Egberto Gismonti Group 「Infância」(1991)

 ジスモンチの天才性とサイドメンのハイテクニックぶりが際立った傑作。

 ジスモンチのグループ名義で発表の1stにあたる。アイヒャーがプロデュースしてECMの本拠地、オスロのレインボー・スタジオで90年に録音された。本名義ではやはりECMより"Música De Sobrevivência"が、その後に発表あり。
 ジスモンチはピアノとギター、双方を演奏。他のメンツはベースにチェロにシンセと、リズム楽器不在の変則的な編成ながら、楽曲と演奏がもつリズミックな躍動性に支えられ、打楽器が無くとも強烈なビート感を提示した。

 ジスモンチの天才性は、そのスピードと猛烈な溢れるメロディがまず印象深い。素晴らしくはじける軽々した跳躍とうねり、そして爽やかな奔出。隅々まで瑞々しく暴れてる。
 どの程度が即興性か不明だが、本盤はかなりのとこまで譜面があるのではないか。ミニマルに重なるフレージングはぴたり吸い付くように、アンサンブルが成立してる。混沌からテーマの構築まで隙無くつながり、楽器の応答や揃っての演奏までばっちり。
 全員がジスモンチのサウンドを生き生きと表現した。

 もっともポップなのが(2)。ピアノが転げながら華やかで涼しいメロディを高らかにばらまく。チェロとベースがアルコで続けて間をおかず加わり、同じ旋律を朗々とチェロが奏でる。ピアノとチェロが高速で役割分担を変えながら、鋭く滑らかに音楽を紡ぐ。
 そこへシンセが乗っかり、高らかに飾った。果てしなく高まっていくさまが、しみじみと美しい。

 他の楽曲も格別な美しさ。たっぷりと残響をまとって、時にしずしずと奏でる。ジスモンチの鮮烈さと、全く同じテンションで他のメンバーも音を出す。
 猛烈に疾走するジスモンチに全く後れを取っていない。叩きつける(4)でのピアノの高速フレーズを、対比するようにジャキス・モレレンバウムのチェロが軋む。そしてチェロもギアをどんどん上げ、ピアノと同じテンポ感でテーマを奏でていった。

 4人の音楽が過不足なく成立する様が凄まじい。この中では比較的、シンセが彩り役に聴こえはするけれど。パッドの白玉でふくよかに、包容力豊かに優しく音像を包んだ。
 
 ジスモンチの10弦や14弦ギターの炸裂も、ばっちり。(7)や(8)がじっくり楽しめるかな。ソロっぽい(7)から、アンサンブルの妙味へつなぐ(8)との対比も良い。
 それを言うならば、(1)でのどれがジスモンチかわからないほど、目まぐるしく弦が交錯する複雑さも、めっちゃ聴きものだ。
 うーん、聴くたびに発見がある、すごく充実した一枚。

Track listing:
1.Ensaio De Escola De Samba (Dança Dos Escravos) 8:47
2.7 Anéis 9:07
3.Meninas 7:14
4.Infância 10:46
5.A Fala Da Paixão 6:09
6.Recife & O Amor Que Move O Sol E Outras Estrelas 10:58
7.Dança No.1 5:18
8.Dança No.2 4:07

Personnel:
Piano, Guitar [José Ramirez, 10 Strings], Guitar [Jorge Passos, 14 Strings] – Egberto Gismonti
Bass – Zeca Assumpção
Cello – Jacques Morelenbaum*
Synthesizer [Synthesizers], Guitar – Nando Carneiro

Producer – Manfred Eicher

Recorded November 1990
Rainbow Studio, Oslo  

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