Prince 「Dirty Mind」(1980)

 全30分、デモテープみたいに無邪気なファンクの盤。


 実際、デモテープでプリンスの意図とは異なり発売された、って噂もあり。前作までの繊細さから、スキャンダラスな色を増していく。特にB面は極端なセクシャリティを強調し、異端の道を進み続ける。ナルシスティックな印象もあるのだが、どこかユーモアを残す。自己の世界を守りつつ、見世物なことを意識とでも言おうか。

 ついに数曲のみといえ、Dr.FinkとLisa Colemanを演奏者にクレジット。少しずつ自分の殻に他者のスペースを作り始めた。デビュー盤で弦も足しており、別にこれまで音源に他人の演奏を排除なわけじゃ無いけれど。クレジットでも、殻を開け世界を広げ始めた。
 下積み時代ながら、ぐいぐいと独自サウンドへ進化が加速する。面白いことにプリンスは緻密なアレンジが上手いのに、シンプルな音構造で強烈な個性を出す。

 歌詞はどんどん過激になり、特にB面が凄まじい。だが楽曲は1分半や2分強など極端に短い。この辺もデモテープっぽい。粗削りさがそこかしこであふれた。

 (1)の打ち込みっぽいドラムは、生だろうか。プリンスのドラムは跳ねず、ベタッと着実に刻むイメージあり。ホーンを模したシンセとギター、シンセっぽいベース。ダビングのコーラスで描かれるファンクは、猛烈に荒っぽい。たしかにデモテープと言われても不思議でない大ざっぱさだ。
 けれどもプリンスの躍動感は、この手のシンプルなアレンジでこそ映える。
 ファルセットと地声を絡ませ、幅を出すボーカルの処理も素晴らしい。

 同じく安っぽい響きだが、いくぶん凝ったアレンジが(2)。この曲はむしろ、スカスカなトラック構成が不思議な大胆さ。前の盤ではもっと音でアルバムを埋め尽くしてた。アコギや多重ボーカルで単調さを回避するが、平歌でのあまりに素朴で隙一杯の音構造が大胆だ。

 ベースとギターでリフを重ね、キーボードで飾る(3)。これまたシンプルな音数だが、跳ねるベースのフレージングが頼もしく、荒いが華やかさを持つ。これはすべて手弾きだろうか。途中で微妙にテンポが走っては元に戻る気がする。多重録音だし、そんな揺れるリズムをダビングでキープできるはずもない。きっちりクリック管理だろうけど。
 ここでも地声を巧みにハーモニーに混ぜ、変化をつけている。

 (4)はアイディア一発で弾き語ったような、フュージョン寄りの爽やかな曲。ファルセットがバックに埋もれそうな音域だ。これこそ地声できっちり歌ってほしい。
 エレピの弾き語りと思わせて、実はギターや鍵盤が実に丁寧に重ねられてる。中盤でフランジング気味にシャウトを入れたり、コーラスでびしばしキメを入れたりと、実に繊細で細かいアレンジだ。荒々しい本盤の中で、実は精密な仕事ぶりが光る佳曲。

 後年も代表曲たり得た(5)は、シンプルなファンク。本盤冒頭のデモテープっぽさとは全く違う、シンプルだが構築されたサウンドだ。ファルセットを使いつつも、さりげなく地声っぽさを漂わせたり、甲高いシャウトに昇華したりとボーカルのテクニックも隅々まで気を配った。
 バタつき気味ながら、キックをきちんと響かせるドラミングもかっこいい。どことなく整然と刻む生真面目さもあり。
 終盤で一瞬、ぐっとテンポを落とし気味に聴こえるんだよな・・・実際のところはどうだろう。

 (6)になると、やっつけ気味の荒っぽさ。(5)の緻密さと対照的だ。歌詞が埋もれ気味なのは、わざとか。シンプルなビートは、打ち込み。女性ボーカルを挿入でセクシャルさを強調した。
 サビでいきなりボーカルが前にミックスされ、少なくとも盛り上がりを見せる。終盤でやたら派手なアナログ・シンセっぽい鍵盤で暴れる茶目っ気もあり。ここではスタジオ多重録音ながらも、ライブを意識したサウンドづくりをしてる。

 わずか1分半の小品でせわしない(7)は、かなりかっこいいアレンジ。歌詞を敢えて聴かせぬように埋もれ気味のミックスにしつつも、跳ねるドラムと迫るギターやベースの絡みが凄い。さらに加速を強調させるサビ前のひしゃげた和音感も良い。
 多重ボーカルは様々な声質を操って重ね、複雑な気持ちを表現した。

 あっさり終わってアルバム最後の(8)へ。メドレー式にせわしなく展開する。この曲も(4)と同様、アレンジはシンプルだが考え抜かれ緻密なもの。鍵盤中心だがベースやギターも瞬間的に飛び出しては重なり、多層的にグルーヴを構築した。
 メロディや曲構造がシンプルなだけに、多重ボーカルや多層リズムの良い味わいが目立つ。

 プリンスはこの後、ロックとの融合にどんどん加速する。本盤より前は意識的に五目味で黒人音楽に白人要素を混ぜていた。
 そんな中、無邪気にファンクをずぶずぶ表現した、意外と分岐点な盤。
 次の"Controversy"(1981)で、プリンスのサウンドはいったんの完成をみせる。いわゆる"パープル・レイン"サウンドだ。軽やかに響くタンバリンみたいなスネアや、シンセ強調のアレンジ・スタイル。そしてハードかつスピーディに歪んで切り裂くエレキギター。

 その寸前、模索しつつも素直にファンクと向かい合ったのが、本盤だ。

Track Listing:
1.Dirty Mind 4:11
2.When You Were Mine 3:44
3.Do It All Night 3:42
4.Gotta Broken Heart Again 2:13
5.Uptown 5:30
6.Head 4:40
7.Sister 1:33
8.Partyup 4:24

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