日野皓正/菊地雅章/富樫雅彦  「Triple helix」(1993)

 日本フリージャズ第一世代の三巨頭が、初共演というライブ盤。

 Triple helixとは三重らせんのこと。DNAの構造が典型的なそれだ。菊地と富樫、菊地と日野は共演盤が多数あるが、日野と富樫は無かったのか。とにかくライナーによればこの三人がステージで共演は初という。なんか意外。

 演奏は猛烈なフリー・ジャズ。ベースにジェームズ・ジナスを置き、カルテット編成のこのライブは、93年4月18日に浜松アリーナにて第二回「ヤマハ・ジャズ・フェスティバル・イン・浜松」での"スペシャル・セッション"を丸ごと収録した。

 一応、楽曲をやっている。また、アルバムでは日野の名前が筆頭に掲載ながら、たぶん誰がリーダーともいえぬセッションだ。
 (2)とアンコールの(5)が日野、(1)と(3)が富樫の作品で、(4)はモンクの曲。
 
 ぐるぐる回る酩酊の緊張感と、断片的なフレーズが飛び交うスリルが凄まじい。ウッド・ベースのオスティナートを軸に、全員が奔放なソロを漂わせた。ざっくりとソロ回しの雰囲気が残る。
 ことさら難しげにしてるわけじゃ無いとおもうが、混沌ととりとめない探りが全編を覆った。明確なテンポ・キープやアドリブを誰もが狙わない。

 もっともわかりやすい(4)が顕著だ。
 日野がアドリブを取り始めたとたん、ふわりと世界が曖昧にもやける。頼りなくひよひよと薄く漂うトランペット、きれいなレガートだが落ち着かないリズムを繰り出す富樫。菊地も不安定な和音で応えてる。

 だからこそオリジナル曲での曖昧さは奇妙なスリルを常に聴き手へ強いる。ライブの現場ならともかく、音だけだと細かい雰囲気がわからないし。
 この盤は聴くたびに、ポイントがつかめず戸惑う。そして新しい聴くポイントを見つけた気になる。次に聴くと、またわからなくなるのだが。

 なおジナスはいまも現役で活動中。本盤リリース時は27歳と若手のころ。ブレッカー・ブラザーズのメンバーで名を上げ、00年代はNYでユリ・ケインやデイブ・ダグラスなどダウンタウン・シーンのメンツとも共演を重ねた。
 2013年にはダフト・パンク"Random Access Memories"にクレジットあり。

 しかしこのジャケットや中写真を見るたび、菊地のとぼけた視線が凄い。サングラスかけた富樫のうかがい知れなさや、ダンディさを漂わす日野と対照的だ。

Track listing:
1. トライアル
2. ドクター・U
3. トワイライト・サウス・ウェスト
4. ブルー・モンク
5. ザ・サファイア・ウェイ

日野皓正:tp
菊地雅章:p
富樫雅彦:ds
James Genus:b

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