TZ 7206:Yamataka Eye /John Zorn

 奔放なアイディア合戦の妙味を、コンパクトかつ楽しく味わえる傑作。

 デコボコ・ハジメ名義のジョン・ゾーンとヤマタカ・アイのデュオ。即興一発勝負のセッションでなく、録音作品として小品を12曲並べた。アイディアが詰まった、むしろコラージュ的な作品だ。

 楽器もゾーンはサックスだけでなくギターやサンプラーなども駆使する。メロディや構成は希薄で、一つのアイディアを奔放かつインプロ的に展開した。ヤマタカ・アイという稀代のキャラクターを前面に出す。絶叫シャウトにとどまらず、コミカルなヴォイスもアイは繰り出した。

 全編に漂うのは奇妙なユーモアとくつろいだ面持ち。斬り合いの緊迫でなく、むしろ遊んでるような気軽さが主体だ。

 本盤で最も興味深いのは、音楽の主導権が読みづらいところ。互いにアイディアを持ち寄ったようにも、どちらかの発想をもう一人が膨らませたようにも聴こえない。
 自然発生的に曲が産まれたか、全く別々のことをやって無作為に一曲へまとめたか。そんな無秩序で意味性の低い楽曲が並ぶ。
 
 短いものは1分くらい、長尺は(11)の18分のみ。数分のものが2曲。曲といいつつ、メロディや構成はほぼ無い。

 とっ散らかりながら、不思議と通底するムードあり。スカムなむちゃくちゃとも違う。きっちり背後に意味性を持たせた前衛音楽とも違う。
 雑音や無意味性を変に追及した、小難しさや騒々しさも無い。意外と、適当にやりながらきれいにまとめるのは厳しいのに、この二人は軽々とハードルを本盤で飛び越えた。

 単発アイディアのスピーディさだけでなく、倍音が耳に充満するドローンが滴る(8)みたいにオリエンタルで神秘的な曲もあり。
 ノイズ寄りの作品もあるが、あまり長くないためサクサク聴ける。

 なお最大の長尺(11)もフィルター・ノイズのサンプリングっぽいドローン。アイのシャウトが電気加工され、足されては広く長く伸びていった。酩酊気分たっぷり。時間感覚が希薄になり、どんどん没入していく快感だ。リズムもメロディもない。ときおり叫びの残骸がうねるのみ、あとはひたすら単音ノイズが続く。
 これまた凄い意志を持った音響作品だ。95年の時代性考えたら、かなり鋭利な発想と思う。純粋に、音色だけで気持ちいい。それをひたすら浴びることができる。イヤフォンだと、酔いっぷりが半端じゃない。轟音で聴いてほしい。

 そして最後の(12)はトイレを流す音を混ぜたミュージック・コンクレートでコミカルにしめた。

 何にも似てない、悪夢のようなサイケっぷりの音楽が詰まった。唯一無比の塊だ。
 ただし前述のとおり緊張の度合いが少ないため、楽しく聴ける。

 このナニナニ名義だと、続く盤は"Naninani II"(2004)まで飛んでしまう。ただしこのコンビで"Zohar"(1995)のリリースあり。
 ヤマタカ・アイとジョン・ゾーンは、ネイキッド・シティやデュオ・ライブでの絶叫とフリーキーなサックスの果し合いが、もっともパッと浮かぶイメージ。
 だが本盤は全く違う。もっと自由で奔放で、へんてこだ。面白いよ。

Track listing:
1. "Eep Man" - 1:07
2. "Test Tube" - 3:11
3. "Thank You For Not Thinking" - 2:36
4. "Pulp Wars" - 2:57
5. "Sticky Beethoven's Pipeline" - 1:15
6. "Laughing Eskimo" - 1:28
7. "Damascus" - 1:11
8. "Yoga Dollar" - 5:17
9. "Propolution" - 1:36
10. "My Rainbow Life" - 1:44
11. "Bad Hawkwind" - 18:13
12. "We Live" - 0:56

All compositions by John Zorn & Yamataka Eye

Personnel:
Yamataka Eye: Vocal, Drums, Toys
John Zorn: Sax, Harmonica, Guitar, Sitar, Sampler

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