Bill Frisell 「Blues Dream」(2001)

 田舎のアメリカ風景を、だらりと寂しく描いたトータル・アルバム。

 ビル・フリゼールはどうにも掴みづらいギタリストだ。アメリカ人のアイデンティティを次々にアルバム化かな、と思う。サスティンが伸びる幻想的な音色を操る人かな、とも思う。ジョン・ゾーンのネイキッド・シティで活躍したダウンタウン・シーンの人ながら、ちょっと独自路線でカントリー的な要素もあり。いっぽうでコステロと共演などポップ界にもさりげなく地歩を築いてる。
 どうにも全体像がイメージわかない。別のアルバムを聴いたときに、また印象が変わる。

 かなり多い彼のリーダー作をすべては聴いていない。何度も来日してるが、ライブを見た経験もない。断片的にアルバムを聴いて、なんとなく概要をつかもうとしてるが、叶わない。つまりは、一筋縄ではいかぬキャリアの人。ぼくにとって、フリゼールはそんな感じだ。

 本盤が特に好きだってわけじゃ無い。なんとなく棚から引っ張り出しただけ。改めてじっくり聴いてみようと思っただけ。
 13thソロにあたる、という。7人編成の大所帯だが豪華なアレンジ狙いではなく、場面ごとの音像を作るために色々集めたって感じ。ジョン・ゾーンがらみの人脈で馴染みのKenny Wolleson(ds)が参加した。

 なおフリゼールのディスコグラフィ路線でいうと、本盤の前は"Ghost Town"(2000)。未聴だが、完全ソロ・アルバムのようだ。ここから一気にバンド編成へ戻ったのが本盤となる。

 YoutubeにChivas Jazz Festival 2001へカルテット編成で出演の映像あり。

 サイドメンの三人Greg Leisz,David Piltch,Kenny Wollesenは本盤にも参加。当時のレギュラー・バンドにホーン隊を加えたのが本盤か。しかしフリゼールはギタリストでありながら、もう一人に多様な楽器を弾くGreg Leiszの起用が変わってる。カントリー風味の強調が狙いかな。

 煙った金管と響くドブロ。滑らかなトーンで絡む、フリゼールのギター。そんな田舎っぽくけだるくも切ないムードで本盤は幕を開ける。ライナーによれば本盤の音楽はもともと2年前の99年に、ミネアポリスの美術館Walker Art Centerから委嘱作という。
 総トラック18曲。全曲で一曲か、その委嘱曲に新たに足しオムニバス風か、委細は不明だ。

 とにかく全体のトーンが共通した陰りを持つのだけは確か。3管から連想するハード・バップな面持ちは皆無。ソロ回しやテーマの炸裂もない。むしろ管はバック・リフ役っぽい。主役はフリゼールの柔らかく漂うエレキギターで、そこへGreg Leiszの弦楽器が絡む。
 明瞭で柔らかな音色だけじゃない。ディストーション効いた響きも。フリゼールは頻繁にギターの音色を変える。いちおうは一発録音なのか?ギターをダビングしてるようにも聴こえる。

 つまり本盤は明確なジャズ的ダイナミズムの構造をもってはいない。テーマからソロが回ってはい終わり、じゃない。なんとなく曲がもやもやと展開する。エレキギターを主にしつつ。この辺が、どうにも捉えづらい。

 音構造はむせ返る充満よりも、すっきりした抜けの良さ。ただし細かく音が絡み合い、シンプルには聴こえない。
 たとえば(6)。穏やかで緩やかなビート感で、マーチっぽいビートが静かに提示される。ホーン隊は滑らかに響く一方で、溌剌さを敢えて抑えた。けだるく諦念をうっすら感じてしまう。
 美しい(9)のホーン隊もファンファーレめいた華やかさは皆無。どこか重たく、淡々としてる。なおアレンジはフリゼールを軸が変わらず。ホーン隊のソロ回しは無い。

 アルバムのどこを切り取っても、爽快な炸裂は狙わない。どこか姿勢が崩れて、ぺたりと足を止めてるムード。そんな暗い雰囲気が、本盤を支配している。音楽の美しさとは別次元で、少しばかり皮肉めいた退廃的な影が漂っている風に、本盤は聴こえてしまう。
 伸びやかなギターが美しい(15)でも、切なさがずぶずぶ滲む。

 参加ミュージシャンの観点で見てみよう。
 フリゼールの相方役なGreg Leiszは西海岸生まれのミュージシャン。フリゼールより2歳年上でロック系でデビュー、Funky Kingsに参加し76年にアルバムも一枚出した。このバンド、ジュールズ・シアーがいた。知らなかった。

 その後K.D.ラング"Absolute Torch and Twang"(1989)に参加しカントリー界隈で活躍の一方、フリゼールとは"Good Dog, Happy Man"(1999)あたりから活動を共にしてきた。
 フリゼールのアメリカン・ルーツ探訪の路線に合致したか。(12)では彼の名が曲タイトルとなり、たっぷりアピールされている。実際のギター・ソロはLeisz?ビルかもしれない。
 (13)はマンドリンでむしろ主役。フリゼールがこの曲はバッキングに廻ってる。
 
 ベースのDavid Piltchも"Absolute Torch and Twang"に参加。カナダ人だがカントリー系の人みたい。その後もK.D.ラングのいろんなアルバムで弾いている。フリゼールとは本盤が初共演。ならば本盤がもとでバンドを組み、上掲のライブなどを行ってたということか。
 Kenny WollesonはNYダウンタウン・シーンの流れで、共演歴は不思議じゃない。

 ちなみに2014年に至るまで、LeiszとWollesonはフリゼールと共演を続けてる。ベースは02年ぐらいからTony Scherrが定位置を占めてるが。

 ホーン隊も見てみるか。Curtis Fowlkes(tb)はラウンジ・リザーズにも参加したNYロフト系ジャズメン。フリゼールとは"This Land"(1996)以来の付き合いか。
 Ron Miles(tp)はきっちり音楽を勉強したミュージシャン。当時、数枚のリーダー作を出していた。"Quartet"(1996)がフリゼールとの初音盤で共演となる。
 いちばんビルと関係長いのがBilly Drewesかな。"Before We Were Born"(1989)にクレジットあり。その後はトニー・ベネットやエディ・パルミエリなど王道路線を吹いて、たまにフリゼールに呼ばれる関係みたい。

 確実な演奏とは裏腹に、本盤で胸は沸き立たない。いや、演奏は凄い。でも音楽として前のめりに盛り上がらない。大人、酸いも甘いも嚙み分けた大人向け、かもしれぬ。
 瞬間のきらめきではなく、アルバム全体のもやもや漂うムードで聴かせる。

Song List:

1. Blues Dream
2. Ron Carter
3. Pretty Flowers Were Made for Blooming
4. Pretty Stars Were Made to Shine
5. Where Do We Go?
6. Like Dreamers Do (part one)
7. Like Dreamers Do (part two)
8. Outlaws
9. What Do We Do?
10. Episode
11. Soul Merchant
12. Greg Leisz
13. The Tractor
14. Fifty Years
15. Slow Dance
16. Things Will Never Be the Same
17. Dream On
18. Blues Dream (reprise)


Personnel;
Bill Frisell - electric and acoustic guitars, loops
Greg Leisz - pedal steel, lap steel, National steel guitar, Scheerhorn resonator guitar, mandolin
Ron Miles - trumpet
Billy Drewes - alto saxophone
Curtis Fowlkes - trombone
David Piltch - bass
Kenny Wolleson - drums, percussion


produced by
Lee Townsend recording and mixing engineer: Judy Clapp

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