまった。
 むしろ演奏のほうがプリンスの多重録音で生き生きしてる。
 
 ギターのカッティングが光る(6)も、今回聴き直して惹かれた一曲。やはりトラックが滑らかすぎるため、プリンスのねっとりした歌声で聴きたい。いや、ボーカルはかなり頑張ってる。3分過ぎのフェイクを入れながらの工夫も評価したい。なんだろう、ブレスがヘタで荒々しいのかな。
 軽く刻むハイハットと、絡みつくベースにスッキリしたカッティング。鍵盤が色を付ける。シンセまみれな印象の本盤で、生楽器のダイナミズムが爽快だ。
 
 最後の(7)の冒頭はスペイン語?ほぼ語り。だがプリンスのエレキギター・ソロが聴けるのが、本曲の最大の価値だ。ほんのりとラテン風味を混ぜた、まさにサンタナみたいに泣きのギターで、あっというまに幕を下ろしてしまう。

 今は本盤って廃盤だけど、いずれは再発の目もあるのかな。
 

Track listing:
1. Happy Birthday, Mr. Christian (7:06)
2. Sex Shooter (3:39)
3. Blue Limousine (6:19)
4. A Million Miles (I Love You) (5:51)
5. Ooo She She Wa Wa (4:10)
6. Some Kind Of Lover (4:48)
7. In A Spanish Villa (2:12)

Personnel:
Apollonia - all lead vocals, except where noted, backing vocals
Brenda Bennett - vocals, lead vocals on Blue Limousine and Some Kind Of Lover
Susan Moonsie - vocals, lead vocals on Ooo She She Wa Wa

Prince - all instruments, except where noted (uncredited)

Susannah Melvoin - backing vocals on 1,3
Brown Mark - backing vocals on 1
Sheila E. - drums and percussion on 4
Lisa Coleman - keyboards on 4, backing vocals on 6
Wendy Melvoin - guitar on 4
Jill Jones - backing vocals on 5

Prince - producer (credited to The Starr★ Company and Apollonia 6)

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