G. Love & Special Sauce 「G. Love & Special Sauce」(1994)

 ヒリヒリする硬質さと、頭悪そうなルーズさでブルーズ・ラップをかっこよくキメた一枚。

 もう20年前になるのか。本盤出たころは、ベック"Loser"が流行ってたころ。ミクスチャーとサンプリング、ざらついたヒップホップなどが流行ってた。本盤はSoul Coughing"Ruby Vroom"(1994)あたりと、同じ時期な印象がある。
 ほかには"Enter the Wu-Tang (36 Chambers)"(1993)やPete Rock & CL Smooth"The Main Ingredient"(1994)も同じ箱に入ったイメージだ。ざわついてて、ラフで、いろんな要素をミックスして、ヒリヒリ乾いてる。そんな雰囲気。

 ブルーズを日本人が本当に理解できるのか。演歌をアメリカ人が理解できるのか、と同じ論理と思う。個々人の感受性が繊細さかを脇に置いて、文化背景や日常価値判断を抜きにして、大海を隔てた日本人がアメリカのブルーズを理解できるのか。本盤を聴くたび、そんな考えが頭をよぎる。
 白人のG. Loveは、どんな気持ちでブルーズを演奏してるんだろう、と。

 本盤でのブルーズは、情感を削ぎ落した。形式を取り入れつつ、雑駁にざくっと粗削りに解釈した。本来は根底にある苦さやセンチメンタリズムを潔く切り捨て、ラップ文化と豪快にまとめた。そんな感じ。

 歌詞を見ながら聴くと、歌声の譜割があまりに大胆とわかる。音程を荒っぽく揺らしながら、拍頭も気にせずラップ的に歌がフロウする。過去文化のブルーズと、現代文化のヒップホップ。さらにカントリー風味の陽気さやマッチョっぷり。それらを豪快に混ぜ合わせて、なおかつ隙を残しまくり。
 本来は緻密な計算があるとしても、音像は頭悪い男がぼやきながら吐き捨てるような仕上がりに見せかけた。

 サウンドも特異的。がさっとドライなスネアがリズムの軸を作り、野太くもグルーヴィと一本ズレたベース。かき鳴らすギターが飾ってグルーヴを出す。ベースはむしろオカズ役のほうが似合ってる。ピアノも一応クレジットされてるが、ほとんどトリオ編成で完成されたアンサンブルは、独特のクールさを作った。

 しかも演奏はパターン一発の繰り返しでなく、ころころとフレーズやパターンを変える多様性に満ちたもの。この点が、サンプリング・ループを多用するラップの手法を取り入れつつ、全く違うライブのノリを作った。

 力任せに見せかけ、緻密。多様な価値観や文化を、奔放に混ぜ合わせた傑作だ。
 本盤はほんとうに、モノクロの絵面が似合う。様々な要素を白黒にとどめてしまうパワーと強引さを象徴する意味で。

 ちなみに僕が、G. Loveで一番好きなのは3rdの"Yeah, It's That Easy"(1997)。だがG.Loveの何に惹かれるんだろう、と考え直す意味でまず本盤から聴き返してみた。

 

 本盤から"Cold Beverage"と"Baby's Got Sauce","Blues Music"がシングル・カット。アルバム未収録曲がシングルには入っており、コレクター心もくすぐられる。持ってないけど。
 "Cold Beverage"のカップリングは、本盤の(10)に加え、ライブ・テイクで"Just Like Trains"を収録。こっちは未聴で、テイクの委細は不明。

"Baby's Got Sauce"には(1)と"Just Like Trains"のライブ・テイクを収録。本盤は双方ともNYのThe Knitting Factoryで収録。"Cold Beverage"に収録の"Just Like Trains"とは、別テイクかな?
 これらのライブ・テイクはタイトさとブルーズさを増してる。スタジオ作の本盤でとっ散らかった奔放なアレンジは、計算だとよくわかる仕組みになってる。
   

Track listing:
1. "The Things That I Used to Do" – 3:35
2. "Blues Music" – 4:17
3. "Garbage Man" – 4:51
4. "Eyes Have Miles" – 5:22
5. "Baby's Got Sauce" – 3:54
6. "Rhyme for the Summertime" – 3:06
7. "Cold Beverage" – 2:33
8. "Fatman" – 4:16
9. "This Ain't Living" – 6:34
10. "Walk to Slide" – 4:28
11. "Shooting Hoops (with Mou Akoon)" – 3:31
12. "Some Peoples Like That" – 4:49
13. "Town to Town" – 3:33
14. "I Love You" – 3:32

Personnel:
G. Love & Special Sauce
G. Love – lead vocals, guitar, harmonica
Jeffrey Clemens – drums, percussion, background vocals
Jimi "Jazz" Prescott – string bass

Scott Storch – piano
Jasper – additional lead vocals

 

関連記事

コメント

非公開コメント