富樫雅彦& J. J. Spirits 「PLAYS BEBOP VOL. 2」(1991)

 日本フリージャズ第一世代の、凄腕スタンダード集。

 壮年期を迎えた富樫が若い時のジャズをふと振り返り、改めてスイング感と向かい合った。井野信義だけ富樫より10歳若く次世代に属するが、全員が日本のフリー・ジャズを切り開いた男ばかり。凄まじいメンツだ。
 もともと全員がゴリゴリのフリーってわけでもない。けれどもあえてこのメンツでスタンダード・ジャズと向かい合うのが痛快であり、魅力となる。

 ライナーによれば少なくとも91年2月にはこのバンドでライブをしてたらしい。
 91年6月5~7日の3日間でLP2枚分を収録、本盤は2枚目となる。なおJ. J. Spiritsのディスコグラフィは、多分以下の通り。

1991:PLAYS BEBOP VOL. 1
1991:PLAYS BEBOP VOL. 2 【本盤】
1992:LIVE 
1993:STEP TO NEXT
1995:EXPLOSIONS
1995:UPDATE

 J. J. Spiritsの92年ライブ映像。
 

 既に"Live"でオリジナル曲中心のステージになり、"STEP TO NEXT"もオリジナル曲集。あっというまに当初のコンセプトは薄れている。"EXPLOSIONS"で再びスタンダード集に戻ったが、"UPDATE"でオリジナルばかりと、選曲だけならばブレたバンドだ。

 しかし演奏は極上。そしてスタンダードと向き合うコンセプトで、ばりばり演奏を始めたころの貴重な記録が本盤だ。

 ある意味、スタンダードのハードバップ風なアレンジだが、演奏のスタイルは全く違う。流麗なピアノとタイトなドラムを軸に、恐ろしく洗練されて整いつつ、スリリングなサウンドが出来上がった。
 柔らかくも透明で硬質なタッチの佐藤允彦が奏でるピアノは、テーマに縛られず奔放に旋律を展開させる。富樫も別に4ビートを律儀に刻むわけじゃ無い。あっという間にパターンから解放され、好き放題自由にスネアのアクセントを入れ始めた。

 拍から解放され、奇数拍偶数拍の表裏、まったくこだわらずにぽんぽんと軽やかにスネアが鳴る。シンバルだってタイトなレガートで響きつつ、一定のリズムに留まりやしない。
 井野のベースががっつり支える格好だが、別に彼だって大人しくランニング・ベース弾いてるわけじゃ無い。オスティナートがアドリブ・フレーズに変わり、むっくり動き出す。
 ベースとピアノが場面ごとに支える格好かな。なにせリズム・キープは富樫の繊細なスティックさばきで、歪むことが無い。自由に叩きながらも、スイングする強靭なドラムは極上だ。フリーではあえてノリを揺るがすとしても、ここでの富樫は手数多く奔放ながらも、グルーヴをつかんで離さない。
 
 そんな暴れ馬でめちゃくちゃ安定したアンサンブルの上で、峰はベテランの貫禄。どんな展開でも慌てることなく、独特のかすれるサブトーンを存分に漏らしながら、朗々と滑らかなテナーを吹いた。いくぶん音色を締めて硬質に響かせてる感じだ。

 富樫の凄さはそこかしこにあふれてる。例えばフレーズに沿ってバンドがびしばしキメを入れる(3)で、ドラムは片端からキメを外しテーマへ絡むように違うフレーズを入れまくる。そしてテナーのソロに向かったとたん、超心地よいシンバル・レガート。この二面性が素晴らしい。ピアノのバックでは拍頭をちょっと16分音符くらい前へずらして、ころころとリズムを弾ませた。
 スタンダードのはずが、フュージョンみたいな爽快感にあふれてる。和音使いのせいか、メンバーのブルーズから外れたスイング感のゆえか。
 
 なお富樫はこのバンドにこだわったらしく、逝去する07年まで活動を継続、ベースは途中で加藤真一に変わった。富樫追悼ライブでJ. J. Spirits再結成のドラムを叩いた村上寛のブログに記載あり。
http://ameblo.jp/hmd314/entry-11913357129.html
 2013年の追悼/再結成ライブ映像。

Track listing:
1. Monk's hat blues
2. I'll remember April
3. It might as well be spring
4. On a slow boat to China
5. If I should I lose you
6. Everything happens to me
7. Joy spring
8. Bemsha swing

Personnel:
富樫雅彦:ds
峰厚介:ts
佐藤允彦:p
井野信義:b

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