George Clinton 「The Cinderella Theory」(1989)

 廃盤とはね。復活P-Funkのきっかけで、時代に齧り付いた傑作。

 プリンスのレーベル、ペイズリー・パークから89年に発表の本盤。クリントンの前ソロ"R&B Skeletons in the Closet"(1986)から数年ぶりであり、昔からのファンにはあまり久々感は無かったのかも。
 だが88年頃にP-funkに興味持ったぼくは、Bootsy Collins "What's Bootsy Doin'?"(1988)と並んで、往年のP-funkを連想するのに、貴重かつ本丸の盤だった。当時のきなみLPは廃盤、CD化もされてなかった。

 プリンスの映画"Graffiti Bridge"(1990)に先立ち、まるでプリンスが救済のように自レーベルからクリントンを復活させる。そんなイメージが漂うリリースだった。
 実際の背景は知らないし、本盤でクレジット上はプリンスの参加が無い。だがシャープなギターのサウンドや、打ち込みビートにプリンスの影を感じながら本盤を聴いていた。
 ただしAtlanta BlissやEric Leedsの参加クレジットがあるところから見て、まったくプリンス側がノータッチと思えない。実はプリンスが演奏してるテイクがあるのかも。(7)とかね。

 アルバム全体を覆う、わさわさっと大勢のボーカルで突き進む、うさん臭く大仰なボーカル・スタイル。粘りながら、せわしなくアイディアを詰め込んだファンクネス。
 さらに当時の機材や流行を取り入れた打ち込みビートやヒップホップ要素。
 相反しかねぬ新旧の味わいを、クリントンは上手いこと本盤で消化し導入した。70年代懐古主義に陥ることなく、当時の時代の躍動感を見事に封じ込めたと思う。

 正直、リアルタイムでは本盤がピンと来なかった。音が硬いし、ヒップホップ要素が余分に聴こえちゃって。だが70年代P-Funkを聴いた数年後に本盤を聴き直したら、良さがぐいぐいわかった。クリントンは尖ったP-Funk魂の、世代交代を見事に本盤で果たしてた。

 クリントンは今に至るまで、往年の魅力を下敷きにしつつも、メンバーの流れを意識してる気がしてならない。自らの音楽性へかたくなにしがみつかず、その場のメンバーの才能を貪欲に取り込む。P-Funkの魅力は本質であり、形式ではない。
 70年代の再現や継続に、クリントンはこだわらない。ラップに再評価されたP-Funkを、改めてラップを喰う形でP-Funkスタイルで再表現した。

 (5)や(9)のシンセ・スタイルやベタッとしたグルーヴはプリンスの要素を感じる。だがサウンドはクリントンのもの。
 ハリー・ベラフォンテのスタンダード(8)を優雅にカバーしつつ、硬いベースで見事にファンクへ仕立てるアレンジ力もさすが。スカスカなサウンドと打ち込み、ホーンの鋭い音処理で古きものを焼き直す咀嚼力を見せつけた。カバーのセンスが凄まじい。オールド・タイムをいっぺん逆手に取った形か。しぶとい。
 
 作曲者は見事にバラバラ。奏者もP-Funk往年メンバーと若手が混在する。
 ともすればとっ散らかりそうな顔ぶれを、ゆるやかで確実にクリントンは制御した。本盤を聴くほどに、柔軟で強欲なクリントンの才能が漂ってくる。
 しかし本盤が廃盤か・・・もったいない。

Track listing:
1. "Airbound" (Tracey Lewis)
2. "Tweakin'" (Bob Bishop, Chuck D, David Spradley, Flavor Flav) (FeaturingPublic Enemy)
3. "Cinderella Theory" (Amp Fiddler, George Clinton)
4. "Why Should I Dog U Out?" (Amp Fiddler, DeWayne McKnight, George Clinton)
5. "Serious Slammin'" (Greg Crockett)
6. "There I Go Again" (Amp Fiddler, George Clinton, Joe Harris)
7. "(She Got It) Goin' On" (Amp Fiddler, Shawn Clinton)
8. "Banana Boat Song" (I. Burgess, W. Attaway)
9. "French Kiss" (Andre Foxxe, DeWayne McKnight, George Clinton, Steve Washington)
10. "Rita Bewitched" (George Clinton, Tracey Lewis)
11. "Kredit Kard" (Clip Payne, George Clinton)
12. "Airbound (Reprise)" (Tracey Lewis)

 本盤のシングル曲でパブリック・エネミーが客演。PVあったのか。初めて見た。素朴な作りだが、支配や統制を笑い飛ばし、自由さを称えるメッセージを感じた。


 本盤2ndシングルのライブ・ブート。音質は最悪だが、雑駁にもりあがる様子と、エレクトロ・ビートの混在が伺える貴重な音源だ。


Personnel:
Keyboards: Joseph Fiddler, David Spradley, Bill Brown, Greg Crockett
Bass: Bootsy Collins, DeWayne "Blackbyrd" McKnight, Andre Foxxe, Steve Washington
Guitars: DeWayne "Blackbyrd" McKnight, Bootsy Collins, Tracey Lewis, Andre Foxxe
Drums and drum programming: William Payne, Dean Ragland, Lelan Zales, Richie Stevens
Scratchin': Anthony Jones and Darrin
Tenor sax: Eric Leeds
Trumpet: Atlanta Bliss
Flute: Mike Fleming
Percussion: Larry Fratangelo
Spoons: AJ
Vocals: Pat Lewis, Sheila Washington, Jimmy Giles, Sandra Feva Dance, Lige Curry, Belita Woods, Tambra Makowsky, Navarro Berman, Pennye Ford, Patty Curry, Jennie Peters, Dean Ragland, Robert Johnson, Joe Harris, Andre Foxxe Williams, Tracey Lewis, Jessica Cleaves, Karen Foster, Anita Johnson, Louis Kabbabie, Mike Harris, Garry Shider, Daryl Johnson, Daryl Clinton, Shirley Hayden, Steve Boyd, Angela Workman, "Doe" Holiday

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