Phish 2013-07-06

 Phishのライブ音源をランダムに聴いてみる企画。

 本項は13年7月6日のNY公演3daysの二日目。2ndセットで"Architect"が初演された。Phish.netでは"Tube", "Split Open and Melt", "Carini"のジャムが高く評価されてる。
http://phish.net/setlists/?d=2013-07-06

 会場はキャパ2万5千人の野外劇場らしい。2013夏ツアーの3日目にあたる。
 ぼくは解散前くらいにPhishを良く聴いてたが、最近はさっぱり。今夜のレパートリーは、新旧バランス良い選曲に見える。

 "Undermind"(2004)所収の"Crowd Control"で幕を開け、しょっぱなから派手に盛り上がり、スピーディな展開へ。続く"Chalk Dust Torture"("A Picture of Nectar"(1992)では観客が楽しそうに歌ってる。するすると滑らかかつ、伸びるギターソロがさっそく炸裂した。

 引き続き昔のレパートリー、"The Wedge"("Rift"(1993))へ。出音は混ざっちゃってるが、ハーモニーがきれいに決まってる。華やかさは抑え、がつっとこもった感じ。ドタスカとドラムが弾み、ベースが絡んでいく。歌より演奏の組み合わせのほうが楽しい。終盤はジャムに雪崩れた。

 "Funky Bitch"は米ブルーズマン、Son Sealsのカバー。

 Phishでのスタジオ音盤化は無いが、ライブでは86年と初期から時々演奏してる。音盤化は"Hampton Comes Alive"(1999)が初。ずんずんずん、と弾むリフが特徴だ。ここでも観客が大歓声だな。
 派手なオルガン・ソロが炸裂した。ぶいぶいと力押しでフレーズが溢れてく。歌を挟んでのギター・ソロは豪快に盛り上がりつつも、鍵盤と混ざってうねった。

 "Heavy Things"("Farmhouse"(2000))くらいまでが、僕がPhish聴いてたころ。カントリータッチで弾むフレーズから、当時を思い出した。無伴奏で軽く歌うところ、ポップなメロディ、懐かしいな。歌声がバックと乖離して滑るかのよう。ピアノのソロがファンキーに跳ね、ギターにつながっていく。明るい鍵盤のフレージングに心浮き立ち、引っ掛かりながら駆けるギターは酩酊気分で足を止めさせた。
 ドラムはどちらの立場ともつかぬ、手数多い賑やかな叩きっぷりを続ける。一気にサクッと曲が終わった。

 続く"Bug"("Farmhouse"(2000))も同じアルバムから。テンポを落として、しっとり気味に。刻むギターとハイハットと鍵盤がちょっとちぐはぐだ。サビのフレーズは観客のシャウトで支えられる。少しばかりバタついた演奏。終盤にギター・ソロのジャムに向かうが、わずかに堅苦しい感じがした。

 "Bouncing Around the Room"("Lawn Boy"(1990))も、昔ながらなPhishのレパートリー。ピアノやドラム、ベースは鳴ってるが、アカペラの演奏みたいにシンプルなアレンジに聴こえる。メンバーのハーモニーがむにゅむにゅとうねり、メイン・ボーカルが爽やかに突き抜ける構成だ。
 このテイクはちょっと煮え切らないが、シンプルなグルーヴだけはきっちり提示した。16分音符を刻むギターのフレーズが続いていく。

 続く"Tube"はスタジオ録音なかったんだ。90年の発表。トレイの作品ってイメージあるが、作曲はトレイとフィッシュマンの共作。
 すぐにジャムへ向かう楽曲で、ここでもギターがもごもごとフレーズをばらまいた。サイケな展開だが、突き抜けずぐるぐると内にこもった。
 間をおかず"Julius"("Hoist"(1994))へ。これも昔なじみの曲。畳みかけるブギっぽいリフがかっこいい。滑らかなビートなんだけどな。ギターソロが延々続くけれど、どっかではじけない。

 なんかもやもやしてるうち、ギター・ソロも後半へ。ちょうど5分半を過ぎたころ、ここからピクンとはじけた。急に、気持ちよくなってきた。フレーズが跳ねる。ドラムが勇ましく背中を押し、ベースがじっくりと低音をランニングさせた。オルガンがぐいぐいと鳴る。

