RCサクセション 「Baby a Go Go」(1990)

 何とも切ないラスト・アルバム。フォーク回帰かのよう。

 RCの最後は悲惨な崩壊だった。Gee2woと新井田耕造が抜け、春日博文がドラムとプロデュース。さらにヘンリー・ハーシュ、デイヴィッド・ドマーニッチまで。合計3人のプロデューサーを立てる事態に陥った。ホーン隊は無し。いわゆるメンバー以外は、バイオリンでムーン・ライダーズの武川雅寛がダビングしたのみ。
 なおHenry Hirschはレニー・クラヴィッツの楽曲に関与したスタッフで、ヴィンテージ機材にこだわりもつ人だそう。今はNYのWaterfront Studioを所有/拠点とする。David Domanichも同様に当時のレニー・クラヴィッツと組んでたエンジニアのようだ。

 本盤はとてもパーソナルな仕上がりで、アナログ感を前面に出した、柔らかいタッチのサウンドに仕上がった。清志郎のメロウさが強調されてる。派手で強靭なロックバンドとは別ベクトルの世界に至った。
 もともとメロウさは清志郎の世界観で大きな位置づけをしめる。けれども「ドカドカうるさいR&Rバンド」を投影した僕は、どうにも乗れないアルバムで、なんとも戸惑った記憶がある。

 なにせ時代は、バブル真っ盛りの頃だ。
 その後もさまざまなバンドを清志郎が立ち上げては潰すのも、「なぜRCを再稼働しないのか」と思い一歩引いてた。ようやく素直に聴けたのは"KING"(2003)。ソロとして猛烈なロックを提示したこの盤で、再び清志郎に惹かれた。13年もたってから、だ。
 当時も、その後も本盤"Baby a Go Go"(1990)は聴いた。そして、今も。(3)をがつんとハードなアレンジで演奏してほしい、って印象は今もあまり変わらない。ローランド・カークのアルバム名を取り入れたこの曲、昔からすごく好きだ。

 アルバム全体に漂うのは、しゃりっと歯切れ良い高音強調のサウンド。この乾いた感じがイギリス風味だろうか。
 かなり清志郎の色が強いアルバムだが、チャボも(4)を提供。切ない雰囲気に色を添えた。ここで武川の軋むバイオリンをたっぷり投入してる。

 (7)での凝ったコード進行と、にじみ出る切ない幻想性が清志郎の才能を象徴する。かなり古い曲っぽいが、本盤では一番素直に聴けた。なお名曲って意味ではやはり、(1)や(3)も忘れるわけにいかない。
 (9)ではボ・ディドリーに象徴のジャングル・ビートを採用した。けれどリズム形式を取り入れただけで、やたら乾いた空気が漂う。ダビングした白玉のエレキギターのオブリも、ビートの軽快さを殺してる。わざと、ブギーなリズムとロックなギターの混交で混沌を狙ったか。

 (10)でのサイケなフォークも今回はしみた。やたら生々しい歌声の後ろで、さまざまな楽器が現れては消える。ひしゃげたドラム・ビートを下敷きに。

 全般的にはフォークの色合いだ。アメリカのフォークを踏まえ、日本流の4畳半フォークの湿気と、カレッジ・フォークの爽やかさも混ざってる。たとえエレキギターが吼えているときでも、コードをかき鳴らすアコギのイメージが漂う。
 清志郎の譜割をまたがる雄大なメロディ使いも健在。切なくも、柔らかい雰囲気だ。二分台の曲も2曲。最長でも4分半。あまりだらだら長くせず、しゃっきりと曲を仕上げてる。

 フォークを出発点のRCは、最後にもういちどフォークに戻った・・・みたいなまとめ方は卑怯か。
 創作の過程で清志郎もチャボもRCの殻を脱ぎ捨てる必要があった。本盤でRCと決別し、清志郎もチャボも独自の路線を築いていく。

 中盤から、当時のPVが見られる。"I Like you"。


Track listing:
1. I LIKE YOU
2. ヒロイン
3. あふれる熱い涙
4. June Bride
5. うぐいす
6. Rock’n Roll Show はもう終わりだ
7. 冬の寒い夜
8. 空がまた暗くなる
9. Hungry
10. 忠実な犬(Doggy)
11. 楽(LARK)

Personnel:
RCサクセション
忌野清志郎 - リードボーカル、バッキングボーカル、ギター、ハモンドオルガン、ハーモニウム、ハーモニカ、ウクレレ、チャイニーズ・アコーディオン、パーカッション
小林和生 - ベース、バッキングボーカル
仲井戸麗市 - ギター、ボーカル、バッキングボーカル
春日"ハチ"博文 - ドラムス、パーカッション、バッキングボーカル
新井田耕造 - ドラムス(M3、M9)、バッキングボーカル

武川雅寛 - バイオリン



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