Dyke And The Blazers 「So Sharp!」(1991)

 ファンキーの片鱗を育てられず、時代に乗り切れなかった。アリゾナ州フェニックスのローカルR&Bバンドの再発コンピ。

 まず12曲入りLPで英KENTが83年にリイシュー。さらに全24曲に増やし改めてCD再再発が本盤となる。本盤は曲順が抜群だ。録音時代順に並んでおらず、アルバムとしてのメリハリを生かしてる。
 たとえば(14)の67年録音と(15)の71年録音。バンドの極初期と最終時期の双方が一気につながる。ところが(15)は妙に荒っぽい音で録音されており、ぱっと聴きではさほど違和感ない。この辺がKENTによる曲順の妙味。

 逆に時代順に並べ替えると、このバンドの変遷が明確に音から味わえて面白い。
 アルバム全部の曲を時代順に並べかえると、違う印象になる。(15)はいったん70年に華やかさを狙い、もう一度原点に返ったかのよう。

 なお彼らの音源は、英BGPが2枚組CDの33曲入りのボリュームへ増やし、07年に再発あり。さすがBGP、掘るなあ。
 左がKENTで右がBGP盤。
 

 リーダーのArlester "Dyke" Christianはもともと、ベーシスト。オージェイズのバックバンドで演奏してた。ところが途中で首になったのか、オージェイズのみ移動してしまい、バンドはアリゾナへ置きざりで仕事がなくなってしまう。旅費稼ぎにバンドのメンバーがダイクを前面に出して結成が、このバンドだそう。
 Dykeはボーカルに専念する。写真によれば2saxに2guitar、ウッドベースにドラムの編成で鍵盤はいないみたい。(8)ではオルガンっぽい音がうっすら聴こえもするが。
  
 地元のプロデューサーに見初められ最初に発表シングルが"Funky Broadway"(1966)。ライナーによれば最も初期に"Funky"をタイトルに冠した一枚とある。この曲はウィルソン・ピケットが同年にカバー、ヒットさせた。


 Dyke and the Blazersの音楽性は、ファンキーに盛り上がるR&B。ベースとドラムがタイトに跳ね、特にベースはメロディアスなあおりを入れる。ギターがシャープにリズムを刻み、サックスがロングトーンで彩った。ややこしいことやコンセプトを設定せず、ごきげんに踊るためのバー・バンドだ。
 ほとんどの曲が似たような感じ。鋭く叫ぶダイクの歌が売りで、タフなライブを聴かせそう。

 実際、レコーディングでは15分くらいのジャムを続け、そこから編集してシングルにまとめたともライナーにある。10分に及ぶミディアム曲(22)がその片鱗か。特に盛り上がり無く、ライブならではの魅力とは思うが。
 なお68年の(16)は歓声聴こえるけれど、どうにも疑似ライブっぽい。実際はどうなんだろ。

 69年の録音はきれいにまとまり、バンドのメリハリも聴ける。でもその数年前の荒っぽい録音とは微妙に違う。分離良く音がきれいならばかっこいい、ってわけでもないのがR&Bの不思議なところ。
 (12)でアイズリー・ブラザーズの"It's your thing"をカバー。アイズリーに無い頑固な骨太さを楽しめる。リズムの重たさも武骨な迫力だ。

 後年にダイクは単独でLAに行き、一流スタジオ・ミュージシャンとのセッションも行う。本盤でも(23)、(24)で聴ける。弦や鍵盤まで入った演奏は上手いが、さすがに厚塗り過ぎ。中途半端なソウルに仕上がり、彼らの持ち味とは違う世界に行ってる。
 音楽性の圧倒的な個性と、自己プロデュース力が無いと、残念ながら凡庸になってしまう。そんな残酷な様子をCD一枚で楽しめる。
 やはり本盤の魅力は野太いベースとシャープなホーンやギター、そしていぎたなくシャウトするダイクの歌声。それらが融合したパワフルさにある。

 最終的に、8枚のシングルと1枚のLPを出してバンドは活動を終えた。年代でいうと66~70年。音楽性はファンクになり切れぬR&B。バーで盛り上がりそうな音楽性で、白人受けするポップさも、より黒く潜るファンキーさにもなり切れない。そのへんが中途半端で、ローカル・バンドの限界かもしれない。

 ちなみにJBの"Papa's Got a Brand New Bag – Pt. 1"が前年の65年。"Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine, Pt. 1"が70年。目端が効く、もしくは才能あふれるトップスターとの差は歴然とある。

 今の時代はインターネットがあり、ローカル・バンドも違う展開が可能ではある。その一方で、アメリカの広さでローカル・バンドって位置づけも厳然と存在と思う。今現在、ぱっとアリゾナのバンドをいくつ挙げられるかって話だ。
 このへんは実際にアメリカに行ってみないと、ピンとこない。距離感とかビジネス規模とか、情報の流通とか。ましてや60年代後半の話だしな、これは。
 
 きっちり音盤を残して後年に再発されるぶん、彼らには何か、があった。けれども今、語られることは少ない。いかにアメリカの層が厚かったか。時代を超えて聴かれるミュージシャンとは、と、考えた盤だ。
 彼らの音楽そのものは、ややこしいこと考えずビール片手に盛り上がればいいんだけど。

 往年のダイクの映像はないのかな。これは70年と活動後期、あて振りか。


 AmazonみてたらMP3でオリジナルLPの再発や、レア音源集と銘打った2タイトルあり。けっこう色々再発あるな、このバンド。
  

Track listing:
1.So Sharp 2:53
2.Don't Bug Me 2:37
3.Funky Broadway Part 1 2:39
4.Funky Broadway Part 2 2:53
5.Shotgun Slim 2:21
6.City Dump 3:04
7.My Sisters And My Brothers 2:21
8.Funky Walk Part 1 3:09
9.Funky Walk Part 2 2:31
10.Uhh Part 1 2:04
11.Uhh Part 2 2:14
12.It's Your Thing 2:32
13.You Are My Sunshine 2:51
14.Broadway Combination 2:51
15.Stuff 2:05
16.Funky Bull Part 1 2:14
17.Funky Bull Part 2 2:42
18.Let A Woman Be A Woman - Let A Man Be A Man 2:43
19.We Got More Soul 2:45
20.The Wobble 2:40
21.Uhh (Edit) 2:50
22.The Wrong House 10:03
23.Runaway People 2:24
24.I'm So All Alone 2:53

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