Impressions 「It's about time」(1976)

 過去を振り捨て新境地を狙った好ソウル・アルバム。成功しなかったが。

 インプレッションズといえば、カーティス・メイフィールド。しかし彼のレーベル、カートムから離脱し西海岸に活路を見出したインプレッションズ。オリジナル・メンバーはサム・グッディンのみになっていた。

 "Loving Power"(1976)を発表の同年にコティリオンへ移籍し、本盤を出す。えらく性急な展開だ。だが本盤の後、アルバムは本レーベルから出ない。次のアルバムは3年後、"Come To My Party"(1979)まで飛ぶ。レーベルもChi Soundと移籍して。
 少なくともコティリオンでの活動は、ぱっとしなかった。
 
 このディスコグラフィによれば、コティリオンでは5枚のシングルを残した。シングルの1枚目が本盤の(4)/(7)、2枚目がクリスマス企画で、3枚目が本盤の(2)と(6)、4枚目は本盤未収録。いちおうコティリオンも売ろうとした痕跡が見られる。

Cotillion 44210 - This Time / I'm A Fool For Love – 1976
Cotillion 44211 - I Saw Mama Kissing Santa Claus / Silent Night – 1976
Cotillion 44214 - You'll Never Find / Stardust – 1977
Cotillion 44222 - Can't Get Along / You're So Right For Me – 1977
Cotillion Dsko 103 - Dance (6:19) / Dance (6:19) - 1977 (12" - 33 1/3 Rpm Release)

 シングル2枚めはYoutubeに音源あり。ディスコ調の軽薄さが、これはこれで面白い魅力を作ってる。野太く高らかなボーカルの力も、今でも聴かせる一因だろう。
I Saw Mama Kissing Santa Claus/Silent Night
 
 後半2枚のシングルは、Youtubeで見つからず。無念。
 
 本盤に話を戻そう。8曲中6曲の作曲をMystro And Lyricにゆだねた。ミュージシャンはスタジオ・ミュージシャンを揃え洗練された響きに。弦や管も入れて、西海岸の解放感を意識しつつ、サウンドはフィリーを狙ってる。爽やかさとディスコ、もちろん当時の流行り。すべて意識して、売れ線を図ったと思われる。
 
 結果的には空回りながら、出来上がったサウンドは決して悪くない。売らんかな、のいい加減な作りでなく、きっちり愛情込めた仕上がりに聴こえた。インプレッションズらしくない、とファンがつかなかったのか。あえて今、再評価して聴きたい盤だ。
 
 なおメンバーのNate Evansは、本盤から参加した新顔だそう。シカゴのインディTwinightから72年にシングル"Pardon My Innocent Heart / Main Squeeze"をリリース。彼も本盤で西海岸に活動拠点を移し、チャンスをつかもうとしたってことか。
 

 売れるって難しい。もう一度書くが、この盤はインプレッションズってブランドを気にしなければ、すごく気持ちいいソウル・アルバムだ。メロディも綺麗だし、フィリー・スタイルの豪華なオケも良い。演奏もタイトだし、ディスコ調の流行りも抑えてる。
 バラードもしみじみ美しく、張りのあるボーカルとハーモニーの甘さもばっちりだ。

 共同プロデューサーはデトロイトのソウル・バンドThe Politicians出身、McKinley Jackson。The Politiciansでのアルバムは一枚のみ。ただし プロデューサーや作曲家としてMcKinley Jacksonは今も活動中らしい。Discogsにずらりと関連盤が出てくる。
 


 なお作曲家のMystro And Lyricとは双子のSteals兄弟のペンネーム。彼らはペンシルベニア州のピッツバーグ出身、当時はフィリー中心にいくつもヒットを飛ばしてた売れっ子だ。あえて楽曲のほとんどを彼らに任せたのも、アルバム色合いの統一化を意識したのかも。

 Mystro And Lyricのヒット曲は、スピナーズ"Could It Be I'm Falling in Love"、First Choice"Love Thang" や "Passion and Pain"、Ecstacy "One Beautiful Day"など。
 経歴がこちらで読める。
 今はDarryl Grantの"All I Need Is You Tonight"に曲提供したり、のんびりと活動を続けてるようだ。MP3がAmazonで買える。
 

Track listing:
1.In The Palm Of My Hands 4:00
2.You'll Never Find 4:37
3.Same Old Heartaches 5:45
4.I Need You 5:00
5.This Time 4:48
6.Stardust 4:26
7.I'm A Fool For Love 5:11
8.What Might Have Been 5:14

Personnel:
Performer [The Impressions] – Fred Cash (2), Nate Evans, Reggie Torian, Sam Gooden

Arranged By [Strings, Horns] – Gene Page (tracks: 5, 6, 8), Gil Askey (tracks: 1, 7), H. B. Barnum (tracks: 3, 4), McKinley Jackson (tracks: 2)

Bass – James Jamerson, Scott Edwards
Drums – Ed Greene , James Gadson, Ollie Brown
Guitar – Ben Benay, Lee Ritenour, Ray Parker, Jr.
Guitar [Solo] – Ray Parker, Jr. (tracks: 8)
Keyboards – John Barnes, McKinley Jackson, Mervin Steals, Ronald Coleman, Sylvester Rivers
Percussion – Eddie "Bongo" Brown, Gary Coleman, Jack Ashford
Alto Saxophone [Solos], Tenor Saxophone [Solos] – Ernie Watts (tracks: 4)
Trumpet [Solo] – Oscar Brashear (tracks: 2, 6)
Strings, Horns – Los Angeles Brass, Woodwind And String Sections


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