Oskar Aichinger 「Poemia」(1997)

 ピアノの抽象的な響きが漂う、コンセプチュアルな即興音楽。

 Oskar Aichingerはオーストリアで56年生まれのピアニスト。前衛ジャズ界で活躍の人らしく、自身のWebでは膨大なリリースのクレジットあり。
http://www.oskaraichinger.at/de/musik/
 本盤はピアノ・ソロで数分の曲が21曲ならぶ。曲名はドイツ語で、逆に21から1までさかのぼるタイトルのようだ。録音は96年5月9日と10日の二日間で行われた。

 ぼくは彼の音楽は本盤しか聴いたことなく、音楽性でのコメントはできない。本盤もジャケ買いしたと思う。本エントリーも「本盤が名盤」って意味合いではなく、「こんな盤を聴いた」ってメモ書きの側面が強い。

 本盤はストイック。そしてアイディアを次々に暴れさせる。一つのモチーフを膨らませるでもなく、何か統一性を持たせもしない。ちょっとグルーヴィーに鳴ったかと思えば、一転して冷徹な世界に。ある曲でクラシカルな構成を漂わせると、別の曲では抽象的な音の散らしが現れる。

 聴くことに意味性を求めるとしたら、本盤は対極にある。それが何だか、面白くてここで紹介する。寛ぎでも刺激でも発散でも没入でも、何でもいい。ライブでなく音盤ならば特に、「どんな時にどんな気分で聴くか」って物語性や意味性がある。
 落ち込んでるときに、どんな音楽を聴くか。散歩しながら、どんな曲を聴くか。選択肢は人それぞれだが・・・流れる曲の雰囲気が数分ごとにガラガラ変わったら、そんなCDはどんな時に聴きたい?

 本盤はピアノの音色一つをもとに、楽想がくるくると変わる。寛ぎ、緊張、破綻、冷静。さまざまな感情が本盤に込められ、なおかつストーリー性は希薄だ。

 行き先も目的も無く、興味の赴くままに駅を降りる列車旅。Oskar Aichingerは本盤の録音を、そんな抽象的な列車旅になぞらえて録音した、とライナーで記す。簡単なモチーフやテーマ、コード進行のみを書いたメモを用意し、即興で曲を紡いで本盤を作ったという。
 普通に弾くだけでなく(7)ではプリペアード・ピアノにしたり、工夫を色々と施した。

 無意味で偶発的な散漫さを、意識的に作った盤がこれ。
 聴きやすいかと聞かれたら、答えに困る。熱狂的に聴きたいかと言われれば、そんなことはない。今回も、たまたま棚から取り出しただけ。次の機会に手放してしまうかもしれない。
 だが、これも音楽だ。そっけなく味わいも希薄だが、明確なインプロだ。

 最初に聴いたときは、本盤の味わいがわからなかった。でも、改めて聴いたらコンセプトの無秩序さがストンと耳に届いて面白かった。
 音楽ってなんだろう。面白さって何だろう。今回、本盤を聴きながら考えることを、すごく楽しめた。
 忙しくて心に余裕がないとき、ふっと寛いで「何か聴きたいな」と思うとき。本盤はそのたびに、違う感情を聴き手の心に浮かばせる。

 自分の感情を後付けで、音楽に込められる。そんな奇妙な自由度が本盤にはあった。長尺で続く曲にはストーリーがある。ミニマルな展開は連続性そのものが意味を持つ。
 だが本盤のランダムで多様な曲展開は、意味性を読み取るより、自らなすりつけたほうが速い。面白い。
 今、ちょっと本盤を楽しめる気分だったんだな、おれは。

 いちおうAmazonで買えるが、変なプレミアがついてしまってる。今日現在で3800円くらい。あまり積極的にお勧めな盤ではないが、ふと見かけたときに、手に取って損は無い・・・かもしれない。その時の気分次第だ、こういう盤は。


Track listing:
1. Einundzwanzig (3:13)
2. Zwanzig (2:55)
3. Neunzehn (3:35)
4. Achtzehn (2:20)
5. Siebzehn (4:22)
6. Sechzehn (2:38)
7. Fünfzehn (1:58)
8. Vierzehn (2:35)
9. Dreizehn (4:27)
10. Zwölf (1:54)
11. Elf (3:43)
12. Zehn (2:51)
13. Neun (2:38)
14. Acht (3:08)
15. Sieben (3:22)
16. Sechs (2:12)
17. Fünf (3:54)
18. Vier (3:01)
19. Drei (3:50)
20. Zwei (2:30)
21. Eins (3:32)

Personnel:
Oskar Aichinger: piano
Recorded by Josef Novotny in Meggenhofen, Upper Austria, May 9-10, 1996


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