Prince 「HITnRUN Phase Two」(2015)

 何で死んじまったんだ、プリンス・・・思いが募る一枚。

 本盤は2015年末、同年9月発売の"Hitnrun Phase One"に相次ぎリリースされた。まず、Tidalの配信専用で。"Hitnrun Phase One"はEDMに接近、プロデュースやミックスにJoshua Weltonを立てた。さらに過去に発表したシングル曲も収録も特徴だった。配信で単発発表した楽曲を、アルバムにまとめたって観点で。

 そして本盤。共通性は同様に過去の単発配信曲を多数取り入れたってこと。全く違うのは、打ち込みより生演奏を主体で、管や弦以外のほとんどはプリンスの多重録音。
 すなわちPhase Oneと明確な対比構造をみせていた。ジャケットやコンセプトの共通性を持たせたうえで。

 さらに本盤はジャケット・デザインの三つ目が示すように、"Art Official Age"(2014)とも通底する。並行した"Plectrumelectrum"(2014)とも。この2作でいえば"Art~"がEDM、"Plectrumelectrum"が生演奏路線。

 もし、仮に、プリンスが生き延びていたら・・・これら合計4アルバムを統合する、"Phase Three"があったのではないか。
 Phase Three、もしくはもっと数枚のアルバムを重ねてコンセプトを深めたうえで、新たな音楽の地平をきっと我々に魅せてくれたろう。プリンスは過去、1枚のアルバムで世界を作った。だが今回は、複数年にわたり大きな物語を作っていたはずだ。
 ああ、悔しい。ああ、惜しい。天才は、手の届かない所に行ってしまった。

 僕は本盤をリアルタイムで聴かなかった。CD発売まで待っていた。それが勿体なかった。すぐに、MP3で買うべきだった。i-tunesではすぐに、日本でも入手できるようになってたから。
 そうしたらプリンスが生き延びていたろう、なんてとんでもない理論を言うつもりは毛頭ない。
 
 「リアルタイムで、このドキドキを味わえていたろう」ってこと。ああ、もったいないことをした。

 本盤は本当に素直に聴けない。単発で発表された楽曲群も、正直なところ当時は全くピンと来なかった。ちょっと弱いかな、と。だが今は、違う。
 プリンスが死んで、なおかつポップさを敢えて回避し極端に走ることで尖鋭性を狙ったのでは、とここ一ヶ月で考えが変わってきた。その視点で聴くと、実に丁寧かつ分厚いアレンジを本盤で施してることに、今更ながら気が付いた。

 ああ、なんで死んだんだプリンス。もっとこの次を、見せて欲しかった。本当に。

 本盤では(1)、(2)、(5)、(6)、(9)が既発曲。他は最近の録音と言われるらしい。ほとんどがプリンスの多重録音で、なおかつ打ち込みの色合いは非常に希薄なところが特徴だ。

 細かいところでいうと、(3)は11年頃の作品。13年のライブで披露されてる。(7)や(13)も13年に2分間の短縮版が3rdEyeTunes.comで発表されていた。(8)や(11)も11年のライブで披露済み。(10)も2010年のライブで演奏あり。

 とすると完全新曲は(4)のみになる。アルバム、にこだわったプリンスがここ数年の総決算としてまとめ上げたのが本盤、ってことか。

 (5)では"Kiss"や"Sexy Dancer"のフレーズを織り込み、ワーナーと和解ならではの過去作をスパイスとして振り返ったアレンジも取り入れた。
 
 プリンスが創造力の枯渇に悩んだって話はなさそうだ。過去数年を総括して、次ステップへ向かう予兆であり、地ならし。それが本盤、だったんだろうな・・・。

 本盤は生演奏だけに、古びさは薄い。むしろ聴くほどに良さを増しそう。ぼくはまだ、本盤を無邪気に聴けない。個々の楽曲聴いて思うところもいろいろあるのだが、どうも冷静にまとめられない。まだプリンスの死を、消化しきれてない。
 もう少しじっくりと、本盤と向かい合いたい。

Track Listing:
1.Baltimore (4:33)
2.Rocknroll Loveaffair (4:01)
3.2 Y. 2 D. (3:50)
4.Look At Me, Look At U (3:27)
5.Stare (3:45)
6.Xtraloveable (5:00)
7.Groovy Potential (6:16)
8.When She Comes (3:45)
9.Screwdriver (4:15)
10.Black Muse (7:21)
11.Revelation (5:21)
12.Big City (6:26)

関連記事

コメント

非公開コメント