菊地雅章 「Poo-sun」(1970)

 A面のモーダルとB面のコーダル。鋭いアイディアが溢れた傑作。

 "Bitches Brew"(1970)の翌年、か。ナベサダのバンドで活躍し、68年に日野皓正との初リーダー作を発表した菊地。この前の2ndリーダー作"再確認そして発展"(1970)で掴んだダブル・リズムを拡大して、マイルス流の混沌をがぶがぶ咀嚼し独自の色に塗り直した一枚だ。

 A面は20分にわたる代表曲(1)と、おまけのように(2)。いっそ(1)だけでA面全部を占めて欲しかったが、時代が許さなかったか。それとも一曲でも多く、収録限界のぎりぎりまで、菊地が音楽を封じ込めたかったか。
 (2)も(1)と同様、混沌な世界がきめ細かく広がる。いまだに新鮮な香り漂う曲。

 B面の(3)以降は、コーダルな楽曲を集めた印象だ。スピーディに滑っていく(3)はダブル・リズムのハイハット応酬が気持ちいい。金属の細片が降り注ぐかのよう。エレピのソロが軽やかに上を滑っていく。続く生ピアノの引っかかるアドリブも味わい深い。ピアノのほうが菊地かな?

 一転してロマンティックで密やかなバラード、(4)。峰の鋭いソプラノ・サックスが涼やかに空気を切り裂く。マレット使いのドラムが刻みだけでなく、アクセントをあちこちにつけるパーカッシブな音作りできめ細かくパターンを揺らした。
 中央にピアノが鋭利な輝きで鎮座し、サックスが動きを付ける。さらにリズム隊が鮮やかに空気を散らす。素敵な音空間だ。

 がっつりファンキーな(5)は本盤唯一、菊地雅洋の作曲。あとはすべて雅章のオリジナル。本盤に参加していない雅洋の曲を取り上げるあたり、よほどのお気に入りか。12分越えの長尺で、たっぷり聴ける。
 冒頭から不穏なオルガンとベース・ライン。ミニマルに盛り上げて、炸裂せずサックスを軸のフレーズを決めていく。和音がスリリングだ。
 ソロが始まると左の菊地と思しき硬質なエレピのソロと、右ではオルガンのファンキーなうねりが並列進行。水と油にならず、調和して突き進んだ。おもむろに中央でテナーのソロ。決まった形式でなく、新たなかっこよさを作った。
 サックスと対話するようにうねる、オルガンのフレーズもぐっと耳に残る。

 テンポがぐいぐい揺れるピアノ・ソロな(6)。わずか一分をあっという間に駆け抜けた。独奏なこの曲が一番、菊地の鋭いテンポ感が良くわかる。

Track listing:
1.DANCING MIST
2.THANATOS
3.E.J
4.YELLOW CARCASS IN THE BLUE
5.PUZZLE RING
6.MY COMPANION
Recorded Aug~Sep/1970

Personnel:
菊地雅章(p,elp)
市川秀男(elp,org)
峰厚介(ss,as)
池田芳夫(b)
日野元彦(ds)
村上寛(ds)
岸田恵士(perc)

関連記事

コメント

非公開コメント