 そして問題の"Split Open and Melt"("Lawn Boy"(1990))へ。1stセット最後の曲、18分半にわたって演奏された。確かにすごいな、このテイク。
 すでにPhishのノリが身体を巡ってるせいか、軽やかなドラムのビートからして最高だ。ヘンテコな和音でギターとピアノが音を重ねていく。ごちゃごちゃに雪崩れるリフ、ダレ具合がかっこいい。

 唐突にピアノが飛び出す。ギターと無秩序に絡み、それでいてバランスばっちり。アカペラのハーモニーから、砕けた雰囲気に。寛ぎながらも崩壊しない。着々と曲が進行し、あいまにさりげないフレーズが一瞬挿入。なんとも冴えてる。
 5分くらいからの、もごっとしたギター・ソロが良い。長いフレーズで緩やかに登場し、空気を滑らかに伸ばしていった。波打つ雰囲気が素敵だ。やがて妙な響きに変化した。でも心地よさは、変わらない。
 
 鍵盤が前へ出て、ギターと絡む。ベースがギターとフレーズを合わせ、ノービートで溶けた。まさにジャムならではの醍醐味な瞬間だった。
 ギターが緩やかなフレーズを膨らませ、ベースが踊る。ギターと混ざりドラムが涼やかにシンバルを刻んでタム回しへ。鍵盤が埋めた。4人の演奏がふうわりと盛り上がっていく。

 16分過ぎでいったんタレて、ある意味強引にエンディングへ。本人らも、その時のジャムに手ごたえあり余韻を楽しんでたのかも。

 

 さて、2ndセット。ほぼ全曲、メドレー演奏された。
 "Backwards Down the Number Line"("Joy"(2009))で始まる。この辺は聴いたことが無い。爽やかなロックだな、って印象だ。中盤でギター・ジャムに。前セットの盛り上がりを引きずり、軽快なギターソロが溢れる気持ち良い瞬間だ。
 ドラムが明確にビートを提示し、パワフルさを強調した。

 昔なじみの"Tweezer"("A Picture of Nectar"(1992))へ。大味な盛り上がりで、きっちり破綻無く楽曲は演奏した。ちょっとここで、魔法が溶けてしまった。
 この曲も10分くらいの長尺。中盤で幻想的なジャムが始まる。悪くないんだけど、さっき覚めたばかりで、すぐさまの熱狂へ戻れない。
 
 ザクッとエンディングを処理して、間をおかず"Sand"("Farmhouse"(2000))につなぐ。ドラムが着実にビートを刻んだ。もやっとカントリー的なジャムが始まるが、少しばかり手慣れ過ぎ。サイケな展開目指しつつ、カッチリ決まった。
 だけど6分半過ぎのザクザク刻みあう4人の掛け合い聴いてたら、また気持ちが盛り上がってきた。ペイジのオルガンがロングトーンを提示。特に音程に変化なくたって、かっこよさは滲んでくる。

 いったんコーダを決めて、次の曲へ。その"Carini"はスタジオ録音されてないんだ。97年にライブ初演された。アルバムだと00/9/14公演を丸ごと収録した、"Live Phish 03"(2001)が初音盤化だそう。
 12分もの長尺で、一通り歌を歌った後に混沌なジャムへ突入した。コーラスのリフレインがピアノの連打するジャムへ滑らかに変化。この辺の自在っぷりは見事なもの。この曲では鍵盤がまずジャムの主役をとった。オブリでエレキギターが重なる。
 鍵盤のフレーズを引き継ぐ形で、ギターが緩やかな雰囲気のソロを始めた。やがて裏拍で跳ねていく。
 1stセット"Split Open and Melt"でも同じだったが、ジャムが盛り上がると尺が長くなってぐいぐいと即興でイメージを膨らませていった。
 
 すごく滑らかに次の曲へつながった。
 さて初演の"Architect"は本ライブの前年に出た、トレイのソロ"Traveler"(2012)に収録。爽やかなメロディと構築されたアレンジの曲。観客は騒ぎっぱなしだが、いわゆる初演の凄さに燃えてるというより、ノリで盛り上がり続けてるかのよう。Phish側も初演の緊張や勿体ぶりは無く、ごく普通に演奏した。

