高木元輝 「2001.07.06」(2002)

 ある夜の、壮絶なフリージャズを切り取った一枚。日常ではない。しかし、特別でもない。彼らがたまたま出会い、ふと産みだしたジャズ。

 廃盤なのか、とんでもないプレミアがついてる。この日記時点で11,800円、とな。仕方ないので、ジャケ写真代わりにYoutubeに上がってた一曲を上に貼った。


 渋さ知らズ関係の音源をリリースする、地底レコードから02年にCD化された。高木元輝、不破大輔、小山彰太による01年7月6日、豊橋のHouse of Crazyで行われたライブ。
 レコーディング想定のライブかは知らないが、音はぐっと太く生々しく響いた。
 このメンバーでどのくらいライブを重ねたかも知らない。三人でバンド的に活動はしてなかったことは確か。けっこう珍しい顔ぶれだな、って印象はある。
 ベテランの高木を、次世代に属する小山と、さらに若手の不破が支えるかっこうか。

 ともあれ、特に決め事なく骨太のフリージャズを繰り出した。完全即興ではない、のクレジットだ。冒頭3曲は高木の作曲。もっとも演奏はインプロと思われる。
 あとはオーネットとチャールズ・タイラーの曲。誰の選曲だろう。不破ではなさそう。 不破はエレキベース。小山は音数少なめだがシンプルな3点セットか。

 日本フリージャズ界の草分けの一人で、このとき60歳だった高木元輝。この翌年に他界してしまう。その寸前のライブがこれ。彼のディスコグラフィーはブートも含め、ここに記載あり。
http://mtakagi.exblog.jp/

 高木のライブを見たことは無い。本盤を聴く限り、豪放で音数少なく軋ませるサックスが特徴のようだ。不破は独特の音数多いフレージングで猛烈に疾走する。むしろ小山が抑えめか。(2)の中盤あたりから、リズムが激しく鳴るけれど。

 むやみに疾走と停止でメリハリをつけない。緊張感で張りつめたままの縛りも入れない。この後の世代による、どこかユーモラスな余裕を見せるわけでもない。構築や構成を意識もしてなさそう。
 自由に、奔放に。メロディともノイズともつかぬテナーを、伸び伸びと高木は吹く。

 そしてどんなサウンドも柔軟に食ってしまう不破の豪放なベースが、芯をがっつり支えた。一人でも成立、もちろんアンサンブルでも成立。不思議に自由なスペースを、不破はあっさりとベースで仕立て上げた。相手の音を聴きながら、即座に場を作るさまは本当に凄まじい才能だ。

 小山はむしろ伸び伸びさが味。本盤ではあまり前に出ず、かといってバッキングもしない。フリージャズの文脈で、手堅いタイコを聴かせる。
 したがって本盤で丁々発止の雰囲気はあまりない。ライブ現場の様子はともかく、サウンドそのものはどこかほのぼのとした余裕がある。探り合いでなく、てんでなサックスとドラムをベースが緩やかに包み込むかのよう。

 例えば(3)の中盤。ベースがオスティナートを繰り出す。だがドラムは刻むでもなく独自のロールで合わせ、高木も違う譜割でのんびりとノイジーなサックスを吹いた。てんでに違うタイム感、立ち位置で動く。けれどもベースの強靭なタイム感がグルーヴをしっかり作り、どの拍頭でも成立するサウンドになっている。
 もちろん不破は二人を縛り付けない。乗ろうが乗るまいがかまわずベースは続く。そして脈絡なく、違うフレージングやパターンへ移っていく。自由だ。三人とも。

 なお高木のサックスは歌心あり。(3)の最後で無伴奏のなか、静かにメロディを吹いた。

 楽曲演奏に変わった後半戦だが、高木のサックスはあまり印象が変わらない。(4)もそういえば、メロディ要素が多いかな、ってくらい。不破も小山もオーソドックスなバッキングはせず、自由な譜割とビートを提示した。
 高木も別にテンポ感を維持しないため、燃え立っては沈み、煮え立ってはたゆたう独特のノリな演奏が広がった。
 実際、溶けるようにテーマ部分が終わり、なだらかにアドリブ・パートに進んだ。不破が支え、ドラムとサックスどちらも主役かをあいまいにして。

 ちなみに(4)はCharles Tylerが2ndリーダー作としESPからリリースした、"Eastern Man Alone"(1967)に収録の曲らしい。
 ぷくぷくと沸き立つメロディを、リズムと敢えて合わせない。三人が断片的にてんでな浮き立ち方をした。緩やかなテンポでじりじり進む。


 本盤で聴けるのは派手ではないが、味わい深い骨太の汗臭いジャズだ。
 三人ともコンセプトや完成形を意識せず、ごく普通のセッション。だが、特別な空間と音楽が産まれた。ライブハウスで、常にこんな音楽がさりげなく着実に生まれている。こういう盤を聴くと、ライブハウスへ行きたくなる。その瞬間で生まれては消える、音楽を味わうために。

Track listing:
1.Lapis
2.2001.7.6-1
3.2001.7.6-2
4.Lonely Woman
5.Lacy’s Out East

Personnel:
高木元輝 Takagi Mototeru: tenor sax
不破大輔 Fuwa Daisuke: bass
小山彰太 Koyama Shota: drums

Recorded live at "House of Crazy", Toyohashi on July 6, 2001

   


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