Prince 「1999」(1982)

 簡素に絞った12インチ集のような2枚組アルバム。本格的な快進撃がいよいよ始まる。

 のちのレボリューションズのメンバーも固まり、バンドの体制も整った。Controversyツアーでアリーナ・クラスのステージングもたっぷりと経験を積んだ。
 いったんは"The Second Coming"としてControversyツアーのライブ盤を出す企画もあったそうが、これはポシャってしまう。

 リリース数が有限ならば、過去の記録より新譜がプリンスの意思だろう。どかんと2枚組の発表に至った。
 よりキャッチーさを狙ったか、本盤ではグッとアレンジが簡素になり、メリハリついたシンプルなものに変わってる。・・・だが、どうも水増し二枚組のイメージが抜けない。
 一曲がちょっと長めで、2~3曲しかLPの片面に入っていない。音圧上げるべく、あまり収録時間をとらなかったのかもしれない。
 けれどももう少し曲を短くして、詰めたらどうだったろう。総収録時間は70分。LPは無理やり詰めて50分強。LP一枚半分くらい。

 さらに本盤は結構一曲が長い。1~2曲削って短く編集したら、LP一枚にすっきりまとまったはず。12インチシングルの流行、クラブでかけられることの想定、ライブ感をLPで再現、そしてもちろん旺盛な創作力を2枚組でアピール。さまざまな戦略でのリリースと伺えるけれど。

 演奏は基本的に、プリンスの多重録音。バンド風の要素ながら。続く"Purple Rain"でバンド名義を前面にアピールするが、本盤ではそこまで踏み切っておらず自らの才覚で積み上げるところは変わらない。音だけ聴くと、ライブでそのまま再現できそうなアレンジだが。

 本盤から妙にサウンドの抜けが良くなる。録音は前から変わらず、プリンスのKiowa Trail Home Studioと、ハリウッドのSunset Soundにて。マスタリングもBernie Grundmanで変わらない。したがって、エンジニアのPeggy McCrearyの手腕と思われる。
 なお彼女は"D.M.S.R."で手拍子とコーラスにもクレジットあり。完全なお仕事でエンジニア担当じゃなく、プリンスの録音仕事へきっちり楽しんで参加してるっぽい。

 彼女は他にTotoの"IV"(1982)やヴァン・ヘイレン"Van Halen"(1978)などの盤でクレジットあり。カラッと明るい録音が得意のようだ。
 プリンスも彼女の操作が気に入ったか、パレードまで以下の各アルバムで、主にハリウッド録音の時は彼女を起用している。

1999 - Prince
The Glamorous Life - Sheila E.
Purple Rain - Prince and The Revolution
Ice Cream Castle - The Time
Apollonia 6 - Apollonia 6
Around the World in a Day - Prince and The Revolution
Parade - Prince and The Revolution
 
 同時期にプリンスは"Purple Rain"の大成功を契機に自宅スタジオでPaisley Parkを立ち上げる。こちらのハウス・エンジニアを90年まで務めたのが、おなじみSusan Rogersだ。

 さて、各楽曲群。(1),(2)の代表曲を筆頭に、サウンドの粒がそろっている。初のイラスト・ジャケットでブランド・イメージの収束を図り、つるっとした感触に統一されている。
 "1999"や"Little Red Corvette"のビデオで見られるように、紫の鋲付きコートに身を包んだプリンスを中心に、揃ってステップを踏む、一糸乱れぬ統制取れた美学のイメージングだ。なお著作権対策か、これら映像でピッチが違うのはご愛敬。
 
 翌83年に地元ミネアポリスで"D.M.S.R."のライブ映像がある。ここではパンツいっちょにコートまとった姿で、あまり完璧には服装イメージの統一は無かった?もしくは、アフターショー的なギグのため、適当な格好なのかも。


 全11曲中、シングル・カットは(1),(2),(3),(4),(5),(6)とほぼ半分。B面曲では(7),(10)が収録された。アルバムからどんどんシングル切られる流行は、むしろ本盤の翌年位。これはむしろ、いかに本盤をワーナーが押していたか、と感じる。
 シングルのみの未発表曲は"How Come U Don't Call Me Anymore","Horny Toad","Irresistible Bitch"と3曲。どんどんシングルも買わないと、プリンスの楽曲を聴ききれなくなっていった。このあとは基本、シングルB面はアルバム未収録の路線をとる。  

 "1999"は99年に改めてミニ・シングルでミックス音源を追加した再発もあり。これは結構あざとい企画だった。


 パンチ力あるシンセドラム中心のシンプルなビートと、鮮やかなシンセの音色が目立つ本盤だけど。昔からぼくはとにかく"Free"が好きだ。ファルセットが地声に変わり、むせび泣くような歌い方で、曲が盛り上がる。終盤のシャウトも素晴らしい。
 冒頭こそ弾き語りっぽいが、実際はすぐに表れるエレキギター、しっかり沈むスネアの響きといった、あくまでバンド・サウンドでこの曲は成立している。
 プリンス逝去のニュースを聴いたとき、真っ先に頭に浮かんだのはこの曲だった。

Track listing:
1. 1999 (6:22)
2. Little Red Corvette(4:58)
3. Delirious (3:56)
4. Let's Pretend We're Married (7:20)
5. D.M.S.R. (8:15)
6. Automatic (9:27)
7. Something In The Water (Does Not Compute)(4:00)
8. Free (5:08)
9. Lady Cab Driver (8:25)
10. All The Critics Love U In New York (5:55)
11. International Lover (6:37)

Personnel;
Prince - all vocals and instruments, except where noted.
Lisa Coleman - background vocals (on 1,2,3,5,6,8)
Dez Dickerson - co-lead vocals (on 1), background vocals(on 2), guitar solos (on 2)
Jill Jones - co-lead vocals on 1999, background vocals (on 6,8,9) (credited as "J.J.")
Brown Mark - background vocals and handclaps (on 5) (credited as "Brown Mark")
Jamie Shoop - background vocals and handclaps (on 5) (credited as (Jamie")
Carol McGovney - background vocals and handclaps (on 5) (credited as "Carol")
Peggy McCreary - background vocals and handclaps (on 5) (credited as "Peggy")
Poochie - background vocals and handclaps (on 5)
The Count - background vocals and handclaps (on 5)
Wendy Melvoin - background vocals (on 8) (credited as "Wendy")


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