 しっかり曲間をとった、次は"Wilson"。これもスタジオ録音は無しか。86年から演奏の超定番で音盤は"A Live One"(1995)が初、とある。前曲で新鮮味を出しといて、次に観客とのコール&レスポンスで親しみ増して盛り上がる演出だ。
 ギターのストローク一発で、観客から豪快な"Wilson"が始まる。この辺はもう、手慣れたもの。あまりややこしい展開やジャムはしない。

 いぎたないシンセの音色で繋げたのは、スティーヴィー・ワンダーのカバー、"Boogie On Reggae Woman"。87年からPhishはステージで演奏してる。音源化は"Hampton Comes Alive"(1999)が初だ。
 あまり崩さず、ストレートなカバー。中盤でトレイのギター・ソロがスマートに歪んだ音色で広がるくらいか。しゃかしゃかとシェーカーが賑やかに鳴り、リズムを軽やかでグルーヴィーに盛り上げた。後半はパターンをキープしつつ、ジャムに向かう。

 この日の演奏はどれも、先の12年秋ツアーで演奏しており、すごく久々っていう意外性は無い。"Architect"初演で充分ってことか。
 
 2ndセット最後。"Possum"。これまた"Hampton Comes Alive"(1999)で初音源化、85年からの定番曲。この日は最後、耳馴染み深い曲でまとめてる。
 前曲がフェイドアウト気味に終わり、この曲へ。ぐっと溜めて炸裂した。ブルージーに決めてフレーズ最後で尖った鳴らしを出す。サビで階段状に盛り上げては、開放した。
 最終曲ってこともあってか、ギター・ソロはちょっと長めでノリを維持した。6分半過ぎでいったんテンポを揺らして目先を変える。比較的あっさりと、ライブ本編を終えた。
 
 アンコールは"Show of Life"("TAB at the TAB"(2010)、トレイのソロから。彼の名義だと、メロウさが増すなあ。かっちりまとまって、ジャムというかPhishアンサンブルの妙味が無くとも成立する。よりトレイのエゴがでているためだろう。
 ギター・ソロの場面も、心なしかトレイがぐっと前で目立ってる。

 最後の最後は定番曲"Tweezer Reprise"("A Picture of Nectar"(1992))より。本編よりもアンコール込みで大団円を演出した印象あり。
 スケール大きくアンサンブルを広げて、気持ちよく盛り上げた。だがあまり引っ張らず、すぐさまコーダへ向かう。

 しめて2時間40分。ふう、感想もけっこう長文になったな。

【Setlist】
2013-07-06 Saratoga Performing Arts Center,Saratoga Springs, NY 
Set 1:

01. crowd
02. Crowd Control >
03. Chalk Dust Torture
04. The Wedge
05. Funky Bitch
06. Heavy Things
07. Bug
08. Bouncing Around the Room
09. Tube >
10. Julius
11. Split Open and Melt

Set 2:

01. crowd
02. Backwards Down the Number Line >
03. Tweezer >
04. Sand >
05. Carini >
06. Architect
07. Wilson >
08. Boogie On Reggae Woman >
09. Possum

Encore:
10. encore break
11. Show of Life >
12. Tweezer Reprise

 なおこの日の公演は映像も残っている。
 

Performers:
Trey Anastasio:g,vo,
Page McConnell : key
Jon Fishman : ds
Mike Gordon : b

 このページに、曲目リストが載ってた。それぞれ、客入り音楽、休憩中の音楽、客出しの音楽ってことか。
http://phish.com/tours/dates/sat-2013-07-06-saratoga-performing-arts-center/
 毎日、この曲目も違ってたみたい。良くここまで記録が残ってるな。Phishのファンはバカ騒ぎってイメージもあるが、こういう緻密なマメさもある。

WALK-IN MUSIC
Lord Huron - Lonesome Dreams

Caitlin Rose - The Stand-In

Chuck Berry - Hits Vol I


SETBREAK MUSIC
Dur-Dur Band - Volume 5


WALK-OUT SONG
Dazz Band “Let It Whip”

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