KoЯn 「KoЯn」(1994)

 いい歳こいて無邪気に聴いていいものか。ヘビメタとプログレの融合とも感じた。

 若い時にしか楽しめない音楽、は確かにある。恨みつらみ嫉みにコンプレックスのルサンチマン、これらを素直に出すのは若者の特権である。まさか40歳づら下げて「大人は信じられない」とほざくのは、奇異を通り越して醜悪だ。 
 そしてそれらの感情は、大人が共感すべきものではないし、相手だって触れて欲しくない。すっと横を通り過ぎるのが、歳をとった人間の取るべき態度だろう。
 とはいえ、うらやましくもある。同世代ならではの共感すべき音楽がある、ということは。
 ぼくが多感な時期に、その受け皿となったのはなんだろう。尾崎豊はちょっと世代が上。爆風スランプかなあ。

 さて、Korn。ボーカルのジョナサン・デイヴィスはぼくの数歳下で、ほぼ同世代。音楽でも体験でも共感できるはずなのだが。ハードで重たい音楽を当時聴かなかったため、Kornはさらっと流してしまってた。ジャケットは見たことあるが、聴いたことが無い。
 今回たまたま聴いたが、これは中学生の時に聴きたかったな。デイヴィスがある程度、歳をとってバンド活動並びにメジャー契約できてこそ成立した音楽ながら、歌詞の世界はローティーンでこそドップリはまれただろう。

 Kornの音楽性は、特異と言う。だがおそらくこれらの楽曲はデイヴィスの楽曲が先にあり、結果的にハードな音楽を当てはめただけ。楽理や戦略的に選んだアレンジではないと思う。
 だからしたり顔で音楽解説を施すのは野暮。たぶんこれは轟音で聴きながら浸るか腕を振り上げるか。そんなほうが、ある意味健全と思う。
 ではなぜ、こんな文章を書いてるか。書いてすっきり、頭からこの思いを忘れたかったんだ。

 音楽業界でKornはヘビメタにヒップホップの要素を加えた、ニュー・メタルに位置するという。重低音を激しく強調し、ジョナサンのむせび泣くようなボーカル・スタイルも特徴だそう。
 今回、1stを聴いた限りではあまりヒップホップのイメージは浮かばない。ぐっさり歪みながらも個々をすっきり分離良くミックスした音像は、むしろインプロやプログレとの親和性が浮かんだ。
 テーマだってそうだ。これはデイヴィスの個人世界を描いてはいるが、例えばフロイドの"The Wall"との共通性はないか。

 しかし歌詞って大切だな、と改めて思う。ぼくは普段、歌詞を全く聴かない生活なのだが、今回は音程が唸ってるだけでボーカルがピンとこないため、歌詞サイトで詩を眺めながら聴いてみた。すると、この楽曲の異様さが良くわかる。構成が変だ。平歌でサビ、みたいなポップ構造とは逆ベクトル。吐き捨てる言葉が並び、あとからメロディを付けたかのよう。
 実際、詩先ではなかろうか。アレンジも力押し一辺倒でなく、メリハリつけたドラマティックな展開が、そこかしこに聴こえる。
 歌声もグロウルからシャウト、ささやき声まで幅広い。リズムも時にメカニカルなシンバルの刻みが。この辺の打ち込みっぽさがヒップホップに近づいたってことか。それとも譜割に乗りきらない歌声のことか。

 演奏もぐっと低音を強調するヘビメタを基調ながら、さまざまな小技が飛び交う。丁寧にダビングを繰り返しつつ、分厚い熱気を失わない凄みがあり。テクニカルだが、それを感じさせない

 この音楽は、とりわけでかい音で聴きたい。迫力とかいう以前に、小さい音ではミックスがこじんまりして聴こえてしまう。ボリュームを上げるほどに、解放感とルサンチマンの臭い香りが噴出していく。

 アルバムの最後にひときわ沈鬱なスロー・テンポの"Daddy"が始まる。叫び、むせび泣き、声を絞り出す。終盤はもはや歌ではない。すすり泣くデイヴィスを、女性ボーカルの母性が包み込んだ。
 さらに演奏のタイトさが冷静な視点で歌を異世界的に表す。デイヴィスがどれほど激しく感情を発露しようとも、演劇的に音楽が封じ込めている。

 全体を通じて、デイヴィスの悲痛な叫びが詰まった。年齢を重ねても耐え切れぬトラウマの発露が、本人もしくは周辺メンバーの音楽的才能で、下手くそなグランジを超えたアンサンブルに仕上がってる。
 もう一度言うが、この音楽はローティーン向けだ。賢しげにおっさんが聴いたり評価しても、何も生まない。だが、耳を閉ざさず、聴いてみてもいいよね・・・?ってこと。子供が大人の音楽を背伸びして聴くのと似たような感じで。

 ジャケットで特に印象残ってるのは、強迫的な整合性教育のイメージが漂う2nd"Life Is Peachy"(1996)や、崩れかけた人形の4th"Issues"(1999)のほう。これらもいずれは聴いてみるかな。
 今は初期5枚を集めた廉価ボックスまで出てた。冷静に考えればもう、20年前の盤だ。
  

 



Track listing
1."Blind" 4:19
2."Ball Tongue" 4:29
3."Need To" 4:01
4."Clown" 4:37
5."Divine" 2:51
6."Faget" 5:49
7."Shoots and Ladders" 5:22
8."Predictable" 4:32
9."Fake" 4:50
10."Lies" 3:20
11."Helmet in the Bush" 4:02
12."Daddy"~"Michael & Geri"(隠しトラック)17:31

Personnel:
Jonathan Davis – vocals, bagpipes,
James "Munky" Shaffer – guitar
Fieldy – bass
Brian "Head" Welch – guitar, vocals, backing vocals on Ball Tongue
David Silveria – drums

Judith Kiener – vocals on the lullaby at the end of "Daddy"

Richard Kaplan – engineer
Chuck Johnson – engineer, mixing
Ross Robinson – producer, engineer, mixing
Eddy Schreyer – mastering

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