Paul Chambers 「1st Bassman」(1961)

 変則的なコンセプトで、がっつりとベーシストの腕を見せつけた一枚。

 リーダー作の定義とは何か。一番、目立つことか。コンセプトを提示することか。
 本盤でポール・チェンバーズが選んだのは「ユゼフ・ラティーフ作品集」。もちろんラティーフ本人をセッションに迎えて。

 チェンバーズはラティーフの12歳下。したがって若手を引き上げるって意味合いじゃあるまい。今はチェンバーズのほうが評価高いが、当時はどうだったんだろう。
 ざっとたどる限り、本盤以外にラティーフとチェンバーズの接点が見えない。ディスコグラフィ上はBill Henderson "Sings"(1959)での一曲で共演に見えるが、聴いたことなく詳しいことは不明。

 いずれにせよ、ちょっとひねったアンサンブルでも俺は弾きこなせるぜ、って観点でコンセプチュアルに仕切った盤と思われる。
 今のCDではキャノンボール作曲の"Who's Blues"がボートラで入ってるが、LP時代はこの曲が無し。全5曲、すべてラティーフの作曲でまとめられた。本盤への書き下ろしか否かは調べがつかず。

 タイトルの1st Bassmanは、仲間内でファーストコールの売れっ子だって意味を込めたか。
 アンサンブルは3管編成。ラティーフ流のどっかひねった和音感のアンサンブルを、危なげなくアグレッシブにベースをランニングさせて、チェンバーズはバンドをグルーヴさせた。
 
 もちろんラティーフもたっぷりソロをとるが、当然ながら自分がリーダーだって前には出すぎない。なんならラティーフのリーダー作名義でも成立しそうなものだが。
 アルバムを通して響くのは、確かなパルスの低音と着実なドラムに、跳ねるピアノ。リズム隊は破綻無く強靭に決め、つぎつぎとフロントがアドリブを繋げていく。

 (5)のバラードで、まずはチェンバーズのアルコがしみじみと歌う。
 続くラティーフのフルートやハーマン・ミュートのペット。これらに誘われるロマンティックな世界以外は、がっつり骨太のハード・バップが並んだ。

 しかし逆にここまで明確なコンセプトの中で、(6)でキャノンボールのブルーズを敢えてセッションした必然性が見えない。セッションの時間が余った、手すさびだろうか。 
 再発CDとしても本盤というレアテイクが聴けるのは嬉しい一方で、アルバムのコンセプトが中途半端になるのは否めない。タフにジャズをかまして、最後で静かに決めるのがもともとの狙いだろうから。
 
 (2)の冒頭で小刻みなホーン・リフを縫うように、高音のベースがアンサンブルをしっかりまとめるあたり、楽曲のアレンジはきっちりベースが目立つように作られてる。
 本盤で聴けるフロントのアドリブも、地味だが光る場面がしばしば。もちろんベースの着実さは存分に味わえる。

 ちょっと変な和音や進行を匂わせつつも、着実に進むグルーヴが本盤の味だ。

Track listing:
1. "Melody" – 4:08
2. "Bass Region'" – 10:35
3. "Retrogress" – 3:29
4. "Mopp Shoe Blues" – 6:05
5. "Blessed" – 7:04
6. "Who's Blues" – 8:24

Personnel;
Tommy Turrentine – Trumpet
Paul Chambers – Bass
Lex Humphries – Drums
Wynton Kelly – Piano
Yusef Lateef – Sax (Tenor)
Curtis Fuller - Trombone

関連記事

コメント

非公開コメント