Ghazal 「Lost Songs of the Silk Road」(1997)

 ふくよかな中東アジア音楽の混淆を、寛いで聴ける傑作。

 インド音楽とペルシャ音楽の出会い。イランを源流のバイオリン風の楽器ケマンチェと、インドのシタール、タブラによるトリオ編成のバンドがGhazalだ。本盤が1st。一回限りのユニットではなく、継続性ある活動をしてる。
 今のところ、4枚のアルバムあり。最初の3枚はニュージャージーのインディ・レーベルShanachieから。最後の一枚はなんと、ECMより。タブラ奏者は4枚目"Rain"だけ、Sandeep Dasに変わった。
 2014年のライブ映像はこちら。


 本盤でも作曲クレジットはケマンチェ奏者Kayhan Kalhorとシタールと歌を担当のShujaat Hussain Khanの二人だけ。タブラは一歩下がった立ち位置か。
 Kayhan Kalhorはイラン出身。Shujaat Hussain KhanとSwapan Chaudhuriがインド出身。それぞれ伝統音楽を学んだ上で、本盤のように境界線を軽々超える音楽へ足を踏み入れ、アメリカ移住で活動しているようす。過去に音楽キャリアはそれぞれあるようだが、西洋文化圏での音盤としては、本盤がデビュー作に近いみたい。

 録音はNYで行われた。プロデューサーのBrian cullmanはSSWでもあるが、過去にフォーク系のアルバムとしてニック・ドレイクやルシンダ・ウィリアムズのプロデューサー歴もあり。どういう経緯で本盤へかかわったのか不明だが、このバンドの2nd"As Night Falls On The Silk Road"(1998)もプロデュースも担当した。

 各曲、10~20分の比較的長めで4曲を収めた。
 率直なところ東京のライブ・シーンに触れると、JAZICOやマサラを筆頭に異文化混淆のアンサンブルはさほど違和感ない。太田惠資+井上憲司+吉見征樹@音や金時とかを連想した。つまり本盤の音楽性は親しみ深い。

 とはいえ本盤での音楽は、連想とはもちろん全く異なるアプローチ。もう少し堅苦しく、それぞれの文化背景を意識した演奏っぽい。伝統音楽へどの程度のっとってるか不明だが。
 むやみにポピュラー性や現代っぽさにすり寄らず、各楽器それぞれの文化背景にのっとった感じ。だから無理やりなわざとらしさが無く、真摯に聴ける。

 サウンドの基調はうっすら影を持ち、ミニマルな風景もまとう。テンポが演奏途中で変わっても、猛スピードで疾走やバトルめいた斬り合いはない。どこか緩やかで、穏やか。厳かな香りが静かに漂う。

 それぞれの楽器が持つ伝統音楽へ敬意を払いながら、プレイヤーとしてそれぞれのテクニックや音楽言語を提示しあう。
 その一方でボーカル入りやケマンチェのソロなど、モダンなアプローチもあり。この自由度も楽しい。

 シタールとケマンチェが主体、かなあ。たしかにタブラも存在するが、ちょっと一歩引いた感じ。いわゆるジャズ的なソロ回しとも異なるけれど、ゆるやかな個々の楽器の見せ場を中心に、三者三様のアンサンブルも存分に味わえる。

 余りビートがきつくないのでアンビエントとカテゴライズしてもいいし、いわゆるワールド・ミュージックの文脈でもはまるだろう。
 とはいえ根本は、もっとジャズっぽいインプロ・セッションの立ち位置か。聴き手を寛がせることが目的ではなく、演奏スタイルそのものが雄大だ。
 涼やかで心地よい音像が、たっぷりと広がった。

Track listing:
1. The Saga Of The Rising Sun
2. Come With Me
3. You Are My Moon
4. Safar/Journey

Personnel:
Kayhan Kalhor - kamancheh
Shujaat Hussain Khan - sitar & vocals
Swapan Chaudhuri - tabla

Discography:
1997 Ghazal: Lost Songs of the Silk Road (Shanachie)
1998 As Night Falls on the Silk Road (Shanachie)
2000 Moon Rise Over the Silk Road (Shanachie)
2003 The Rain (ECM) 

   


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