Sonny Rollins 「Sonny Boy」(1956)

 アウトテイク蔵出しの安易な編集盤。だが当時のコンボ編成をまとめて聴くには本盤を選ぶ手もある。

 "Saxophone Colossus"を筆頭に、ロリンズが最も冴えわたったのが56年。本盤も同時期の録音だ。これまでのプレスティッジから、ブルーノートへ移籍する寸前の時期に当たる。
 契約消化の意味もあったのか、矢継ぎ早にロリンズは吹き込みを繰り返してた。同時期にマックス・ローチのカルテットにも在籍し、さらにクリフォード・ブラウンやモンクとも録音してる。たぶんギグもあったろうし、多忙な一年と思われる。

 本盤は10月5日に"Rollins Plays For Bird"セッションから(4)と、12月7日の"Tour De Force"セッションから(5)の、二曲のアウトテイクを収録。あとの3曲は"Tour De Force"の再収録と、ちょっと安易。
 この"Sonny Boy"の発売は61年だから、プレスティッジが後年にテープをあさってアルバムを無理やり作り上げた感じ。リリースにあたり、ロリンズの意向はあったのか。

 とはいえ"Rollins Plays For Bird"は長尺のメドレー形式、"Tour De Force"は歌入が2曲と少しばかりトリッキーな構成のアルバムだった。あえてシンプルなコンボ編成のみまとめて聴きたいってニーズには、本盤がぴったりかもしれない。
 ちょっと力任せで危なっかしい演奏が本盤に並んではいるのだが。

 メンバーはマックス・ローチとジョージ・モローが固定。"Rollins Plays For Bird"からの(4)には、クレジット上だけケニー・ドーハムが加わる。この日のピアノはウェイド・レッジ。
 日が変わって過半数の"Tour De Force"セッションでは、ロリンズのワンホーンでピアノはケニー・ドリューに変わった。
 レッジとロリンズの吹込みは、たぶんこのセッションのみ。まだドーハムのほうが若干、共演歴は多い。とはいえ本盤では久しぶりの邂逅。どういういわれがあったのやら。

 さて、収録曲。全般的に性急で、妙に荒々しいのが特徴だ。やはり既発曲のほうはいくぶん演奏が締まってる。中でも(1)が悪くは無い。ドラムとベースを背後に従えるかのように、バカでかい音でテナーが吼え続ける。ばらばらっと吹いては二音のFに戻り、またアドリブへすぐさま戻る。そんな行きつ戻りつの逡巡っぽいソロのスタイルが、まさにロリンズ流。
 この曲ではしっかりタンギングを繰り出し、メリハリよく聴ける。

 逆に(2)はほぼスラーでずるずるとメリハリ無いのが、ちょっと僕の好みと違う。コルトレーン風に隙間なく目まぐるしい音を詰め込んだ。ローチがこの曲では元気を出し、やたら激しくプッシュする。ピアノとベースは後ろに埋もれる音量バランスなため大人しく聴こえるが、アタックはきっちりのようだ。むわっと低音が暴れてる感あり。

 吹きまくったロリンズのあと、猛然と滑り込むピアノの高速フレージングが豪快だ。このあたりの熱気は心地よい。やっぱ、ロリンズのサックス・スタイルだけだな、本テイクでもどかしいのは。
 続けてローチもドタバタと手数多いアドリブ。直後のロリンズと4バーズ・チェンジでは、ロリンズもタンギング混ぜたメリハリでかっこいい・・・か。
 でも終盤で再びロリンズはズルズルのフレージングに行っちゃうんだよな。
 
 (3)もスラー多用。けれどこっちはなぜか、しっくりくる。前曲にまして高速に吹っ切ってるせいか。降り注ぐドラミングの迫力と、リズム隊の着実なグルーヴに載ってロリンズが吹き倒した。スピーディな疾走感は良い演奏だ。
 リズムからはみ出て、零れそうなロリンズの勢いが凄まじい。しかしドリューのピアノがテクニカルに安定してると、今回初めて実感した。彼もリーダー作多い人だが、じっくり追って聴きたくなったな。
 
 アルバムはここから、未発表曲にかわる。いきなりムーディにしっとりと(4)が、にくほどダンディだ。リズムが緩やかなシンバル・レガートから、くっと弾む二種類のグルーヴが心地よい。
 ロリンズはゆったりとフレージングを歌わせる、独特のメロディアスなアドリブをたっぷり。あまりフェイクさせずメロディを提示、次の瞬間にアドリブへ変わる二面性を鮮やかに聴ける。
 
 訥々と刻むピアノがリズムからそのまま流れてソロに行く。地味だが着実なレッジの演奏だ。だんだんと指をまわして流麗さへ向かう。
 一節ロリンズが吹いてドラムのブレイク、またロリンズ。ドーハムの立ち位置が無いな。というか、最後まで出てこないぞ・・・?なぜクレジットあるのだろう。
 あ、最後にテーマに合わせてトランペットが鳴った。これだけかいっ。・・・てなアレンジだ。

 もう一曲のアウトテイク、(5)は高速スタイルはそのままだが、オリジナル曲ではないためか、少しだけロリンズはスピードを落としてる。ドリューのピアノもいくぶん抑えめ。こういう全体のノリを合わせるのが、センスと言うものか。

 とはいえこのテンポ感のほうがテナーのメロディアスぶりが、より楽しめるかもしれない。
 目まぐるしくフレーズが溢れ、跳ねていく。もともと冴えわたってた時期のロリンズ、乗り始めたら手が付けられない。1分40秒あたりでサックスの響きがちょっと膨らむ。吹きながら歩いて、マイク位置から離れでもしたのだろうか。
 フェイドアウトで終わるのが惜しい。きっちり着地できなかったのか、単にLP収録時間の影響で絞ったのか。どちらだろう。

 もう一度まとめると、アルバムを時系列で追っていったら中途半端な位置づけの盤になる。だがこの2セッションで、実質ワンホーンなコンボ編成のみのハード・バップをまとめて聴くには、ちょうどいい盤かもしれない。

Track listing;
1. "Ee-Ah" - 6:52
2. "B. Quick" - 9:13
3. "B. Swift" - 5:15
4. "The House I Live In" (Lewis Allan, Earl Robinson) - 9:21
5. "Sonny Boy" (Lew Brown, Buddy DeSylva, Ray Henderson, Al Jolson) - 8:22

Recorded at Van Gelder Studio in Hackensack, New Jersey on October 5 (track 4) and December 7 (tracks 1-3 & 5), 1956

Personnel;
Sonny Rollins - tenor saxophone
Kenny Dorham - trumpet (track 4)
Kenny Drew (tracks 1-3 & 5), Wade Legge (track 4) - piano
George Morrow - bass
Max Roach - drums

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