Sonny Rollins 「Falling in love with jazz」(1989)

 話題作りと身内同士。それぞれでロリンズがどんな表情見せるか、露骨な違いを味わえる面白い盤。もちろん身内で仲良く、が安心して盛り上がった。

 「ジャズで恋に落ちて」ってのも、ベタなタイトルだ。本盤は3種類のセッションをまとめた。片方のセッションでブランフォード・マルサリスを招いたのが売り、かな。

 ブランフォードはこのとき、売り出して一段落たったころ。80年代にデビューし数枚のリーダー作を発表の時期。手堅く上手いミュージシャンって名が通ってたはず。スティングのアルバム参加が85年頃だから、本盤はさらにそのあと。つまりロリンズに若手バリバリの脂っこいところをぶつけた、話題性狙いが明らか。
 とはいえブランフォードは大人しい演奏に留まる。そもそもバックの演奏も洒落たカクテル・ジャズで、バトルよりも優雅な世界を狙った。

 ブランフォードが参加セッションは(1)と(5)。ピアノがトミー・フラナガン。なんというか話題作り狙いを重ねてきた感じ。さらにベースはボブ・クランショーじゃない。Jerome Harrisだ。ドラムはJeff Watts。片腕のクランショーも外され、ロリンズは新しい何かを狙ってたのかも。そのあとのアルバム見る限り、特段、このセッションが膨らむことは無かったが。フラナガンと一作飛ばした次の次、"Old Flames"(1993)で共演するくらい。

 そもそも85年以降のロリンズは二年に1枚くらい、とアルバム発表ペースも落ちてきた。年齢を重ね、ゆっくりペースでのんびり挑戦せず自らのブランド・イメージを守ってた感じ。

 さて、2セッション目。2か月後の8月に(2)と(3)が録音された。以降はクランショーがエレべを務める。前作でベース役のハリスが、本セッションではエレキギターを弾く。くいーんとサスティンさせるカントリー寄りの演奏だ。
 ドラムはジャック・ディジョネット。安定した細かいシンバルさばきで、繊細なリズムを提示した。鍵盤は70年代後半から共演を続けるMark Soskinにかわる。あからさまな話題作りセッションが終わり、ディジョネットの着実なビートを軸に、じっくりと演奏した。

 なおアルバム全体を通じて、ロリンズのサックスは順調だ。張りのある太い音色を、柔らかなリード使いでふっくら吹く。アドリブも迷いなく、どんどんとメロディがつながる。手癖に留まらぬ魅力あるフレージングが、さすがロリンズ。
 テンポを変え、連符の譜割でリズムを揺らす。時に跳躍する音域変更で変化をつけて、アクセントや音色の工夫でニュアンスを込める。さまざまなテクニックで飽きさせぬソロを披露した。

 本盤向けで最後のセッションが翌月。(4)、(6)、(7)を収録した。
 曲が足りなかったとは思えぬ。もう一歩、付け加えたかったと読もう。アウトテイクは無いのかな。今のところボートラ付きで再発するほど、本盤に再評価の光は当たってない。
 セッションのメンバーは、これまたハウス・バンドのClifton Anderson(tb)を招いた。馴染んだメンツで演奏を重ねようって、ロリンズの作戦か。あとは8月のセッションと変わらない。
 
 2管編成で、なぜかラテン風味が強調された。演奏は心なしか本盤のセッション中で一番、溌剌としてる。ロリンズのオリジナル(6)と(7)も投入、よけいにかも。
 そうか、ロリンズがプレイヤーにとどまらず作曲家としての要素も加えたく、3回目のセッションに至ったのかも。

 演奏は3回目のセッションがベスト。お行儀良いブランフォードとの共演よりも、気心知れた仲間たちとのほうが、このときのロリンズに似合ってた。

Track listing:
1. "For All We Know" (J. Fred Coots, Sam M. Lewis) - 7:42
2. "Tennessee Waltz" (Pee Wee King, Redd Stewart) - 6:18
3. "Little Girl Blue" (Lorenz Hart, Richard Rodgers) - 7:41
4. "Falling in Love with Love" (Hart, Rodgers) - 4:49
5. "I Should Care" (Sammy Cahn, Axel Stordahl, Paul Weston) - 7:33
6. "Sister" - 7:03
7. "Amanda" -5:47

Recorded in NY on June 3 (tracks 1 & 5), August 5 (tracks 2 & 3) and September 9 (tracks 4, 6 & 7), 1989

Personnel;
Sonny Rollins: tenor saxophone
Branford Marsalis: tenor saxophone (tracks 1 & 5)
Clifton Anderson: trombone(tracks 4, 6 & 7)
Tommy Flanagan: piano (tracks 1 & 5)
Mark Soskin: piano (tracks 2-4, 6 & 7)
Bob Cranshaw: electric bass (tracks 2-4, 6 & 7)
Jerome Harris: electric bass (tracks 1 & 5), guitar (tracks 2-4, 6 & 7)
Jack DeJohnette: drums (tracks 2-4, 6 & 7)
Jeff Watts: drums (tracks 1 & 5)

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